Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

おいしい本棚7選!

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ごちそうを作りたくなる季節がやってきました♪

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今日のテーマは、”読んで楽しい作って幸せ おいしい本棚”。

某紙の12月号に掲載したものと同じもの7選をご紹介しますね。本当はここに入ってないもので、おススメもまだまだあるのですが......!レシピだけでなく、読み物としても面白いかどうかをポイントに選んでみました。

 

 

『世界の台所探検 料理から暮らしと社会が見える』

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岡根谷実里著 青幻社

アジア、中東など世界16か国の台所へ。小さな幸せに気づかされる“食と旅”のエッセイ。レシピも13作品収録。

 

海外に行きづらい今だからこその一冊。単なる観光旅行では味わえない、なじみのない国や小さな村でのホームステイが追体験できちゃうんです。幸せは台所から始まることを実感し、気付けば笑顔に♪

 

 

『音楽家の食卓: バッハ、ベートーヴェンブラームス… 11人のクラシック作曲家ゆかりのレシピとエピソード』

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野田浩資著 誠文堂新光社

音楽を愛するシェフが現地を取材。

五感に訴える一冊。エピソードも満載で、知られざる音楽家たちの生活を食を通じて探ることができるんです。こちらにするか、『スイート・スイート・クラシック 洋菓子でめぐる音楽史』にするか迷ったんですよねえ。当時の様子が目に浮かんできて、歴史としても興味深く、また旅のガイドとしても♪

 

 

『歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる』

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遠藤雅司著 柏書房 

最古のパンからヴェルサイユ宮殿の晩餐まで5000年の時を旅する、再現料理レシピエッセイ。8時代40品のレシピを収録。紀元前3000年のギルガメシュから19世紀後半のビスマルクまで、あの歴史上の人物は何を食べていたのか。こんな切り口なら歴史も面白いですよね~。学生時代に出合っておきたかった!聞きなれないメニュー名がずらりと並んでいるのも、新鮮!どんな味がするのかな?と想像するのもワクワクしますよね♪

 

 

『シネマ&フード 映画を食卓に連れて帰ろう』

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CUEL著 KADOKAWA

2016年に閉館した渋谷の単館系映画館シネマライズ。同館名物パンフレットにあった映画をイメージした料理を40品掲載。

はあ、ミニシアター系好きにはたまらない一冊ですよねえ。現在の映画とフードのコラボの流れを作ったのは、シネマライズのパンフレットでのCUELの連載が始まりなんですって。洗練されたデザインと内容にも注目!

 

 

『ひと皿の小説案内』

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ダイナ・フリード著 阿部公彦マール社

名作につきものの料理が印象的な場面。古典から現代ものまで海外小説50篇のそんな美味しい場面を再現。

 

各小説から抜き出した引用文とともに掲載されているところが、いいんですよねえ。ポイントは、あまり美味しそうに見えない料理(笑)。それが、いかにも海外っぽくて、逆に面白い。作家のエピソードや食にまつわるミニ知識もついていて、ブックガイドとしても。

 

 

おいしいおはなし 子どもの物語とレシピの本

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本とごちそう研究室著 グラフィック社

誰もが知ってる名作から、知る人ぞ知る物語まで、子どもの文学40冊から40のレシピを掲載。

 

こちらもねー、紹介するのをこちらにするか、『絵本のお菓子』というレシピ本にするか、すーごく迷ったんです。ただ、読み物としてはこちらかな、と。各物語への個人的な思い出が語られているからこそ、著者とおしゃべりしている気分になる一冊。そこを拾う?(笑)というようなレシピもあり、個性的な春夏秋冬レシピが満載なのも魅力なんです。

 

 

『魔法使いたちの料理帳 Ⅱ』

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オーレリア・ボーポミエ著 田中裕子訳 原書房

大好評だった「読んで見て食べるファンタジー」の待望の第二弾。魔法使いも抗えない魅力のレシピ満載。

 

名作古典文学から、ゲームや映画含む現代っ子向けファンタジーまで網羅したスイーツの魔術書。文学に特化していないところがいいなあ、と。とにかく写真が美しいんですよ、こちら。世界観がね、もうもう素晴らしい!文章もユニークで、見て、読んで、飽きない一冊。

私たちはみんな最強!

