
サン⁼テグジュペリ著 内藤濯訳 岩波書店
なかなかブログが書けない日々ですが、元気です。
書いては途中でやめ、そのまま眠っている記事がいくつも……。
週1更新がなかなかできない今日この頃ですが、マイペースに続けていきまーす。
さて、今日はあの誰もが知る『星の王子さま』のことについて。
先日、フランス語のテキストも書かれている浅見子緒先生をお招きして、
“フランス語で楽しむ『星の王子さま』の夕べ”
なるものを開催してみました。
これが、人気でキャンセル待ちや次回お問合せも来るほど。
はたして、フランス語が人気なのか、『星の王子さま』に惹かれるのか。
どうやら後者の方が多かったようで、フランス語未経験という方のご参加が7割でした!
フランス語の魅力についても語りたいところですが、今日は解説本について。
まあ、なんてなんて奥深いんでしょう!すっかり魅了されてしまいました。
『星の王子さま』って、第二次大戦後の累計で、全世界のベストセラー・ランキングでなんと第3位なんですって!人気なのは承知でしたが、まさかそこまでとは。
ちなみに1位は聖書、第2位はマルクスの『資本論』だそう。
ところで、『星の王子さま』ってみなさんいつ頃読まれましたか?
今回、『星の王子さま』が好きで参加された方のほとんどは大人になってから出会ったという方でした。
そうなんです、これ大人にこそ響くんですよね。
そして、実は児童文学ではない。
私自身は、小学校2,3年の頃に読んだので、絵は好きで印象に残ってはいるけれど、実は、お話的には別にそんなに面白いと思えなかったんですよね。だって、童心を失っていない子どもだったから。これ、童心を失った大人にこそ響く物語だったから。
さて、『星の王子さま』は日本では版権が切れた2006年前後に十数社から新訳が出版されました。そこから、1953年に最初に出版された内藤濯訳への疑問や批判が噴出してしまったんですね。
フランス語ができる人からすると、内藤訳ではイメージが原文とちょっと違ってきてしまう、と。ちょっと『赤毛のアン』の村岡花子訳への批判を思い出しました。
いろんな周辺本を読むと、なぜ原文で読むのが大切なのかがよーく分かりました!
とはいえ、文体とナレーションの技法だとか複合過去がうんたらかんたらとか、全然理解できなかったんですけどね笑。原文が大事ということだけは分かりました。
物語の構造や原文の文法的なところから読み解きたいという方には、こちらの2冊がオススメです。

『「星の王子さま」物語』(2022年)稲垣直樹著 平凡社新書

『「星の王子さま」隠された物語』(2014年)鳥取絹子著 ベストセラーズ
で、『「星の王子さま」隠された物語』のほうに書かれていて、私的におおおおっ!となったのがですね、最初の内藤氏訳の編集者があの石井桃子さんだった、ってことなんです。
誰が編集者かとか、昔は全然興味なかったので、いままで知りませんでした。
なるほど!石井桃子さんだったのかあ。そして、日本語訳だけに“星の”がついている。直訳なら“小さな王子さま”ですから、星がついているかいないかでは、印象が大違い。これも、石井桃子さんの案だったとか。
2006年以降、原文に忠実と言われる新訳がたくさん出たけれど、ブームが去って、結局売れ続けているのは圧倒的に内藤訳なんだそうです。あの独特の文のリズム、実は口述筆記だったからというのもあるそう。耳にどう聞こえるかを大事にした石井桃子さんの影響もあるんだと思います。
ところで、今回いわゆる解説本、周辺本を何冊か読んだのですが、中には謎解きトリックに走りすぎて、本質を見失っているものも見受けられました。そんな中。一番胸に響いたのはこちらでした↓

『星の王子さまの気づき』周保松著 西村英希・渡部恒介訳 三和書籍
他の解説本に書かれていた、文法的な解釈や、作者自身の背景ももちろん興味深かったのです。が、こちらの本では、純粋に物語から得た“問い”を哲学的に探究しているんです。そこが、ぐっときました。
『星の王子さま』って、物語というよりは詩に近いような面もあると思うんです。
“問い”は投げかけるけれど、答えは書かない。だから、みなさん繰り返し読むのかも。
これは前述の別の解説本のほうに書かれていたのですが、『星の王子さま』って時系列がバラバラで直線的時間を否定した構成になっているんですね。
そして、登場人物が常に一対一で会話する形になっている。
あ、そうか。一対一だからこそ哲学的な対話になるのかもしれません。
作者の周保松氏は、『星の王子さま』は重厚な存在主義の色合いを帯びた哲学的寓話だ、と語ります。存在主義って、正解探しより、自分の選択を引受けて生きる、ということ。
そして、現代に生きる自分に当てはめて考え、深堀りし、生きづらい今の世界に希望を見出しているんです。悩み多き若者たちにも、ぜひ読んでもらいたい!
哲学的な問いを探求していますが、平易な文章で書かれているので、すーっと入ってきます。
実は、世間で騒がれているほどには響かなかった私ですが(読んだのがきっと早すぎた)、今回解説本や周辺本を読むことで、忘れられない一冊となりました。
大人ならではの楽しみ方ですね。
いままでも心の片隅に王子さまは住んではいたけれど、今回の開催を通して、より色濃く、いまではすっかり王子さまと友だちになれた気がしています。