Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

自分の龍ってどんなだろう?

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『龍のすむ家』(2013年)クリス・ダレ―シー作 三辺律子訳 竹書房文庫

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今日の一冊は、世界で200万部のベストセラーファンタジー

 

ああ、これ子どもの頃に出合っていたかったなあ。そしたら、もうちょっと純粋に楽しめたかも。追っかけたり、転んだり、まあにぎやか。子どもはこういうドタバタ楽しいですよね!

 

個性ある龍たちのイラストが分かりやすく、また人物(龍)紹介があるのは、すぐ忘れちゃうお年頃(アラフォー以上)にはありがたい。

 

『龍のすむ家』あらすじ

 

下宿人募集―ただし、子どもとネコと龍の好きな方。そんな奇妙なはり紙を見て、デービットが行った先は、まさに“龍だらけ”だった。家じゅうに女主人リズの作った陶器の龍が置かれ、2階には“龍のほら穴”と名づけられた謎の部屋があった。リズはそこで龍を作っているというが、奇妙なことにその部屋には窯がない。いったいどうやって粘土を焼いているのか…。ひっこし祝いに、リズはデービットに「特別な龍」を作ってくれた。それは片手にノートを持って、鉛筆をかじっているユニークな龍だった。(BOOKデータベースより転載)

 

 

下宿先の娘ルーシーという子がいるのですが、まあ、この子が人の都合も構わず“いまやって!”の子なんですよね(ん?うちの子と同じだわ笑)。

ちょっと、一回落ち着こっか……と言いたくなる(笑)。彼女に共感できるか、ほほえましく思えるかどうかが、この物語に入り込めるかどうかの分かれ目のような気がします。

 

こちらの物語はシリーズもの(全5巻)で、1巻は序章という感じらしく、2巻以降から壮大になっていくようです。

 

1巻は龍というよりも、リスの救出劇が中心だったんですが、こういう人間を超える大きな存在があることは大事だなあ、って思います。

特に西欧は、日本人とは違って、動物や自然界を支配するものとして人間が君臨してますからね。でも、龍はそれを超える存在!

ちなみに、タイトルが龍なので、龍とかいていますが、ドラゴン(竜)です。

 

女主人リズは、その人だけの特別な龍を作ってくれるんです。

自分だけの特別な龍ってワクワクしますよね。

私のはどんなんなんだろう、って考えるの楽しい。

 

人間関係だけの世界で息苦しくなっている人に、おすすめです!

 

 

これぞ生きる力!(技術編)

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『PRIMITIVE TECHNOLOGY サバイバリストのための、道具や家やいろいろなものを自然の中で作るガイド』(2020年)ジョン・プラント著 金井哲夫訳 技術評論社

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最近、重めのテーマの本を立て続けに読んでいています。私自身は発見があって興味深いのですが、あまりブログに重いテーマばかりでもなあ、と今日はこんな本をご紹介。

次男(小6)の誕生日にあげた本です。

 

こ・れ・は、楽しい!!!

マッチもナイフもなしで身一つで生き残れるか?

 

THE☆サバイバル。

学歴だって大手企業に就職したからって保証のない世の中、これぞ、これからの社会どう生き残るかですよね(笑)!

 

これ何がいいって、ナイフすら使わないところなんです!

世のお母様、安心なんじゃないでしょうか?

うちの子たちは3歳前からノコギリ使ったり、ナイフも早くから普通に使っていたんですけど、さすがにお友だちが来るときは禁止してたんですよね。お友だちが使えないので……。

 

そんなこともあり、ナイフなしでもできるとなれば、お友だちとも一緒にできる可能性も広がるので、嬉しい!