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『最強の天使』(2007年)まはら三桃作 講談社

 

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今日の一冊は、図書館でタイトルが気になって手に取ったコチラ!

 

何の前知識も入れずに読んだので、読み終えたあと、こちらが『カラフルな闇』という物語の続編というかスピンオフ作品だったことを知りました。でも、そちらを読んでいなくてもじゅうぶん楽しめました!

 

中学3年の9月、引っ越しを余儀なくされた主人公には告白したい相手がいる(これが、純粋でよいのですよー)。父親はある日家で出ていき、母子家庭。引っ越し近くに、偏屈な祖父が自分に会いたがってることを知った主人公は祖父に会いにいき......。というあらすじ。

 

偏屈な祖父の変わりようが不自然だった、と指摘する人もいるけれど、私は素直に楽しめました。

 

紹介文にあった”最強の遺伝子”ってね、何か職人とか伝統芸能とかの血を実は引いてるのかな?と勝手に思い込んで、全然先が読めなーい、と読み進んでいったたのですが、とんでもない思い込みでした(笑)。

 

最強の遺伝子って、言ってみれば何のこっちゃあない。でも、うん、最強だよね、と泣きそうになった。みんな、みんな最強。誰もが最強の天使だった、って感じられた。今生きてる人は、みーんな最強なんです!さて、最強の遺伝子ってどういうことなんでしょう?それは、読んでのお楽しみ。

 

また、過去の思い出品と向き合ったことで、父親と別れてからの思い出を勝手に自分が書き換えていたことを主人公が発見する場面もよかったなあ。私たちって、今がツライと過去を書き換えがち。実は、人生ってそんな悲劇じゃなかった。ちゃんと楽しんでるときもあった。そんなことも、さらっと教えてくれる物語でした!

じんわり心が温まる物語

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『スモーキー山脈からの手紙』(2015年)バーバラ・オコナー作 こだまともこ訳 評論社

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今日の一冊は、物語の季節は夏ですが、まるで寒い日に飲むじんわりと温まるコンソメスープのような物語。

 

さらりと読めて、人によっては物足りないくらいかもしれませんが、じんわり、いいんですよねえ。まるで良質なミニシアター系の映画を観たかのような気分。

 

舞台は、スモーキー山脈にある古いモーテル。そこを営んでいた老婦人アビーは夫に先立たれ、気力もなく金銭的にも物理的にも困ることがたくさんで、モーテルを売りに出すところから始まります。ところが、いままで全然お客様が来なかったのに、色んな偶然が重なって、同じような年齢の子どもを持つ三家族もやってきて......。

 

それぞれね、悲しみや怒りを抱えてるんです。母親が家を出て行ったことが受け入れられないウィロウは、いきなりモーテルを買い取って新天地でやり直そうとしている父親とギクシャク。ロレッタは会ったことのない産みの母親の死の知らせを受け、育ての両親と一緒に産みの母親の思い出巡りの旅。そして、カービーは素行の悪さが原因で、不良少年たちが集まる山にある学校へと送り込まれる途中

 

......とこんな具合で、どの子も要素的にはかなりドラマチック。でもね、作者は彼らを悲劇のヒロインやヒーローなんかに仕立て上げてないんです。それぞれ抱えてるものは大きいけれど、そこはさらさらと流れるように描く。悲しい出来事があるからこそ、人の優しさが身にしみる。変にドラマチックにならなくても、人生はやっていけるのかもしれない、とふと気づかされる。作者と訳者の優しいまなざしをそこに感じるんです。

 

個人的には、老婦人アビーの変化がぐっときました。夫がいなくなって、無気力になっていたところに、子どもたちがやってきてだんだんと生気を取り戻していくアビー。あれ、アビーってこんな魅力的な人だったんだ?

