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今日の一冊は、前回ご紹介したコチラの続編↓
サラっと読めるのに心に深く残るのは、シャイローや登場人物がイキイキとしていて、もはや他人とは思えないからでしょう。読書嫌いだった(←祝過去形!)うちの次男(小6)も、夫も気に入ってくれた一冊です。
さて、続編では、前作でも歯ぎしりものだった、村中の嫌われ者ジャド・トラバーズがよくなるどころか、ますます荒れていきます。ナンテコッタ!
不穏な空気。何がコワいって、猟銃を持っているのが普通の地域で、ジャドみたいな人はルールなんて守らないところなんですよねえ。もうホントに銃社会なんてなくなればいいのに!!!
ジャドの評判は前から悪かったものの、なぜ急にお酒に溺れていくようになったのか……。主人公の母さんはこう言います
「ジャドは、鏡に映るものが気に入らないんんだと思うの。ジャドの犬がしょっちゅうマーティのところに逃げてきたこととか、マーティがバカにされてもジャドのために働きつづけたことなんかで、自分のことをじっくり見直してみたんじゃないかしら。で、見えてきた自分の姿が気に入らないんじゃないかと思うの」(P.11)
「近づかないほうがいいわよ!」とか「ヒドイ人ね!」でも「かわいそうな人なのよ」でもなくてね、こういう淡々としたこと、私なら言えたかなあと考えてしまいます。
マーティと交流したことで、そして、シャイローのために懸命になるマーティを見ることによって、ジャドは自分の姿に気づいてしまったんですね。そして、それは認めたくない、どうしようもなく惨めなものだった。
一時は友情に似たものすら通い始めたマーティとジャドでしたが、自分がいかにヒドイことをしたか分かってるからこそ、ジャドはマーティから恨みを買ってると思い込むんですね。なので、彼の車に傷をつけられたりしたものもマーティの仕業だと思い込む。ハラハラドキドキの展開が続きます。
そんなひどくなる一方のジャドなのですが、マーティはジャドと何とか心を通わせたいと思うのです。ただ、怪我が治ってまた悪さをしたらと思うと、素直に「ケガが治るように願ってる」とは言えないんですね。そんなところも、実にリアリティがあっていい。
動物クリニックのマーフィ先生とジャドの会話もいいし、この物語に出てくる大人たちがとーってもいいんです。すぐに答えを出そうとしない。とても、誠実な人たち。考えさせられます。訳者あとがきで、さくまゆみこさんも述べられていますが、この物語はとても考えさせられるのに、お説教臭いところがないのが、とにかくいいんです!
人として、誠実でありたいな。
どんなヒドイ人にも背景ありということを忘れたくないな。
原作では4部作らしいので、あとの2冊も翻訳されるのが楽しみです!
出会えてよかった、と思える物語でした。