Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

タイトルに裏切られ......た?

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スマホを捨てたい子どもたち 野生に学ぶ「未知の時代」の生き方』(2020年)山極寿一著 ポプラ新書

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今日の一冊はこちら!

タイトルに惹かれまして。

ええ、うちの長男(高1)もね、見ていてイライラするくらいスマホしか触ってないのです。が、さんざスマホ漬けになってるのに、寝る前に「あー、スマホなんかなきゃいいのに!なければ依存しないのに!」って時々叫ぶんです。え、楽しんでないの?じゃあ、やめればいいのに、と思うのにやめられない。そこで、この本が目についたというわけです。

 

こ・れ・は!!!

いい意味で裏切られる内容でしたー!

 

どう裏切られたかって!?

 

スマホ依存、SNS疲れ……思春期のお子さんお持ちの親御さんの多くがお悩みだと思われるこちらのテーマ。タイトルに惹かれて読み始めたら、中身ほとんどゴリラの話じゃないですか(笑)。最高っ!

 

確かに、副題に“野生に学ぶ”とあったけれど、メインタイトルの印象が強すぎて、副題が印象に残ってなかったんですよね。

 

でもね、もしこれが『ゴリラに学ぶ生き方』だったら、手に取らなかったと思うんです。だから、ある種のひっかけのようなタイトルに騙されてよかった(笑)。

いや、騙してはいないんですけどね、ちゃんと最初と最後はスマホにつなげてるんですけどね、でも大半がゴリラの話。で、ゴリラの話になったとたんイキイキしている山極氏が目に浮かぶようなんですよ、これが。もう、ワックワクしながら読んじゃいました。副題にある「未知の時代」とは、AIなどが人間の能力を越えつつある社会のことですが、私にとっては、ゴリラのほうが未知の世界だった(笑)。フィールドワーク最高だな、もっと読みたい。

 

さて、ゴリラ研究者で京都大学総長の山極氏は、まえがきでこんな風に述べてます。

 

ぼくらが人間のどんな性質を見直すべきなのか、それは現代の人間だけを眺めていてもよくわからない。情報機器はもちろん、言葉すらもたない動物世界がどういうつながりをつくっているか見てみることで、人間的なつながりも見えてくる

 

そうそう、人間関係だけを見ていても、見えてこないし、モヤモヤがつのるんですよね。こちらに出てくる養老孟司さんの話を思い出しました↓

blog.goo.ne.jp

 

と思ったら、山極さんと養老さん、こんな対談を出しているではないですか!↓

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『虫とゴリラ』(2020年)養老孟司・山極寿一著 毎日新聞出版

 

なんと、まあ、直球なタイトル(笑)。 

今日の一冊を読む前だったら惹かれなかったけれど、次はこれを読む気満々。

 

人間は言葉があるから距離を保ってつながれる。

「持ち運び可能」な言葉が物語を生んだ

そして、身体より言葉を信じるようになった人間

 

……など、今回この本を通じて、“言葉”についても、改めて色々と考えさせられました。

もうね、一章一章感想を書きたいくらい。

 

そんなゴリラの話のあとに聞く、山極氏の言葉には説得力がありました。

最後のほうで、山極氏はこんな風に述べています。今のデジタル社会は、0か1かという発想で作られていて、その中間も、「どちらも」という考え方も許されない、と。

 

仲間でありつつ仲間でないという発想がなぜできないのか。どちらにも属するかもしれないし、どちらにも属さないかもしれないという「間」の発想が世間一般に広がれば、もっと色々なことが楽になるはずです。(P.184)

 

世界は本来、「実は正解がいくつもある」というものに満ちています。

たった一つの正解に至らなくても、決定的に不正解に陥らなければ、

戦争も起きないし、命も失われません。(P.174)

 

 うん、一つの正解にこだわらなければ、違いを認めつつ共存できる。

 

学術的だったり、難しい言葉は使っておらず、とても読みやすかったです。

余談ですが、ここに出てくるゴリラの父親が理想すぎて、これは夫に読んでもらわねばっ!と意気込んですすめてみました。面白いと一気読みしつつも、ゴリラの父親に関するところに対しては、夫無反応……チーン。

 

気を取り直して。最後に、ゴリラが出てくる児童文学をご紹介しますね↓

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『グリーンノウのお客さま』(2008年)ルーシー・M・ボストン著 亀井俊介訳 評論社

グリーンノウシリーズの4巻目にあたるこちらは、カーネギー賞を受賞。

ゴリラの魅力を知った今なら、より楽しめそう。これも読み直してみよう。
 

 

 

コロナ禍で、生きる力を育む物語7選

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新緑が楽しみな季節がやってきた!