 

パートナーがいなくなるって、いままでも色々読んでどんな感情か知ったつもりでいたけれど、とってもシンプルに書かれていたのに、今回の物語が、個人的には一番我が身に置き換えて色々考えさせられました。多分、それは私も夫がいないとメンテナンス関連が一切できないからかも(笑)。電球かえるとき、請求書がきたとき、そういうときに喪失感を覚えるんだあ、って。読み終えた後は、ちょっと夫に優しくなりました(笑)。

 

そんなアビーは、いつも夫が最後に倒れたトマト畑で亡き夫に話しかけているのですが、とても印象に残った場面があるんです。それは、アビーが来る郵便物の中にウィロウの母親からの手紙を入れてくれ、と亡き夫に頼む場面。ウィロウは家を出て行った母親からの手紙を待って、待って、待ってるのですが、まだ1通も受け取ってなかったんですね。亡くなった人って、小さな奇跡を起こしてくれる力がありますよね。祈りを聞き届けてくれる(ときどき)。

 

ああ、私たちの人生も、こんな風に自分の知らないところで、色んな人の”祈り”に支えられているんだろうなあ、って。そう思ったら、こみあげるものがありました。本人には伝えないところで、自分も祈ってることって、いっぱいあるもの。

 

もう一つ印象に残ったのは、アビーが問題児扱いされてきたカービーを認めてあげる言葉をかけてあげる場面。いままで、こんな風に人に言ってもらったことがなかったというカービーの人生を思うと、泣けて泣けて仕方なかった。この子たちとかぶったから↓

jidobungaku.hatenablog.com

jidobungaku.hatenablog.com

 

やっぱり、人は人と出会って変わっていくんだな。生かされるんだな。人生って素敵だな、そんな風に思わせてくれる物語でした。

自分が本当にやりたいことって?

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『ハンナの夢さがし』(2015年)ベッティーナ・オプレヒト作 若松宣子訳 偕成社

今日の一冊はコチラ。

自分は何がやりたいんだろう?と向き合う物語。

とっても読みやすく、姉のほうが目指しているのがアイドルだから今の子にも受け入れやすいかな。短い物語です。

 

ヴァレリーとハンナの姉妹は、どちらが先にテレビに出れるかで競います。しかし、そんなことで競うなんて、傷つくのが目に見えているのになあ。目的がずれてない?なんていうか虚栄心じゃない?とか自分の夢を子どもに託す親ってどうよ?という思いも湧きおこり、全然感情移入できなかったのですが、一周まわって、みんな愛おしい。うんうん、いい経験をしたね、って。間違いも失敗も全部、経験。

 

最初、ハンナは姉と一緒にオーディションを受ける方向でがんばっていたのですが、いかんせん容姿がアイドル向きじゃなく、紆余曲折を経て、自分は料理が好きなんだということに気付きます。

 

ここで、思い出したのが昔GyaoでやっていたMaster Chef(マスターシェフ 天才料理人バトル)という番組。これが、もう面白くて面白くて……というか、とにかく美味しそうでたまらず、夢中になって見ていた時期がありました。ただ、番組なのでね、過度に厳しいコメントをして挑戦者を傷つけたり、挑戦者同士を必要以上にライバル視させたりとか、もあったんです。

 

ところが!!!ですよ。この番組の子どものみ出場するバージョン、Master Chef Juniorというのがありましてね、これがびっくりの連続だったんです。大人との違いに。他の挑戦者が褒められると、大人は苦い顔をするのに、子どもたちは、まるで自分のことのように手を叩いて喜ぶんです。合格者同士は抱き合って喜ぶし、落ちた子のところには慰めに行く。ライバルじゃなくて、仲間。その光景に感動して泣いたものでした(笑)。いやあ、もうホントに子どもたちって素晴らしい。審査員たちも、不合格の子たちにかける言葉も励ましで、とにかく優しい(大人には辛辣だった)。ハンナもこういう番組に出れるといいね。

 

さて、本に話を戻すと、結局、ハンナが本当の自分を見つめなおせたのは、本当の自分を応援してくれるヘンリクというボーイフレンド(親友)がいた力が大きかったのです。ヘンリクがいてよかったね、ハンナ!と心から思う。そして、そこまで自分を信じてくれる友だちがいたということは、それはやっぱりハンナ自身の魅力なんだろうな、って思います。

 

何かになろうとするのではなく、本来の自分を見つめ直せば、誰もみな、自分の歩む道を持っている。そう思わせてくれる物語でした。

 

出会いが開く扉

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『十一月の扉』(2016年)高楼方子作 福音館書店

今日の一冊は、11月滑り込みで、どうしても読みたくて再読したコチラ!

