Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

むなしくなったりするけれど

関東は初雪!まるで水墨画の世界

少ない雪でもミニミニ雪だるま~

今日は関東では初雪!もうもう子どもたちは大はしゃぎです。

 

私はといえば、先週右手指を骨折してしまい、利き手なのでほぼ何もできず……これをいいことに何もしてません(ニヤリ)。いや、本当のことをいうと、最初はスマホ三昧でした。左手指一本で操作できて便利だし、とにかく痛くて痛くて、最初の頃は思考停止で読書どころではなく、ぼーっとくだらない動画眺めているのが正直ラクだったのです。無意味にYouTube shortを見続けたり。スマホ見てるとあっという間に一日が終わる。『モモ』に出てくる時間泥棒のごとく。ダメ人間まっしぐら~で、夫に心配される始末でした。

 

でも、雪と読書ってあいますよね。ちょっとずつ痛みもおさまってきたので(全治2-3か月らしいけど)、雪降る今日はおうちでぬくぬく本を読みました(ダメ人間ちょい脱出!)。

 

というわけで、今日の一冊はこちらを再読しました。

『雪のひとひら』(2008年)ポール・ギャリコ作 矢川澄子訳 新潮文庫

ちなみに、装丁は、現在の文庫版より単行本のときの茶色ベースの地味なときのほうが個人的には好きでした。

 

以前読んだときは、学生時代、多分中高のとき。正直、この物語の良さが分からなかったんですよね。ふーん、って感じ。なぜ、母がいたくこの物語を気に入っていたのかも分からなかった。でも。いま、自分が当時の母の年齢になって再読してみたら……沁みます。女性の一生を雪のひとひらに例えた物語。特に終盤では涙が出てきました。

 

おおいなる創造主の手によって造られ、そのもとへ帰っていく私たち。

何の目的で私たちは造られ、何のために生きているのか。

 

分からないまま、それでもこの世のさまざまな美しいものに心から感動したり、つらい目にあったり、ときには無気力になったり。

 

臨終のときにあっても、雪のひとひらは虚しさに襲われるのです。

 

こうして死すべくして生まれ、無にかえるべくして長らえるにすぎないとすれば、感覚とは、正義とは、また美とは、はたして何ほどの意味をもつのか?(P.92)

 

それはそれは悲痛な叫びです。臨終のときまで、むなしい思いにとらわれていたけれど、それでもいままでの人生が走馬灯のように彼女をめぐったときに彼女は悟るのです。自分の全生涯が奉仕を目ざしてなされていたことを。創造主から片時も忘れられたり、見放されたりしていなかったことを。

 

最後のほうまで虚しさに襲われているからこそ、説得力があります。

そして、救いがあります。

 

雪が降ったからこそ、再読しようと思い立った。雪からの思いがけないプレゼント。

これぞ、大人のための児童文学でした。ぜひ。