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今日のテーマは、『生きる力を育む物語 7選』!

 

某紙の5月号で『生きる力を育む物語7選』を選書させていただいたのですが、いやあー、これ、めちゃめちゃ悩みました。コロナ禍で、落ち込んでいる人が多いので、このテーマでと言われたのですが……

 

だって……良い児童文学って、どれもこれも生きる力を育むんですものー!

どこが響くかは人それぞれなので、どの本も生きる力を育むことにつながるといえるかもしれませんが、やっぱり特に児童文学は生きる力を育くむと思うんですよねえ。ただただ純粋に楽しいだけの物語だって、見えないところで生きる力を育むし。

 

児童文学は、基本最後には“希望”があるんですよね。大人の文学には、あえてそこを欠けさせて印象深くさせてるものもあって、それはそれで自分が余裕があるときはいいと思うんです。でも、生きる力を育めるか、っていうとそこは疑問で。

 

というわけで、児童文学というくくりだと、生きる力を育くむ本がありすぎて悩みましたが、今回は紙面上の字数にも限りがあることと、読者層が高年齢なこともあり、こんな感じにしてみました。

 

①『モモ』

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『モモ』(2001年)ミヒャエル・エンデ著 大島かおり訳 岩波書店

 まず一番最初に持ってきたのは、”時間”とは何かを問う名作であるこちら。

豊かに生きるために、大切にすべきことは何なのか。効率ばかりを重視することの危険性に、コロナ禍で気づいた人も多いと聞きます。

聞き上手のモモから学ぶものは大きい!そして、時間泥棒って、もしかしてスマホ?なんていう人も。大人こそいま一度読みたいものとして、最初にあげてみました。

 

②『ゲド戦記Ⅰ 影との戦い

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ゲド戦記Ⅰ 影との戦い』(2009年)U.K.ル=グウィン著 清水真砂子訳 岩波書店

良質なファンタジーって、非現実的というよりも、ある種の〈真実〉をもって我々に迫ってくるんですよね。果たして、〈影〉とは戦うべきものなのか。ゲドと一緒に読者も成長し、どう影と対峙すればよいのかを学べるのですが、大人にも響く。思春期に出合っていたかった一冊です。

 

③『怪物はささやく

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怪物はささやく』(2017年)パトリック・ネス著 シヴォン・ダウド原作 池田真紀子訳 創元推理文庫

ゲド戦記』とセットで紹介したかったのがコチラ。こちらも児童文学で、主人公も少年ですが、でもね、大人にもすすめたかった。だって、大人になればなるほど、日頃我々は自分の感情にフタをして生きてしまっていると思うんです。大人だから、感情を抑え込める、って。それが”負”の感情ともなればなおさら。

 

でも、この物語が教えてくれるのは、感情には善も悪もなく、大切なのは自分の真実の感情と向き合うこと。東洋的な考えでびっくりしたー。

 

寓話を通じて、怪物が問いかけることは何なのか。なぜ、怪物は少年自身に最後の物語を話させようとしたのか。暗い物語ですが、おススメ。

 

④『第九軍団のワシ』

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『第九軍団のワシ』(2007年)ローズマリ・サトクリフ著 猪熊葉子訳 岩波書店

もうね、サトクリフの物語はどれもこれも紹介したかったので、迷ったのですが、やっぱりコレ。軍人生命を絶たれたローマ軍団百人体調のマーカスが、行方不明になった父の軍団とその象徴の〈ワシ〉を求め、旅に出るというストーリーなのですが……。あらすじだけ聞いても、全然惹かれないでしょう?いや、私だけ(笑)?

 

これがねえ、一種のロードムービー的でもあり、読み終えたあとは深い感動があるのですよ。主人公の挫折、内面の葛藤は、時空を超えて共感を呼びます。組織の中で働く世代にも響く。本をあまり読まなかったうちの夫にも響いた!

 

 ⑤『ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂』

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『ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂』(2018年)マーギー・プロイス著 金原瑞人訳 集英社

コロナ禍でね、制限が多く落ち込んでる人も多いと聞きます。そんなとき、これ読んでみてほしいんです。自然災害、疫病、権力組織や時代の制約など、その壁が大きければ大きいほど、自分ではどうにもならないと無力感を覚えてしまいますよね。

ジョン万次郎の生き方は、そんな我々に大きな励ましと生きるヒントを与えてくれます。うちの本が苦手な次男も、本が苦手(&当時読めない漢字も多かった)なのにこの物語は大好きで、友だちにすすめまくってました!