ちなみに、青い鳥文庫からも出ています。

 

高楼さんの中では、個人的には『十一月の扉』が一番思い入れがあります。

異年齢が集う十一月荘とは違い、私の場合は同年齢だったけれど、大学時代過ごした寮のことを思い出すからかも。読んでいて、ワクワクします。

 

『十一月の扉』あらすじ

双眼鏡の中に、その家はふいにあらわれた。十一月荘――偶然見つけた素敵な洋館で、爽子は2ヵ月間下宿生活を送ることになる。十一月荘をとりまく、個性的ながらもあたたかい大人たち、年下のルミちゃんとのふれあい、耿介への淡い恋心・・・・・・そして現実とシンクロする、もうひとつの秘密の物語。 「迷うようなことがあっても、それが十一月なら前に進むの」。十一月の扉を開いた爽子を待ち受けていたのは・・・・・・。(出版社HPより転載)

 

高楼さんの物語って、前回ご紹介した『黄色い夏の日』もそうでしたが、小さな一つ一つにときめいたり、共感するんですよね。一気に魅了されてしまうような建物、高額だけれど他では見たこともないような素敵なノート、離れてみて感じた母へのちょっとした苛立ちなどなど。

 

爽子が偶然見つけた素敵な洋館は、すぐに私もほれ込んでしまいました!私もよく素敵な建物見ては、中でどんな人が暮らしてるんだろう、って想像してはワクワクしてるから、爽子の気持ち分かるなあ、って。

 

余談ですが、うちの自宅の窓から見える向かいの山のてっぺんに、気になるお屋敷があるんですね。あそこからは海が一望できるだろうなあ。望遠鏡で覗いてみたいな、でも、想像にとどめておこう、なんて思う想像力をかきたてる立地にあるお屋敷。そうしたら、数年前に有名な方監修の高級日本料理の店が買い取ってしまって。お店としては、それはそれは素敵なのだけれど、なんだか自分の想像はしゅんとしぼんでしまいました。だから、爽子が見つけた洋館は、想像通りの素敵な人たちの集まりで、よかったね、ってしみじみ思うわけです。←誰目線(笑)!?

 

母親への苛立ちもねえ、もう分かる分かる。

うちの母は、とても理解のある親で、文句言ったら罰が当たりそうなくらいいい親で、娘の私とも仲良しでした。でもね、大学時代に寮に入って、離れてみて、初めて私も親に苛立ったったのです。初めてというか……正確にいえば、中学入ってから毎朝訳のワカラナイ苛立ちで八つ当たりはしてましたが。朝不機嫌で家族から有名な私でした(笑)。

 

大学時代に母に苛立った理由、それは“母ももっと自分を生きればいいのに”と思ったからなんです。私に構わないで、もっと自分の世界を広げればいいのに、って。いま思えば、控えめなくらいの関りだったのに、それでも当時は“娘に喜びを見出すな”くらいに思ってた。どんなに理解あるいい親でも、親の呪縛ってある気がするんです。それは、相手が必ずしもかけてるわけじゃなくて、自分が勝手に感じてる呪縛であることが、ほとんどだけれど。親と離れてこそ、子どもは成長するんだな、としみじみ。そして、なんと言っても、いままで出会わなかったようなタイプの人との出会い!はじめて出合う価値観!これって、人生の醍醐味ですよね。

 

十一月に読みたかったけど、もう十一月終わっちゃうじゃない、という方、ご心配なく。物語はクリスマスで終わるので、12月にかけても楽しめる物語です。ぜひ。

ざわざわ......読書が有料習いごとだと!?