 

さて、著者のジョン・プラントさんは、YouTuberなんですよ。Primitive Technologyというチャンネルをしていて、登録者数はなんと1040万人!

www.youtube.com

 

似たようなチャンネルはたくさんあって、実はうちの子がハマっていたのは、こちらの方だったのですが↓

www.youtube.com

 

コロナ休校中にハマって見ていて、おかげであの時期、ものすごく充実してたんですよねえ。学校再開すると分かったとき、ブーイングが出ましたもん。この方たちには、とっても感謝してるんです。

 

動画ももちろん楽しいのですが、いざ自分が実践してみようと思ったら、やっぱり本なんですよね。めくりながら見返せるのが最適。

これはもう図書館で借りるのではなく、手もとに置いてあげたい一冊です!(実践しながら見ると汚れますしね笑)。

お値段は2,380円+税なので、ちょっと買うのに躊躇しちゃうかもしれませんが、オールカラーで、写真いっぱいです。

 

こういうの作っててもね、その子の中に物語がたくさんあれば、楽しさが何倍にも膨らむんだなあ、って見ててしみじみ思うんです。

だから、日頃から絵本や本に親しみたい。読み聞かせでも。物語って、そのとき堪能できるだけじゃなくて、別の時、場所、遊んでる中でも想像を膨らませてくれるんですよね。

 

ああ、秘密基地の小屋とか楽しそう!

とつい大人はオオモノ狙ってしまいますが、今のところ次男は石器づくりに夢中です。

“この切れ味!”

とか大満足しながら紙切ったり。

 

原始的な技術ってお金がかからずに楽しいですし、何もなくなっても何とでも生きていける!という自信が無意識化に芽生える気がします。

そしたら、むやみに不安に陥らずに生きていけますよね!それって、すごく強いことだと思うんです。おすすめです!!!

 

 

 

それでも人間は愛おしい

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『本を読む人』(2016年)アリス・フェルネ作 デュランテクスト・冽子訳 新潮社

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今日の一冊は、個人的には読む前と、読んだ後で印象が全然違っていた印象の本でした。

 

手に取った理由は、あらすじに惹かれたから。あらすじはこんな感じです↓

 

『本を読む人』あらすじ

 

エステールは、黄色いルノーに本を積んでやってきた。パリ郊外と思しき荒れ地に暮らすジプシーの大家族。女家長のアンジェリーヌは、5人の息子、嫁と孫たちに囲まれて、一日中、焚き火の側に陣取っている。自由と濃密な家族愛はたっぷりとあるが、仕事も生活保障もない、着の身着のままのその日暮らし。彼らの野営地を、あるとき「よそ者」が訪ねてくる。エステールという名の、穏やかで優しい、だが不屈の図書館員だった…。ジプシーの大家族とある図書館員の物語。20年におよぶフランスのロングセラー。(BOOKデータベースより転載)

 

読み聞かせで、子どもたちが心を開いていくとなれば、もう読むしかないでしょう!

 

でも、読み始めてすぐ思いました。あ、やっぱりこれフランス文学だった。

アモーレの国だった(笑)。

 

私が最近児童文学にどっぷりなせいか、またはもともとフランス文学にはあまりなじみがないせいか、実は個人的にはちょっと読みにくかったんです。

どーしょもない夫陣の衝動も個人的には全然共感できないし、暴力的な描写とかも苦手で……。

 

でもねー!さすが、20年におよぶロングセラーですね。私にとっては、遅効性の文学でした。読み終えて既に2週間くらいたっているけれど、いまだジワジワきています。

 

匂いも感じる文学って、印象が強烈ですよね。

この文学は、焚火の匂いがするんです。しかも、キャンプのときのような美しいものではなく、廃材はじめ何でも燃やしちゃうから悪臭もする焚火。

 

ここに出てくるジプシー家族もこの焚火のようなんです。決して素材(浮気性、DV,男尊女卑、盗みを悪いとも思わない感覚、無気力、貧困、お世辞にも素晴らしいとはいえない人間性)は美しくないのに、放たれる炎はやっぱり美しい……。強烈な面々。

すさまじいまでの“人間くささ”“生”を感じるんです。完璧さからはほど遠いのに、いつの間にか彼らを訪問している図書館員エステール同様、彼らに惹かれはじめている自分がいる。