 

⑥『走れ、走って逃げろ』

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『走れ、走って逃げろ』(2015年)ウーリー・オルレブ著 母袋夏生訳 岩波書店

第二次世界大戦下、ナチス・ドイツの迫害の中で、ゲットーを抜け出した8歳のユダヤ人少年の過酷なサバイバル物語。......と聞くと、重くなりそうで敬遠しがちかもしれません(私がそうだった)。

 

でもね!これ、生命力あふれる物語なんです!過酷な中にもどこか明るさがあって。

不条理な運命を変える力はなくとも、それに対して”どうありたいか”は自分で決めることができるんだよなあ。そういうことを教えてくれます。驚きの実話。

 

⑦『ピーティ』

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『ピーティ』(2010年)ベン・マイケルセン著 千葉茂樹訳 鈴木出版

最後に持ってくる本はこれ、と決めてました。ことあるごとに、隙あらば、このブログで何回も紹介してるこちら(笑)。

 

いやあ、だってね、乗り越えるとかがんばるとか、そういうのもいいんですけど、それだけじゃない。何かを成し遂げなければということにとらわれてる人って、多いと思うんですよね。そういう人にとっては、ピーティは衝撃かもしれません。

 

だって、ピーティは何もできないんですもの(ある意味)。人生の大半を施設で過ごす。それでもね、自分の受け止め方一つで、ただ存在するだけ(←ここを伝えたかった!)でも、輝いた人生を送ることができるんです。それをピーティは教えてくれます。もし、いまの状況で落ち込んでる人がいるとしたら、ぜひピーティに出会ってもらいたい。

 

みなさまにとっての”生きる力を育む物語も、ぜひ教えてください。

何てことをしてしまったんだろう!(久々の猛省中)

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ただいま猛省中…

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※ 今日の一冊紹介は、文中にあります

 

ああ、なんてことだろう。

いま、自分自身に衝撃を受けています。

 

私、疑り深いほうなんです。

それ本当?

それ自分で確かめた?ソース(情報源)は?

 

噂話は信じないというか、関わりを持たないようにしているし、マスコミの報道は鵜呑みどころか、基本疑ってかかっている。情報は切り取ったものであり、点で判断しないようにと気を付けてる(つもりだった……)。

子どもたちにも、特にネット記事とか鵜呑みにしないよう言い続けています。

 

だから、自分は大丈夫だと思っていました。

 

が!!!!ですよ。

先日ある出来事があって、信頼できる人からの話なので、それを“そうなんだ”と思ってしまったんですね。思うだけで、自分の心にしまっておけばよかったのですが、それを人に言ってしまった。

 

自分としては、善意から伝えたつもりが、受け取るほうがちょっとずつ違う解釈をしていって、あやうくとんでもないことになるところでした。

(結果的にはならなかったのですが、びっくりしたし焦りました)

え?私が噂話の源???ショックでした。猛省。

 

そこで、思い出したのが、今日の一冊です。

短い児童書なのですが、えん罪テーマで、これは侮れません。

昔(2016年)書いたものなので、いま以上に軽い文体が読み返していて恥ずかしいのですが、でも、伝えたいことは今でも変わらないので転載↓

blog.goo.ne.jp

 

ちょっと違うけど、自分はオレオレ詐欺には引っかからないと思ってる人ほど、引っかかるってこういうことかあ、とも思ってしまった。

 

また、まだ自分自身は未読なのですが、お友だちからはこちらの大人向け絵本も教えてもらいました↓

 

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『二番目の悪者』(2014年)林木林作 庄野ナホコ絵 小さい書房

 

噂は一人歩きします。自分の思いもよらない方向に。

よかれと思って伝えたことも、途中で曲がって伝わってしまうことも。

今回、私はそれが噂になるという自覚もなかった。

 

自分の目で見たこと、耳で聞いたことだけ信じること。

そして、直観力を磨くこと。

もう自分は大丈夫だと思わず、いつまでも学び続けること。

大事だなあ、と改めて思った一日でした。

 

 

この熱量を伝えたい!!!

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『ベルリン1919 赤い水兵』(2020年)クラウス・コルドン作 酒寄進一訳 岩波書店

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児童書専門店クーベルチップさん主催の“翻訳家・酒寄進一さんと『ベルリン三部作』を読む”に参加してきました!