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今日はちょっと複雑な気持ちになったことを書きますね。

 

ちょっと前に、現役の東大生が「子どもに読書を好きになってもらうこと」を目指して開発したオンライン習い事サービスがあることを知りました。現役東大生っていうところもポイントなんだろうなあ。その名もヨンデミーオンライン(ネーミング分かりやすい!)。↓

signal.diamond.jp

 

いやあ、複雑な気持ちになりました。

なんなら、聖域を侵されたくらいの気分。

ええ、AIに明け渡しちゃうのー?

読書も習いごとにしちゃうのー?←しかも、お金取るんかいって。

 

最初に出てきたのはそういう気持ち。

 

いや、有料って別に好きで納得して払ってるんだから、外野が何か言うことでもないですよね?でも、ちょっと悔しいなあ。人の思いやぬくもりに頼りたかった部分が、AIにとって代わられてしまったことが。

 

いやいや、別に色んな入り口があったほうがよいよね?

敷居は低くて、気付けば夢中になってるってアリかも。

と思い直し。でもでも、やっぱり有料なのが気になるー。

もし自分の子に、友だちが夢中になってるから自分もやりたい!って言われたらどうするんだろう、自分。

 

技術の進歩は歓迎すべきものだし、今の子たちはデジタルネイティブだし、確かに、読書って“習慣”だし。ゲームやYouTubeばっかり見てるなら、読書にいってくれたほうがよいのかも。という思いも正直、湧きおこる。

それに、思春期なんかはおせっかいな人からよりも、AIからのほうが素直に受け取るかもね、とか。

 

だし、だし、だし、でも、でも、でも、を行ったり来たり、私の動揺っぷりよ(笑)。

 

基本的に、本は人から人へとリアルで手渡したい私が、なぜオンラインにも肯定的なのかというとですね、それは、コロナ禍のステイホーム期間中にYouTube(←読書じゃないんかいっ笑)にいっぱい楽しませてもらったからなんです。

 

最初のハマったのはストピ(ストリートピアノ)。

あれだって、音楽は生が一番と思ってる人たちからすると、邪道 of 邪道なんでしょう。でも、オンラインのおかげで誰もが気軽に聞けるようになった。“場”に集うにはハードルが高かった人たちにも広がった。年齢層も広がった。だから、オンラインの可能性ってすごいなあ、って実感してるんです。そして、何がスゴイって、そこからやっぱり“生”が聞きたい、とリアルへとつながることなんですよね。

 

次にハマったというか、もう出会わせてくれてありがとう!とひれ伏したいくらいなのが藤井風(笑)。そんなにフットワーク軽くない私が、どうしてもリアルで風くんの音を浴びたくて、ライブ会場に足を運んだ。すぐにまた聞きたくて、トレードも申し込んだけど落選したので、有料配信に申し込むの巻。

 

だから、読書もAIにすすめられるのに個人的には嫌悪感は覚えるけれど、そんな選択肢があってもいいのかもしれない。そこから、リアルに戻る可能性大なんだから。でも、習いごとカテゴリーに読書が入るのかあ......という気持ちはぬぐえず。

 

本を手渡すみなさーん!AIよりやっぱり人から人へだなあ、って思ってもらえるよう燃えましょ!細々とだっていい、すぐに結果でなくたっていい。だって、AIは最適なものを出してくれるかもしれないけれど、人間ってそう一筋縄じゃいかないもの。

 

そのとき、難しすぎて全然読めなかった本、それがずっと引っかかってて大人になってから気になって読んだ本

 

全然良さが分からなくて、反発すら覚えたけれど、大人になってから意味が解った本

 

自分からじゃ絶対に手に取らないタイプの本だったけれど、人から勧められたからしぶしぶ読んだら発見だらけだった本

 

あのときお節介だなあ、と思った人が振り返ると大事な出会いだったり

 

そんなものもあるんです。AIはそのときの最適(答え)をくれようとするけれど、すぐには出ないものもある。大事なのは“問い”のほうだから。

 

というわけで、読書の有料習いごと化にちょっとザワザワしたので、自分の気持ちをまとめるために書いてみました。まとまってないですけどね。長いひとりごとにお付き合いいただき、ありがとうございました!