 

原題は『恩寵と貧困』というらしいのですが、確かに不思議と恩寵としかいいようのない何かがそこにはあるんですよねえ。

 

しかし、いやあ、生命に関することでは女性は強い!社会的には弱い立場なのに、やっぱり強い!そして、どうしようもない男性陣たちにも天使のようにかわいい子供時代があったことを、母親であるアンジェリーナがことあるごとに思い出させてくれる。

人間って不思議……。

 

読みづらいと思っていたのに、読み終えてしばらくたっても、彼らは私の元から去ってくれないんです。すっかり居ついてる。

 

テーマとして直接的に描かれているわけではなかったけれど、資本主義社会、西欧的価値観の中でのジプシーである彼らの生きづらさを思いました。もっと彼らについて知りたいなあ。

何かおススメの本があったら教えてください!

犯罪のない社会をお望みですか?知ろうとする大切さ

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湘南にはシネコヤというレトロで素敵な小さな映画館兼貸本屋さんがあるのですが、先日久々に訪れ、『プリズン・サークル』を見てきました!

 

今日は映画の紹介ですが、関連したおススメ本も4冊、最後に紹介もしますね。

 

さて、『プリズン・サークル』

「島根あさひ社会復帰促進センター」という官民共同の新しい刑務所でのドキュメンタリーです。刑務所にカメラが入ったのは初めてなんだとか。そこでは、TC=回復共同体と呼ばれる、受刑者が“罪を犯した自分と向き合う対話形式の”再生プログラムが、日本で初めて取り入れているんです。

 

もうね、冒頭からこみあげるものが。

ああ、やっぱりね……。受刑者である彼らは加害者である前に被害者だった。それも圧倒的な。

 

彼らの幼少期の話にも触れられ、それが砂絵のアニメーションで表現されるのですが、もうね……。

未就学児から一人で留守番して、家事を全部ひとりでこなしてきた少年。

そこまでがんばる理由は、そしたら夜帰宅したお母さんに一緒に遊んでもらえると思ったから。でも、現実は、疲れた母は帰宅するなり寝てしまう。

孤独に奮闘している小さな小さな男の子たちの姿が見えて、涙抑えるのに必死でした(ティッシュ忘れたから、おおっぴらに泣けなかった笑)

 

父親から虐待されて育った人たちも多い。

そんな彼らは、やがて自分も暴力をふるうようになっていきます。そうすると、人をコントロールできてるような気になれたし、自分のほうがひどい目にあってきたのだから、このくらいって思っちゃう、って。暴力の連鎖。

 

刑務所の中だってね、番号で呼ばれて看守から罵倒されて、震え怯えながら彼らは暮らしているんです。罪人なんだから当たり前?加害者なんだから、そのくらいじゃないと?そう思われても仕方ないくらい、彼らがしたことは許されることではないかもしれません。

 

でも、TCではじめて、外部からの心理士や一緒に受講してる仲間から名前で呼ばれて、きちんと目を見てもらえた、と彼らが語っているのを聞いて、ちょっとショックでした。人間扱いしてもらえずに、どうして他の人を大切にできよう、って。

他人から“受け入れられる”、そこから、はじめて自分と、自分の罪と向き合うことができるんじゃないでしょうか。

 

また、もうひとつ私がショックだったのは、受刑者たちの昔の話の中で、彼らがいじめられているとき、クラスメートや先生たちは傍観したり、ときには加担(!)していたというんです。私だったら、どうしてただろう?疑問を抱きつつも、きっと傍観側にいたのではないだろうか、と思ったら、ゾッとしたのです。

 

自分は関係ない?

自分の周りにそんな人はいない?

