毎週月曜日の19時~21時頃に投稿しています♪
Facebook『大人の児童文学』ページもよかったら
ひっそりInstagramも気まぐれ更新
オオカミ好きなので、前々から気になっていて、やっと手に取りました!
が、オオカミは出てきませんでした笑。
いつ出てくるんだろう、いつ出てくるんだろうと気が散ってしまいましたが、まあオオカミ登場せずとも、結果的には読めてよかったなあ、と思える物語でした。
原題はWolf on the Fold。このFoldが何を指すのか。家畜などを囲うオリを指すのか、羊の群れを指すのか、キリスト教の信徒を指すのか。私の語学力ではいまいち分からず、タイトルにモヤモヤ。また、オオカミが何を象徴するかも分からなかったので、西欧におけるオオカミの位置づけについてもうちょい探ってみようと思います(図書館で数冊予約済み)。
さて、物語はというと、出版社HPによるとこんな感じです↓
若い人たちへの励ましに満ちた物語
オーストラリアのある家族の日常のひとこまを、1935年から2002年まで4世代にわたり描く短編集。父親をなくした少年ケニーが家族のために仕事を探しに出た朝の出来事(オオカミが来た朝)、ケニー一家のもとにやってきた年老いたおばさんをめぐる騒動(メイおばさん)、近所にやってきたインド人の難民一家の苦悩(想い出のディルクシャ)ほか、時にユーモアをまじえて繊細に語る全6編。
結構つらい物語が多いです。励ましももっと入れて~、とも思いますが、あからさまでなくても前を向く力をもらえます。同じくつらい物語でも、先日ご紹介した『九時の月』との違いはなんだろう、そんなことを考え続けています。
さて、この『オオカミが来た朝』は、短編集で、4世代に渡るある家系の物語が中心なのですが、つながりを強く感じさせるというよりは、時代時代で全然違うなあ、とその時代ごとにタイムスリップさせてもらえる感じ。
『思い出のディルクシャ』という短編だけが、この家系とは関係ない物語で、構成的になぜ入れちゃった?とも思ったのですが……、この時代に起こった移民差別というテーマを、作者としてはいれずにはいられなかったんだろうなあ。
これが、もう移民差別テーマでつらかった!!!目をおおいたくなるような、とてもむごたらしい物語。子どもたちの目の前で暴力が行われ、赤ん坊が電車の窓から投げ捨てられる。悲鳴をあげたくなりました。それでもね、起こった悲劇から目をそらしたり、悲しみにフタをするよりも、見つめて認めるほうが大事だということを教えてくれる物語なんです。そのほうが閉塞感から解き放てる、ということを教えてくれる。短い物語の中で、実は人生におけるとても大事なすごいことを教えてくれている。
どうかどうか、あの赤ん坊の身の上にも『神さまの貨物』のときのように奇跡が起こってますように、と祈らずにはいられませんでした↓
上記の『思い出のディルクシャ』に限らず、どの短編も忘れがたい印象を残してくれるのですが、最後の話はもうちょっと明るい話で終わってほしかったという気もちょっとしてしまいました。
が、夫婦仲の悪さが出てくるあたりが、ああ、現代だなあってリアリティがある。昔は生活するのに必死で、協力しあわないと、お互いの役割分担をまっとうしないと多分生きていけなかった。“個”が強調されはじめ、世の中的には便利になってくると、人間関係にフォーカスされ息苦しくなっていく気がします。
また、4世代が描かれていることで、当たり前だけれど、自分の両親、祖父母たちにも子ども時代があったんだなあ、なんてことも思ってしみじみしました。
よかったら、手に取ってみてください。そして、どなたかタイトルの意味を教えてください!(スッキリしたい)