 

コルドンのベルリン三部作とは、

 

第一部:第一次世界大戦終結させた十一月革命とその後の顛末を13歳の少年ヘレの視点で

 

第二部:ナチが政権を奪取するまでのわずか数か月間を、15歳のハンス(ヘレの弟)の視点で

 

第三部:1945年冬、敗戦の過程を生きのびる人々を、12歳の少女エンネ(ヘレの娘)の視点で

 

 

で描いたもの。

 

 

申し込んだ時点では、実はこちら未読で……それでも、速攻申し込んだのは、読書眼で信頼している周りの読む人読む人、大絶賛だったからなんです。

 

いやあ、酒寄さんの熱量もすごかったです!!

ネタバレしないように一生懸命気を付けて話してくださったのですが、ベルリンの地図をたどりながら、まさに一緒に読む感覚。

 

実は、というかいつもブログにも書いているのですが、私は戦争文学が苦手。

暴力的な描写もダメだし、人の心が暴徒化していくのも読むに耐えなくて……。

まだ2部の途中までしか読めていませんが、この物語に出合えて本当によかった!!!

 

興味深いお話をたくさん伺えたのですが、中でも個人的に印象的だったのは、質疑応答のときにお話しされた、リヒターとコルドンの違いです。

リヒターというのはこちらを書いた人↓

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『あの頃はフリードリヒがいた』(2000年)ハンス・ペーター・リヒター作 上田真而子訳 岩波書店

 フリードリヒはナチスの過ちを繰り返さないためには必読書なのかもしれないけれど、私は打ちのめされてしまったんです。

もうねえ、あまりにも大きな壁を前に無力感。希望がなくて、どうしようもなく落ち込んでしまって……正直、これを子どもに手渡したいとは思えなかったんです。子どもがもっと現実を知りたいと言ってきたら、渡したいかもしれないけれど、最初の1冊としては避けたいかも。落ち込んじゃうから。何冊か読んだ後だな。

 

でも、コルドンのベルリン三部作は、どうにかしてでも手渡したい!!!と思った。

そこには、どんなに過酷な状況でも”希望”があったから。

 

酒寄先生によると、リヒターとコルドンは書かれた時代背景に違いがあるとのこと。

リヒターは渦中でナチスを経験した人。実は、敗戦後10年くらいは、ドイツの人たちは『アンネの日記』も誇張だと主張したくらい、自分たちがユダヤ人に対して、そんな非人道的なことをしたはずはないという空気だったんだそうです。敗戦国だから、色々言われてしまうんだ、くらいな感じ。だからこそ、リヒターには残酷な現実をつきつける使命のようなものがあった。

 

一方で、コルドン自身には戦争の記憶はほとんどない。

でも、祖父母の代まで遡って自分のルーツを知らないと、生きていけない。コルドンがこの物語を80年代に書いたことにも意味があって、80年代にはどこか虚無感が漂っていたそうです。

 

コルドンが驚いたのは、第一部に描かれている第一次世界大戦終結させた十一月革命は、ドイツの生徒はもちろんのこと、先生たちですら知らなかったこと。まさに、忘れ去られた冬だった。ここを理解しないと、なぜ人々がナチスに流れて行ったのかが理解できない。

 

一方で、その後のドイツは平和教育もしっかりし、ナチスの反省をしっかりと叩き込みすぎたこともあり、子どもたちは自分の国が嫌になってきてるという傾向にもあったそう。これ、分かるなあ。戦時中の日本のした卑劣な行い知れば知るほど、私自身も日本が嫌いで嫌いでほこりをもてなかった時期あったから。

 

だからこそ、コルドンはどこか希望がある物語を書いた、と。

そして、コルドンは、精神的に強い人だけでなく、迷える人々、歴史に翻弄された人間の典型でもある流される人々のことも丁寧にすくいあげたんです。歴史的な知識ではなく、その向こう側にある真実、当時のリアルな空気感を描いた。

 

やっぱりねえ、希望って大事!!!

 

さて、では、なぜ今、日本にいる私たちがこの物語を読みたいのか?

