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児童書専門店クーベルチップさん主催の“翻訳家・酒寄進一さんと『ベルリン三部作』を読む”に参加してきました!
コルドンのベルリン三部作とは、
第一部:第一次世界大戦を終結させた十一月革命とその後の顛末を13歳の少年ヘレの視点で
第二部:ナチが政権を奪取するまでのわずか数か月間を、15歳のハンス(ヘレの弟)の視点で
第三部:1945年冬、敗戦の過程を生きのびる人々を、12歳の少女エンネ(ヘレの娘)の視点で
で描いたもの。
申し込んだ時点では、実はこちら未読で……それでも、速攻申し込んだのは、読書眼で信頼している周りの読む人読む人、大絶賛だったからなんです。
いやあ、酒寄さんの熱量もすごかったです!!
ネタバレしないように一生懸命気を付けて話してくださったのですが、ベルリンの地図をたどりながら、まさに一緒に読む感覚。
実は、というかいつもブログにも書いているのですが、私は戦争文学が苦手。
暴力的な描写もダメだし、人の心が暴徒化していくのも読むに耐えなくて……。
まだ2部の途中までしか読めていませんが、この物語に出合えて本当によかった!!!
興味深いお話をたくさん伺えたのですが、中でも個人的に印象的だったのは、質疑応答のときにお話しされた、リヒターとコルドンの違いです。
リヒターというのはこちらを書いた人↓
フリードリヒはナチスの過ちを繰り返さないためには必読書なのかもしれないけれど、私は打ちのめされてしまったんです。
もうねえ、あまりにも大きな壁を前に無力感。希望がなくて、どうしようもなく落ち込んでしまって……正直、これを子どもに手渡したいとは思えなかったんです。子どもがもっと現実を知りたいと言ってきたら、渡したいかもしれないけれど、最初の1冊としては避けたいかも。落ち込んじゃうから。何冊か読んだ後だな。
でも、コルドンのベルリン三部作は、どうにかしてでも手渡したい!!!と思った。
そこには、どんなに過酷な状況でも”希望”があったから。
酒寄先生によると、リヒターとコルドンは書かれた時代背景に違いがあるとのこと。
リヒターは渦中でナチスを経験した人。実は、敗戦後10年くらいは、ドイツの人たちは『アンネの日記』も誇張だと主張したくらい、自分たちがユダヤ人に対して、そんな非人道的なことをしたはずはないという空気だったんだそうです。敗戦国だから、色々言われてしまうんだ、くらいな感じ。だからこそ、リヒターには残酷な現実をつきつける使命のようなものがあった。
一方で、コルドン自身には戦争の記憶はほとんどない。
でも、祖父母の代まで遡って自分のルーツを知らないと、生きていけない。コルドンがこの物語を80年代に書いたことにも意味があって、80年代にはどこか虚無感が漂っていたそうです。
コルドンが驚いたのは、第一部に描かれている第一次世界大戦を終結させた十一月革命は、ドイツの生徒はもちろんのこと、先生たちですら知らなかったこと。まさに、忘れ去られた冬だった。ここを理解しないと、なぜ人々がナチスに流れて行ったのかが理解できない。
一方で、その後のドイツは平和教育もしっかりし、ナチスの反省をしっかりと叩き込みすぎたこともあり、子どもたちは自分の国が嫌になってきてるという傾向にもあったそう。これ、分かるなあ。戦時中の日本のした卑劣な行い知れば知るほど、私自身も日本が嫌いで嫌いでほこりをもてなかった時期あったから。
だからこそ、コルドンはどこか希望がある物語を書いた、と。
そして、コルドンは、精神的に強い人だけでなく、迷える人々、歴史に翻弄された人間の典型でもある流される人々のことも丁寧にすくいあげたんです。歴史的な知識ではなく、その向こう側にある真実、当時のリアルな空気感を描いた。
やっぱりねえ、希望って大事!!!
さて、では、なぜ今、日本にいる私たちがこの物語を読みたいのか?
いま読みたい理由、それを酒寄先生は次のようにお話しされていました。
ここに描かれてるのは各個人個人が何を考え、どう決断して、どう行動したか。
今は戦時中ではないけれど、コロナという未曽有の状況の中で、自分のモデルはどれ?と問いながら読む価値もありだ、と。
酒寄先生が、この物語を日本に紹介したいと思ってから実現するのに、実に20年もかかっているんですって。最初は理論社さんから出版され、そちらは原書と同じ表紙や雰囲気だったそうなのですが、今回の岩波版はもうちょっと入り口をソフトにしたいと西村ツチカさんにカバー画を頼んだそうです。コルドンさん本人もイメージ通り!ととっても気に入っているのだとか。
政党の対立など、政治的な内容は少々理解するのに難しく、確かに中学生でこれ理解できるのかな?という思いもあるのですが、それぞれの心情や暮らしぶりのところは、とても読みやすい。ぐいぐい物語に引き込んでくれるような訳で、本好きな子なら小学校高学年でもおすすめしたくなる内容です。
物語自体の感想についてはまた別途!
家族全員で読みたい、そして、語り合いたい。そんな物語です。