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たまにこのくらい、さらりとした物語が読みたくなる。心理描写が丁寧に描かれたり、感情がぐるんぐるん動くものもいいのだけれど、いつもそれだと疲れちゃう。そんなとき、この手のさらりとしたYA(ヤングアダルト:中高生向き)が読みたくなります。エッセイ的な感覚で読める物語。
読書感想文コンクールの課題図書にも過去になっていたみたいですが、課題図書のわりにはそれほど、メッセージ性が強いわけでもなく、著者の価値観をぐいぐい押し付けてくる感じがないのもいい(←何様目線)。
主人公の中二の音和(おとわ)は、都心の学校から両親の離婚、父親の事業失敗に伴い武蔵野の地へ転校。淡々としていて、なかなか尖った面もある音和ですが、変わり者の教師との出会いや、ハトを飼育する新聞部との出会いで少しずつ成長していくというもの。
ああ、野川!表紙の絵もまたいいんですよねえ。
武蔵野の地には個人的に思い入れがある(そのあたりの大学に通っていた)ので、風景が目に浮かぶようでああ、懐かしい。野川自体の記憶はあまりないけれど、野川公園とか行ったなあ。あの辺は都会からそう遠くないけれど、あきらかに時間の流れ方が違っていた。ピクニックに行きたくなってしまいました。
なぜ、新聞部が伝書ハトを飼うのか。
帰巣本能など謎多きハトの生態。
とても興味深いです!もっと知りたくなります。
印象的だったのは、音和が「心を育てる授業にはいつもうんざりしていた」という場面。あ、分かるー!なんだろう、体験を大事にしてくれてるんだけれど、そんな“点”でやっても結びつかないのよね、って私も思ってたから。もちろん、それがきっかけで興味をもって深めていく子もいるわけだから、それ自体が悪いものではないのだけれど……それで大人側が“体験させた気になってる”のが、なんか違うよなあ、って。
だって、感動するときって、いろんなことが“つながった”ときだと思うから。
長く関わってきた、実体験をしてきた人の話を聞く。そして、想像する。それは、追体験であり、物語を読むこともこれなのよね、って。そちらのほうが、”つながる”。
夏休みに川好き次男にもおすすめしてみよう。