人の想いの強さと危うさと

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『黄色い夏の日』(2021年)高楼方子作 木村彩子画 福音館書店

すみません、投稿21時過ぎちゃいました。

 

今日の一冊は、今年の夏の終わりに出た高楼方子さんの新刊。

 

高楼方子さんの長編って、読むとなんだか”同士”っていう思いがわきあがってくるんです。向こうにしてみれば、同じにしないで、って感じかもしれませんが(笑)。幼少期に海外文学に憧れ、読んで読んで読みまくったんだろうなあ、って。だからなのか、すっと物語が自分の中に入ってくるんですよね。

 

高楼さんの物語は、いつも建物が素敵で、建物自体が魔法を持っているのですが、今回もまさに。物語は素敵な古い洋風建築の家を舞台に展開していきます。

 

主人公は、陸上部に誘われながらも美術部に所属している中学1年生の景介。美術部で人物か建物を描くというお題が出たとき、景介は偶然見かけたとある洋館に魅了され、どうしてもその家を描きたくなるんです。

 

分かるっ!!!もう、この序盤だけでワクワク。

私自身は、そんなに建物に興味があるわけではないけれど、それでも色んなおうち見ながら散歩するの好きなんです。鎌倉山のお屋敷街とか特に楽しいし、山の上に突然、空想をかきたてるようなおうちがあったりなんかした日にはもう、どんな人が住んでいるんだろう、かつてどんな人が住んでいたんだろうと想像が止まらない。物語に葉山兄弟商會というのが出てくることもあって、私の中では、物語の舞台はすっかり葉山。

 

さて、偶然が重なって、景介はその家に住む元編集者(←この編集者っていうのがまたいいんだなあ)のおばあさん小谷津さんのところに出入りすることになるのですが、そこで出会った、不思議な少女ゆりあに恋してしまいます。

 

このゆりあがね、なんともいえず小悪魔なんですよ。でも、魅了されるの分かるなあ。美しい人って、まず基本何でも許してあげたくなる(笑)。そして、わがままですら自分の欲求に忠実に生きている感じがして、もはや清々しい!

 

最初はゆりあのことを不思議に思わなかった、景介。が、やがて裏の日本家屋に住むやや子(この子が、自分をしっかり持ってて、また魅力的!!!)と知り合ったあたりから、あれ?時空がゆがんでいる???ということにうっすら気づき始めるのです(でも、認めたくないので認めない)。

 

き、来たわ。私の大好きなタイムファンタジー

老人と子どもといえば大大大好きな『トムは真夜中の庭で』じゃないの。この物語は、『トムは真夜中の庭で』や『思い出のマーニー』のオマージュ???......と思ったのですが、ちょっと違いました。どう違うかは、読んでのお楽しみ。幻想的なのに、リアリティがあります。

 

ただ、小さい頃空想家だった私には、この物語はとっても自然に受け入れられたんです。現実と物語と空想、境界線があいまいになって記憶がごっちゃになっていく感じ。ああ、分かる、分かる、って。

 

そして、この物語は、毒もあるキンポウゲに託して、空想の世界だけに引きずられたら危険ということも匂わせてくれます。”行きて帰りし物語”じゃないと、やっぱり危険なんだなあ。行きっぱなしじゃダメ。景介、危うかった!

 

高楼さんが、この家のことをやや子のことを形にしてくれ、書いてくれてよかったな。たとえ、小谷津さんの記憶が薄れても、それらは私たち読者の中に生きるもの。彼らの記憶にアクセスできて嬉しい。ちらっとしか出てこない景介のお兄さんやお母さん、それと後半、鍵になってくる幼なじみの晶子もそれぞれに魅力的でした。

 

訪ねるたびに、小谷津さんが入れてくれたという菩提樹の花のお茶、私も飲んでみたいなあ。あ、菩提樹ってリンデンフラワーのことか(飲んだことありました)。夏が来たら、ハーブティーを飲みながら再読したいと思いました。

 

福音館書店のHPで試し読みもできますので、よかったら↓

www.fukuinkan.co.jp