Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

夢にまっすぐな姿は胸を打つ

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『ハリスおばさんパリへ行く』(1979年) ガリコ作 亀山龍樹訳 講談社

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今日の一冊は、ぜひぜひ復刊してほしいコチラのシリーズ!

私が読んだのは多分中学生のときかな。面白くて一気読みの大好きなシリーズでした。

 

一度復刊ドットコムにて復刊したみたいですが、いまはもう高値がついてますね……。

映画化しないかなあ、と思って調べてみたら、ナント!2022年、来年公開されるそうではないですか(日本は未定だけど)。これは、復刊に期待ですね!

 

ところで、私が持っているのは、講談社文庫版なのですが、そこに挟まっていた講談社文庫童話ファンタジーフェアの案内でびっくり。ええー、ガンバシリーズの『冒険者たち』や『長くつ下のピッピ』も講談社文庫から出てたんだ!しかも、200円台って……時代を感じる値段よ(笑)。

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もう一つ驚いたのは、当時の講談社文庫の文字小さっ!

そんなこんなで、内容は古びなくとも、昔からある蔵書って、装丁やら値段設定やらに色々と時代を感じて、いやあ楽しいですね。

 

では、内容いってみましょう!

 

『ハリスおばさんパリへ行く』あらすじ

陽気で働き者のロンドンの通い女中のハリスおばさんが、ある日、一目見てわたしの欲しいのはこれだと決めたもの、それはディオールの高価なドレスだった。節約して大金を作りパリへ行ったおばさんは、やっと憧れのドレスを手に入れるが……。軽快な筆致で人生の哀歓をユーモラスに描いたガリコの代表作。(裏表紙より転載)

 

作者のガリコとは、ポール・ギャリコのことです。

実は、細かい内容はさほど覚えてなかったのですが、読んでいくうちにみるみる思い出していく。うん!文句なく面白い!ところが、ですよ。びっくりしたのは、子どもの頃はただただ面白かったという印象だったのですが、大人になってから読むと色んなところにグッときちゃって、なんだか泣けてくるんです。ああ、いつの間にか私はハリスおばさんのような純粋な心を失っていたかもしれない、おばさんのような自立した素敵な女性になれてないかもって。

 

そんなハリスおばさん、3年かけて貯めたお金でやっとパリへ飛ぶのですが、そりゃあもちろん格好やしゃべる言葉(イギリスは階級によって発音も違うので)でお里がバレてしまう。ディオールですよ?本店ですよ?当然、ハリスおばさんのような人はあまりにもおかど違い。女支配人のマダム・コルベールは自身の悩みごとで朝から不機嫌だったことも手伝い、当然追い返そうとします。が、そのとき、ハリスおばさんはこう言い放つのです

 

「なんだよう!あんたたちフランス人は、人情ってもんがないんだね!へん、おまえさんは口だけはたっしゃだが、心は氷のようなお人だよ!あんたは、なきたいくらいに、なにかがほしいって思いつめたことはないのかい。なにかがほしくって、ほしくって、夜もねむれず、それが手にはいらなかったらどうしようと、心配でふるえながら、夜通しおきていたようなことはないのかい」(P.88)

 

憧れへのまっすぐな気持ち。もともと賢婦人だった、マダム・コルベールはグサリとこの言葉にやられるんです。私もやられました。あまりにもまっすぐな思いに、思わず泣いてしまったのです。

 

個人的には、ファッションにはぜっんぜん興味なくて、何ならスティーブ・ジョブズみたいに毎日着るもの決まってたら楽でいいな、くらいに思ってる私なのですが、気づいたらハリスおばさんがディオールがほしいと思う気持ちに痛いほど共感していた。

 

誇り高く、嘘偽りなくまっすぐ自分を生きている。たくましく、勇気があり自立した女性、それがハリスおばさん。聖人とは違います。噂好きだし、世俗的。でも、なんて魅力的なことか。マダム・コルベールもそれに気づき、ショーの特等席へと案内するんですね。本質が見れる人って、清々しい!!!他の登場人物たちもとっても魅力的で清々しい!職人の世界もとっても魅力的です。そこへ、スターモデルのナターシャ嬢と会計係のフォーベル君の恋愛模様も絡んでくるのですが、アモーレの国おフランスっぽくなくて、むしろひと昔前の日本人の感覚に近くて、奥ゆかしい。

 

そこからは、とんとん拍子で、さすが児童文学と思いきや。いきなりの冷たい現実もつきつけてくるのがギャリコらしいなあ。改めて、大好きな物語でした!

 

ところで、余談ですが、2022年公開映画のキャスト、スターモデルのナターシャ嬢役のAlba Baptistaという女優さんは写真見てみたら、イメージと違った。私の中では、どちらかというとナタリー・ポートマンみたいなイメージだったんだけどな。しかし、女優さんは映画によって雰囲気変えてきますからね。楽しみです!