Pocket Garden ~今日の一冊~

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出会いが開く扉

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『十一月の扉』(2016年)高楼方子作 福音館書店

今日の一冊は、11月滑り込みで、どうしても読みたくて再読したコチラ!

ちなみに、青い鳥文庫からも出ています。

 

高楼さんの中では、個人的には『十一月の扉』が一番思い入れがあります。

異年齢が集う十一月荘とは違い、私の場合は同年齢だったけれど、大学時代過ごした寮のことを思い出すからかも。読んでいて、ワクワクします。

 

『十一月の扉』あらすじ

双眼鏡の中に、その家はふいにあらわれた。十一月荘――偶然見つけた素敵な洋館で、爽子は2ヵ月間下宿生活を送ることになる。十一月荘をとりまく、個性的ながらもあたたかい大人たち、年下のルミちゃんとのふれあい、耿介への淡い恋心・・・・・・そして現実とシンクロする、もうひとつの秘密の物語。 「迷うようなことがあっても、それが十一月なら前に進むの」。十一月の扉を開いた爽子を待ち受けていたのは・・・・・・。(出版社HPより転載)

 

高楼さんの物語って、前回ご紹介した『黄色い夏の日』もそうでしたが、小さな一つ一つにときめいたり、共感するんですよね。一気に魅了されてしまうような建物、高額だけれど他では見たこともないような素敵なノート、離れてみて感じた母へのちょっとした苛立ちなどなど。

 

爽子が偶然見つけた素敵な洋館は、すぐに私もほれ込んでしまいました!私もよく素敵な建物見ては、中でどんな人が暮らしてるんだろう、って想像してはワクワクしてるから、爽子の気持ち分かるなあ、って。

 

余談ですが、うちの自宅の窓から見える向かいの山のてっぺんに、気になるお屋敷があるんですね。あそこからは海が一望できるだろうなあ。望遠鏡で覗いてみたいな、でも、想像にとどめておこう、なんて思う想像力をかきたてる立地にあるお屋敷。そうしたら、数年前に有名な方監修の高級日本料理の店が買い取ってしまって。お店としては、それはそれは素敵なのだけれど、なんだか自分の想像はしゅんとしぼんでしまいました。だから、爽子が見つけた洋館は、想像通りの素敵な人たちの集まりで、よかったね、ってしみじみ思うわけです。←誰目線(笑)!?

 

母親への苛立ちもねえ、もう分かる分かる。

うちの母は、とても理解のある親で、文句言ったら罰が当たりそうなくらいいい親で、娘の私とも仲良しでした。でもね、大学時代に寮に入って、離れてみて、初めて私も親に苛立ったったのです。初めてというか……正確にいえば、中学入ってから毎朝訳のワカラナイ苛立ちで八つ当たりはしてましたが。朝不機嫌で家族から有名な私でした(笑)。

 

大学時代に母に苛立った理由、それは“母ももっと自分を生きればいいのに”と思ったからなんです。私に構わないで、もっと自分の世界を広げればいいのに、って。いま思えば、控えめなくらいの関りだったのに、それでも当時は“娘に喜びを見出すな”くらいに思ってた。どんなに理解あるいい親でも、親の呪縛ってある気がするんです。それは、相手が必ずしもかけてるわけじゃなくて、自分が勝手に感じてる呪縛であることが、ほとんどだけれど。親と離れてこそ、子どもは成長するんだな、としみじみ。そして、なんと言っても、いままで出会わなかったようなタイプの人との出会い!はじめて出合う価値観!これって、人生の醍醐味ですよね。

 

十一月に読みたかったけど、もう十一月終わっちゃうじゃない、という方、ご心配なく。物語はクリスマスで終わるので、12月にかけても楽しめる物語です。ぜひ。