そうかもしれない。でも、たとえ身近にいなくても、こういう人たちに無関心であること、それ自体が加担しているんだなあ、って痛感しました。

がんばって出所しても、世間の目にたえられなくて再犯してしまう人たち。

それは、ひとえに偏見を持ってる世間一般の私たちが理解しようとしないから、受け入れ先がないからなんですよね。

 

刑務所内での彼らは、意外にもとっても礼儀正しく、言葉遣いもきちんとしていました。刑務所で厳しく指導されてるから、当たり前なのでしょうけれど、坊主制服であることもあってか、とても“普通”の人たちに見えたのです。彼らは決して、遠い存在じゃない。

 

もうもうすべての刑務所に導入されたらよいのに!と思うこのプログラムですが、全国に約40万人の受刑者がいるのに対し、このTCが受けられるのは、なんと!たったの40名なんだそう。

 

幼少期に愛情を受けることの大切さ

 

自分の負の感情にもフタをしないこと

 

自分の感情としっかり向き合うことの大切さ

  

やっぱり、ここなんだなあ。

 

自分の感情にフタをしない、向き合うことの大切さを教えてくれるという意味で、児童文学でしたらこちらがおススメです。

(まあ、小室哲哉氏に関しては、のちの報道で事実と違うことが色々出てきたのでアレですが、当時のままブログは残しておきます笑)↓

matushino.wixsite.com

 

TCではないですが、先住民族の知恵を取り入れた興味深い更生プログラムを描いたこちらの物語もおススメです↓

blog.goo.ne.jp

 

刑務所の子たちの真の姿を知るには、涙あふれて止まらないこちらもぜひ!

見える世界が変わってくるので!↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

なぜ、周りが変わらなければならないのかが、よく分かるのはこちら↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

決して、無関係じゃない。

きっと、何か私たちにもできることがあるはず。

まずは、知ろうとするところから!

とてもよい、心揺さぶられるドキュメンタリー映画でした!

 

 

 

素行の悪い大人ってどうよ?

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『おじいちゃんとの最後の旅』(2020年)ウルフ・スタルク作 キティ・クローザー絵 菱木晃子訳 徳間書店

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ああ、もうね老人と子どもの組合せは、最高ですね!

 

ウルフ・スタルク大好きなんです。ウルフ・スタルクはスウェーデンを代表する現代児童文学作家で、今回ご紹介するこちらは遺作。

ユーモラスなんだけど、ただただ明るいだけじゃなくて、かすかな人生の悲哀もあって。クスッと笑えてしんみり。なんとも人間味にあふれてる。

 

字も大きいし、短いし、小学校中学年くらいの読者層を想定しているのだと思います。が!多分これがジワジワ染み入るのは大人かもしれない。うん。

 

物語は、口も態度も悪くて看護婦さんたちを困らせている入院中のおじいちゃんを、孫が連れだして島のうちへ一日だけ連れ帰るというお話。

 

おじいちゃんとこの孫ウルフの父親(おじいちゃんの息子)はとにかく馬が合わない。だから、お父さんはお見舞いにもあまり行きたがらないし、もちろんおじいちゃんとの旅なんて大反対するに決まってるから、ウルフはウソをつくんです。ええ、そりゃあもう見事に(笑)。ウルフは自分自身がモデルで、他の物語の中でも嘘つきぶりは素敵に発揮されてます(笑)。

 

短編『うそつきの天才』シリーズも大好きでした!↓

 

matushino.wixsite.com

 

matushino.wixsite.com

 

さて、今回の物語に話を戻すと、このおじいちゃんのひどい言動はぜひ大人に見てもらいたい。え、許されるの、これ?ってなるから(笑)。でも、孫ウルフはそんな大人として悪い見本のようなおじいちゃんが大好きなんです。そのままのおじいちゃんが。

 

あ、分かる。私も周りから“いじわるばあさん”と呼ばれ、毒舌だった父方の祖母のこと、大好きでしたもん。大変な姑で、今は母がいかに大変だったかが分かるけれど、それ知ってからも好きだった。そこに、理由なんていらない。

 

人として成熟してる大人しか好きになっちゃいけない、なんてルールどこにもないハズなんですよね(忘れられがちだけど)。そして、子どもも、いい子じゃなきゃ、好きになるのに値しないなんてことはない。それがよく描かれているのが、スタルクの別の物語。↓

blog.goo.ne.jp

 

子どもたちが『おじいちゃんとの最後の旅』を読んだら、どこかホッとするかもしれない。そして、大人は大人で“最後のありかた”というものについて考えさせられる。夫婦についても。短いけれど、深いですし、色々問いかけられる物語でした。

 

スタルクは『おじいちゃんの口笛』をはじめ、絵本もとてもよいので、ぜひ!