いま読みたい理由、それを酒寄先生は次のようにお話しされていました。

ここに描かれてるのは各個人個人が何を考え、どう決断して、どう行動したか。

今は戦時中ではないけれど、コロナという未曽有の状況の中で、自分のモデルはどれ?と問いながら読む価値もありだ、と。

 

酒寄先生が、この物語を日本に紹介したいと思ってから実現するのに、実に20年もかかっているんですって。最初は理論社さんから出版され、そちらは原書と同じ表紙や雰囲気だったそうなのですが、今回の岩波版はもうちょっと入り口をソフトにしたいと西村ツチカさんにカバー画を頼んだそうです。コルドンさん本人もイメージ通り!ととっても気に入っているのだとか。

 

政党の対立など、政治的な内容は少々理解するのに難しく、確かに中学生でこれ理解できるのかな?という思いもあるのですが、それぞれの心情や暮らしぶりのところは、とても読みやすい。ぐいぐい物語に引き込んでくれるような訳で、本好きな子なら小学校高学年でもおすすめしたくなる内容です。

 

物語自体の感想についてはまた別途!

家族全員で読みたい、そして、語り合いたい。そんな物語です。

人生最高の一冊を届けよう!

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洋書並んでるのが見るとテンションがあがる(ただのミーハー笑)

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今日は『子ども読書の日』なんだそう(シラナカッタ)。

スペインでは今日4月23日はサンジョルディの日と言って、本を贈る日というのは聞いたことがあったけれど。

 

で!検索してたら、とーーーーーーっても素敵なプロジェクトに出合えたんです!

コチラ!↓

readyfor.jp

 

何がいいって、発起人の山内ゆなさんの思いがいい!!!

こういうのって、独善かな、偽善かなとかいつも考えてしまうのですが、発起人の山内さん自身が児童養護施設出身者なので、いわば内側からの声なんです。

 

我が家も児童養護施設とは、ご縁があって。二つの施設の子たちと、彼らが小4から高校卒業までホームステイという形で関わらせていただいたのですが、本当に貴重な体験をさせてもらったなあ、って。こちらがしてあげられたことよりも、彼らから与えられたもののほうが、はるかにはるかに大きかった!

 

思い返せば、私がいまこういう方向にいるのも、児童文学と再会できたのも、本好きだった里子ちゃんのおかげだしなあ。彼らが施設を旅立ってからも、いまもつながっていて。気持ち的には親戚です。

 

ただ、児童養護施設と一言で言っても施設によって、当然さまざまで。

うちの里子ちゃんたちがいたところは、先生の愛情や寄付にもとっても恵まれていて、それこそ本もほれぼれするような私好みの本がずらーっとそろっていました。

『チャーシューの月』という児童養護施設を舞台にして話題になった物語があるのですが、そことはずいぶん違った。↓

blog.goo.ne.jp

 

本は逃げ場にもなるし、生きる力を育むと思っているので、本が少ないところがあるのなら、それはぜひぜひ贈りたい。そしてね、このプロジェクトで、もう一つ、ああいいなあ、と思ったのは、メッセージを添えられるところなんです。“思い”を乗せられる。

 

本の寄付って難しくて、いくら「あなたが好きだった本、大切だった本ください」と募集しても、集まったのを見ると

……ん?どう見てもコレ、いらないから回した感じよね?っていうのは、あるあるで。

だから、このプロジェクトが家にある本を回すのではないこと、そして、なぜこの本を贈りたいのか、一番大事な気持ちや思いを乗せられるところがいいな、って。

 

しかし、届けたい本が多すぎて、選書が難しいかも(笑)!
子ども読書の日』に、素敵な輪が広がりますように。

 

 

秘密基地を持とう!

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『ぼくらのバス』(2010年)大島真寿美著 ポプラ文庫ピュアフル

 

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ご近所さんがね、嘆いてたんです。

子ども(当時小4)にどんなにすすめても、『赤毛のアン』や『大草原の小さな家』シリーズを読んでくれない、と。もう古い物語で今の子には必要ないのかなあ、って。

 

じゃあ、どういうのなら読むのかなと思って聞いたところ、そのおうちの娘さんが読んでいたのが今日の一冊です。

 

著者の大島真寿美さんは、児童文学作家さんではなくて、編集者からムリに頼まれた書いたらしい。2019年に『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で直木賞を受賞した作家さんで、『ぼくらのバス』は、もともとは1997年に偕成社から出されていたもの。大人なら1時間ちょいくらいで読めてしまいます。本が苦手な子でもこれなら読めそう!

 

内容は、ほんわか。

近所のお屋敷の敷地にある緑色のバスがあるんです。そこは、昔、私設図書館として、大勢の子どもでにぎわっていた……。

もう、ここだけでワクワクしてきたぞっ!

