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今日の一冊は、ちょっとテーマは重いかもしれませんが、文体は現代っこの一人称語りなので、本が苦手な子でもすっと読めそう。YA(ヤングアダルトと呼ばれる思春期向きの分野)です。
1995年生まれのこどもを描いています。
1995年といえば?
この子たちが中学3年の卒業いに2011年3月11日東日本大震災
この年が時代の変わり目になったと考える人は少なくないようで、この年生まれた子どもの話を書いてほしいと、濱野さんリクエストされて書いてみたそう。
個人的には、自分の生まれた年に何が起こったのかまったく把握していないし、興味もないんです。けれど、確かにこの年に生まれた子どもたちは親から聞かされているかもしれない、「あなたの生まれた年は大変だったのよ」って。
物語の舞台は、茨城なので、3.11の影響がそこまで強いわけではないのですが、それでも巻き込まれた人もいる。多分、たくさん現実にあったであろう物語の一つ。
最後のほうは胸がキュッと締め付けられますが、希望も残してくれます。
濱野さんがあるインタビューの中で言ってたんですよね。
自分は児童文学作家を目指してたわけではなかったけれど、ただ児童文学と関わってよかったのは「希望を語る」という事に親和性があるジャンルだった事、って。そして、濱野さんは常に人間は生き直せるということが頭にあるそう。このインタビューよかったので、ぜひ↓
さて、今回の物語の主人公の八乙女市子は、みんなから姉さんと呼ばれて親しまれている普通の女子中学生です。どこにでもいそうな家族構成、成績も運動も普通。特に葛藤や悩むようなできごとがあるわけでもないけれど、辞書から「希望」の字を切り取ってみたり、どこか投げやりな気持ち。
こういう子多いんじゃないかな。
そんな姉さんに思いを寄せる男子、高浜偉生(たかはまよしお)はちょっと変人、宇宙人的。将来は日本一の鉱物学者を目指しています。自分の誕生日に、なぜか姉さんにジルコンの原石を渡したり、デートに誘うのもつくば宇宙センター。こういう子、浮いちゃうけど大好き。
この物語は原発のこともテーマに入っているのですが、その、よしおがよしおが原発が嫌な理由も彼らしくて、実にいいんですよね。核のゴミ(放射性廃棄物)を近く深くに埋めるという話があり、ガラス固体化というのに閉じ込めるというけれど、プルトニウム239が元の半分になるまでの期間は2万4千年。
過去のことがきちんとわかってないのだから、未来人が現代のことをちゃんと把握できる保証なんてないよ。とにかく、自然のダイナミズムが形成した地層の奥深くに、そんな不純物が置かれるなんて、いやだな。石だってめいわくだよ(P.105)
この人間中心じゃない彼に視点が好き。
ただ、この原発に関する議論のところは、会話文で説明しすぎてしまってるかも。
どうしても反原発のほうに傾きがちで、どんなにそれが正しくても反発心を覚える子はいるだろうなあ、って。私自身は昔から反原発ですが、それでもちょっとそう感じてしまった。多分、この時期の子はそれがどんな価値観であろうと、誰かからその価値観を強くプッシュされるということに反発を覚えてしまう気がする。
難しいですね。
そう、難しいんです。
でも、原発や3.11のことなど、難しくてこれをテーマに書くのを避けがちな人が多い中で、正面から向き合おうとする濱野さんは素敵です。
濱野さんの3.11テーマのものだったら、こちらもよかったです。↓