 

 

 

モスク=テロリスト養成所

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『となりのイスラム』(2016年)内藤正典著 ミシマ社

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モ、モスクはテロリスト養成所!?!?!?

いきなり不快なタイトルで申し訳ありません。

 

でも、これ、そのような印象を抱かせるような表現を、学校側がしてしまったのです。

 

いやあ、やっちゃいましたね、佐賀県の模擬試験。

先日、英語の模擬試験の問題文で、不適切な表現があったと謝罪がありました。

どういった内容だったかというと、エジプトで見かけた貧しい子どもたちについて「もし子どもたちがお金を稼ぐことができなかったら食べ物を求めてモスクに行きテロリストになる」と説明する場面があった、というのです。

びびび、びっくり。これ、モスク=テロリストのイメージですよね?

 

さらに驚いたのは、10人程度の教員が作成に携わったにも関わらず、誰一人としてその差別表現に気づかなかったということ。

ニュースはこちら↓

www3.nhk.or.jp

 

生徒が分からないで言ってしまうのなら、まだ理解できます。

でも、先生たち……。しかも、英語とあるので、グローバルな視点を持っていると思える先生たちで構成されてたと思うんですよねえ。

 

とはいえ、私は彼らのこと責められません。過去の私だったら、その差別に気づかなかったかもしれないから。

過去ブログでも何度も書いてますが、私がイスラム教への偏見が取り除かれたのは、留学中に、実際にイスラム教徒の友だちができたからなんです。

そして、そこから本を読んでいったから(少しだけれど)。

 

知らないから人は偏見を抱くし、コワいんですよね。

本を読んで身近になり、さらに物語の中にイスラム教徒の友だちができれば、偏見は持たなくなってくると思うんです。

 

だから、これを機会に、子どもたちにはそういう本をおススメしたい!今日は3冊ご紹介しますね。

 

まずは、上記の『となりのイスラム』。

こちらは、中学生でも分かるように書かれているので、とっっっても分かりやすい。

過去記事はこちら↓

blog.goo.ne.jp

 

モスクって本当に平和で神聖な空間なんです。

モスクに行ってテロリストになるって……あまりにも想像力がなさすぎ。

 

先生は多角的に物事を見ることを生徒に教えてほしいなあ。

メディアを鵜呑みにしないことも、先生たち自身が肝に銘じてほしい。

 

とはいえ、日本にいると入ってくる情報は偏ってますからね。例えば、第二次世界大戦中、良心的なクリスチャンの人たちがユダヤ人をかくまう話は数多くあれど、実はモスクでもかくまっていた話もあまり知られていない気がします。

『パリのモスク』を読むと、本当に私たちが知ってるのは一部なんだなあ、って気づかされます。

blog.goo.ne.jp

 

 

 

そして、やっぱり一番身近に感じるのは物語ですよね!

