Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

なぜ周りが変わらなければならないのか

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『ケーキの切れない非行少年たち』(2019年)宮口幸治著 新潮社

 

※毎週月曜・金曜の19時(今日はちょっと遅れました💦)更新中!

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今日の一冊は、児童文学ではないのですが、児童つながりでぜひ色んな人に読んでもらいたい一冊。

 

『ケーキの切れない非行少年たち』あらすじ

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。(BOOKデータベースより転載)

 

 

一時期すごく話題になりましたよね。ベストセラー本は基本読まないひねくれ者なので(笑)、興味はあったもののなんとなく読んでいなかったら、お友だちが貸してくれました。

 

うちにはテレビがないので、マスコミがどのように紹介しているか分からないのですが、著者の意図とは違う感じで取り上げられていてとても残念、とそのお友だちが言っていました。本当は、“非行少年たちはこんなに困っていて、助けが必要な子たちなんだ”ということを伝えたいのに、“反省以前の知能が低い子たちなんですよ”という側面ばかりが取り上げられる、と。

 

確かに私自身も中身を読むまで、「へえ、非行少年たちはケーキもまともに等分できない、平等に分けるという感覚がないんだ!」くらいな印象をこのタイトルから受けていました。

 

違う、違う!!彼らこそ、助けが必要な子たちだったのです。

理解すべき、態度を変えるべきは、周りにいる私たちだったのです。

だからこそ、色んな人に読んでもらいたい。

犯罪を減らすために私たちにできること、あるんです!

 

とはいえ、Amazonのレビューでも書かれているように、確かに最後まで読めないと「非行に走るのは知能が低いからだ」と誤解されそうな編集です。だから、最後まで読んでほしいなあ。

 

個人的には、ああ、そうだったのか!とストンと落ちるところがいっぱいで。

 

身近に知的障害の人がいるのですが、見た目普通なので、親が理解しようとしないんですね、いまだに。

 

手に職をと思って親がすすめた洋裁の学校は続かず(この本読むと分かるのですが、不器用なんです。そもそも無理なんです)。

社会人になってからも、案の定仕事も続かず。生理現象もあって、頻繁にトイレに行かないといけないのですが、それがサボってると取られる(職場からも、親からも)。

 

何をやっても続かないダメな人という烙印。

親は、「自分たちを困らせようとしているのか!?」と逆ギレ。

 

違うのに。違うのに。

 

その人は、この本にあるように、先を見通すことができないことによる窃盗もしてしまいました。

 

その親はどう受け止めたか。自分たちに対する嫌がらせと受け止め、ますます反省を促し、結局その人は私が危惧していた通り、新興宗教に入ってしまいました。うん、でもその宗教がその人にとって救いだったのなら、それはそれでいいのだけれど、親はますます嫌がるという事態に。なんで、窃盗までしちゃったかなあ、と私も不思議だったのだけれど、そうか!先を想像する能力がなかったのか、とこの本読んで納得したのです。それだけでも、私にとって読む価値あったな。

 

というわけで、ぜひこの本をその当事者のご両親におすすめしたいのですが、テレビしか見ない、本を一切読まないのです......。さもありなん。

 

そう、困っている子の身内はそういう人が多いのではないか、ということがたやすく想像できるんです。

 

だから!

私たちが理解したいんですよね。変わるのは周りの方なんです。

具体的な方法も書いてあります。特に学校関係者の人たちに、ぜひ読んでもらいたい!

 

号泣が止まらなかったこちらとあわせて、ぜひどうぞ。

人を殺したりするほどの凶悪犯罪を犯した彼らが、なぜ自分たちのことを優しい人だ、というのか、この2冊を読むと理解できると思います。↓

jidobungaku.hatenablog.com