 

でもね、そのバスの図書館を作ったおじいさんが亡くなってしまってからは、おばあさんは引きこもってしまって、バスも廃墟のように。

そこを暇を持て余していた小5の圭太と弟の広太と、こっそり忍び込み、秘密基地にするんです。そこへ、中2の家出少年が押し入ってきて……。

 

というもので、事件が起こるわけでもなんでもないのですが(家出が事件といえば事件?)、もう秘密基地っていうだけでマル!

 

今の子たちに欠けてるのって、こういう経験なのかも。

私たち昭和世代は、まだ周りに空き地とかがあって、草むらに隠れれば、少しは秘密基地の気分も味わえたりしたなあ、って。

幸い、鎌倉の谷戸は昭和な雰囲気で、山の中に秘密基地がたくさん作れるのですが、団地街の子たちはどうしてるんだろう……。騒いでも怒られるし、ボール蹴っても知らない人から苦情がくるし、そりゃゲームしてれば静かだもの、ゲームに走るのも無理ないなあ。

 

物語の中の彼らはね、秘密基地の中で、何か特別なことをするわけじゃないんです。

家と同じように寝転がって漫画を読んだり、何ならしてることは家にいるときと変わりない。

 

でも、どうして、秘密基地でするとこんなにも楽しいんでしょう!

お菓子食べるだけでも、寝転ぶだけでも。普段は嫌でたまらない掃除や、整理整頓ですらも。

 

秘密基地は“秘密”なので、当然親にもウソをつくことが多くなっていきます。

ちょっとした背徳感とでもいいましょうか。

こういうのに反抗して、子どもは成長していくのかな。

背徳感って道徳に反することで、その道徳ってたいていは大人の価値観で出来上がってますからね。

 

子ども時代にはウソというか“秘密”は大事な大事な要素ですよね。

 

子どもたちがスマホなどのデジタルの中ではなく、五感で感じられる実際の空間の中に“秘密基地”を持てますように。

 

 

 

高校生が夢中になった童話とは

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『遠い野ばらの村』(2011年)安房直子作 偕成社文庫

知ったきっかけは、高校時代前の席に座っていた子が、休み時間も夢中になって読んでいたから。

 

「何読んでるのー?」

 

と聞いたら、かえってきた答えが

 

安房直子さん」

 

だったのです。それが出合い。

 

読む?と彼女が貸してくれて、あっという間にその世界に引き込まれて、当時そろえられるだけ文庫版をそろえたんだったなあ。(余談ですが、当時の値段の安さにもびっくりで、時代の流れを感じる笑。200円台、300円台ですもん)

 

ああ、好き。なぜ好きかとか、そんな理由さぐるのが野暮と感じるくらい、ただただ安房直子さんの世界観が好きでした。

 

安房直子さんの世界はちょっと幻想的で、ファンタジーなのだけれど、どこか日常の延長線上にあるような気がして。心象風景の中に、いとも自然に連れて行ってくれて、不思議なのに、どこか懐かしさを覚える。優しいだけじゃなくて、どこか悲しい人間の性みたいなものもさらりと描かれていたりするところも好き。

 

『きつねの窓』などの短編が、教科書にも載ってるから、触れたことがある人も多いかもしれませんね。

 

いま、客観的に振り返ると、もし彼女が読んでいたのがハードカバーだったら、いかにも“子ども用の童話”という感じがして、高校生の私は手に取らなかったと思うのです。

文庫版、大事!!!ちなみに、私が持ってるのは講談社文庫とちくま文庫版でしたが、いまは偕成社文庫しか残っていないようです。大手出版社で児童向けの本を売り続けるのってやっぱり難しいんだなあ。偕成社さん、ありがとう。

 

また、大人になってから、小さい頃繰り返し読んで好きだった絵本が安房直子さんだったことを知って、“あなただったのですね!!!”と妙に感動してしまった。

背表紙もボロボロ、年季の入った(笑)絵本はこちら↓

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当時の絵本って、作者の住所まで書いてあって、さらにびっくり。保谷に住んでたんだ……。

 

安房直子さん作の絵本はいまでもあるけれど、個人的には安房直子さんは絵本じゃなくて文字だけで味わいたいんですよね。ていねいに言葉で表現してくれているから。

 

なんだかモヤモヤしてたり、特に理由はないけれど閉塞感を覚えたりする日などは、安房直子さんの短編を読むとどこか風穴があくような気がします。

こういう世界に触れていないと、人ってギスギスしてくるのかな、って。

 

短編ばかりですし、何か読みたいけど読む気力がないな、なんてときにもぜひ!