Pocket Garden ~今日の一冊~

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自分が本当にやりたいことって?

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『ハンナの夢さがし』(2015年)ベッティーナ・オプレヒト作 若松宣子訳 偕成社

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自分は何がやりたいんだろう?と向き合う物語。

とっても読みやすく、姉のほうが目指しているのがアイドルだから今の子にも受け入れやすいかな。短い物語です。

 

ヴァレリーとハンナの姉妹は、どちらが先にテレビに出れるかで競います。しかし、そんなことで競うなんて、傷つくのが目に見えているのになあ。目的がずれてない?なんていうか虚栄心じゃない?とか自分の夢を子どもに託す親ってどうよ?という思いも湧きおこり、全然感情移入できなかったのですが、一周まわって、みんな愛おしい。うんうん、いい経験をしたね、って。間違いも失敗も全部、経験。

 

最初、ハンナは姉と一緒にオーディションを受ける方向でがんばっていたのですが、いかんせん容姿がアイドル向きじゃなく、紆余曲折を経て、自分は料理が好きなんだということに気付きます。

 

ここで、思い出したのが昔GyaoでやっていたMaster Chef(マスターシェフ 天才料理人バトル)という番組。これが、もう面白くて面白くて……というか、とにかく美味しそうでたまらず、夢中になって見ていた時期がありました。ただ、番組なのでね、過度に厳しいコメントをして挑戦者を傷つけたり、挑戦者同士を必要以上にライバル視させたりとか、もあったんです。

 

ところが!!!ですよ。この番組の子どものみ出場するバージョン、Master Chef Juniorというのがありましてね、これがびっくりの連続だったんです。大人との違いに。他の挑戦者が褒められると、大人は苦い顔をするのに、子どもたちは、まるで自分のことのように手を叩いて喜ぶんです。合格者同士は抱き合って喜ぶし、落ちた子のところには慰めに行く。ライバルじゃなくて、仲間。その光景に感動して泣いたものでした(笑)。いやあ、もうホントに子どもたちって素晴らしい。審査員たちも、不合格の子たちにかける言葉も励ましで、とにかく優しい(大人には辛辣だった)。ハンナもこういう番組に出れるといいね。

 

さて、本に話を戻すと、結局、ハンナが本当の自分を見つめなおせたのは、本当の自分を応援してくれるヘンリクというボーイフレンド(親友)がいた力が大きかったのです。ヘンリクがいてよかったね、ハンナ!と心から思う。そして、そこまで自分を信じてくれる友だちがいたということは、それはやっぱりハンナ自身の魅力なんだろうな、って思います。

 

何かになろうとするのではなく、本来の自分を見つめ直せば、誰もみな、自分の歩む道を持っている。そう思わせてくれる物語でした。