最後にご紹介するのは、新藤悦子さんの『青いチューリップ』。

こちらでは、モスクの文様や色の奥深さにも触れられていて、これ読んだ子はモスクに悪い印象なんて抱きようがないと思うのです。本嫌いだった、うちの次男も夢中になって読んだ本です。

 

正直、子どもはイスラムがどうのこうのとか意識せず読んだと思うのですが、この意識せずというところが大事な気がしていて。変に偏見を取り除こう!とするのではなく、もう当たり前のこととして身近な親しい存在として潜在意識の中に残ってくれたらなあ、って。↓

 

blog.goo.ne.jp

 

ほかにも良い本たくさんあると思うので、おススメがあったら、ぜひ教えてください♪

 

 

 

 

君のこと忘れないよ、エイリアン

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『石を抱くエイリアン』(2014年)濱野京子著 偕成社

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今日の一冊は、ちょっとテーマは重いかもしれませんが、文体は現代っこの一人称語りなので、本が苦手な子でもすっと読めそう。YA(ヤングアダルトと呼ばれる思春期向きの分野)です。

 

1995年生まれのこどもを描いています。

1995年といえば?

 

1月に阪神大震災、3月に地下テルサリン事件

この子たちが中学3年の卒業いに2011年3月11日東日本大震災

 

この年が時代の変わり目になったと考える人は少なくないようで、この年生まれた子どもの話を書いてほしいと、濱野さんリクエストされて書いてみたそう。

 

個人的には、自分の生まれた年に何が起こったのかまったく把握していないし、興味もないんです。けれど、確かにこの年に生まれた子どもたちは親から聞かされているかもしれない、「あなたの生まれた年は大変だったのよ」って。

 

物語の舞台は、茨城なので、3.11の影響がそこまで強いわけではないのですが、それでも巻き込まれた人もいる。多分、たくさん現実にあったであろう物語の一つ。

最後のほうは胸がキュッと締め付けられますが、希望も残してくれます。

 

濱野さんがあるインタビューの中で言ってたんですよね。

自分は児童文学作家を目指してたわけではなかったけれど、ただ児童文学と関わってよかったのは「希望を語る」という事に親和性があるジャンルだった事、って。そして、濱野さんは常に人間は生き直せるということが頭にあるそう。このインタビューよかったので、ぜひ↓

note.com

 

さて、今回の物語の主人公の八乙女市子は、みんなから姉さんと呼ばれて親しまれている普通の女子中学生です。どこにでもいそうな家族構成、成績も運動も普通。特に葛藤や悩むようなできごとがあるわけでもないけれど、辞書から「希望」の字を切り取ってみたり、どこか投げやりな気持ち。

 

こういう子多いんじゃないかな。

 

そんな姉さんに思いを寄せる男子、高浜偉生(たかはまよしお)はちょっと変人、宇宙人的。将来は日本一の鉱物学者を目指しています。自分の誕生日に、なぜか姉さんにジルコンの原石を渡したり、デートに誘うのもつくば宇宙センター。こういう子、浮いちゃうけど大好き。

 

この物語は原発のこともテーマに入っているのですが、その、よしおがよしおが原発が嫌な理由も彼らしくて、実にいいんですよね。核のゴミ(放射性廃棄物)を近く深くに埋めるという話があり、ガラス固体化というのに閉じ込めるというけれど、プルトニウム239が元の半分になるまでの期間は2万4千年。

 

過去のことがきちんとわかってないのだから、未来人が現代のことをちゃんと把握できる保証なんてないよ。とにかく、自然のダイナミズムが形成した地層の奥深くに、そんな不純物が置かれるなんて、いやだな。石だってめいわくだよ(P.105)

 

この人間中心じゃない彼に視点が好き。

 

ただ、この原発に関する議論のところは、会話文で説明しすぎてしまってるかも。

どうしても反原発のほうに傾きがちで、どんなにそれが正しくても反発心を覚える子はいるだろうなあ、って。私自身は昔から反原発ですが、それでもちょっとそう感じてしまった。多分、この時期の子はそれがどんな価値観であろうと、誰かからその価値観を強くプッシュされるということに反発を覚えてしまう気がする。

 

難しいですね。

そう、難しいんです。

 

でも、原発や3.11のことなど、難しくてこれをテーマに書くのを避けがちな人が多い中で、正面から向き合おうとする濱野さんは素敵です。

濱野さんの3.11テーマのものだったら、こちらもよかったです。↓

jidobungaku.hatenablog.com