Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

何かさらりと読みたい気分のときに

『野川』(2014年)長野まゆみ 河出文庫

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たまにこのくらい、さらりとした物語が読みたくなる。心理描写が丁寧に描かれたり、感情がぐるんぐるん動くものもいいのだけれど、いつもそれだと疲れちゃう。そんなとき、この手のさらりとしたYA(ヤングアダルト:中高生向き)が読みたくなります。エッセイ的な感覚で読める物語。

 

読書感想文コンクールの課題図書にも過去になっていたみたいですが、課題図書のわりにはそれほど、メッセージ性が強いわけでもなく、著者の価値観をぐいぐい押し付けてくる感じがないのもいい(←何様目線)。

 

主人公の中二の音和(おとわ)は、都心の学校から両親の離婚、父親の事業失敗に伴い武蔵野の地へ転校。淡々としていて、なかなか尖った面もある音和ですが、変わり者の教師との出会いや、ハトを飼育する新聞部との出会いで少しずつ成長していくというもの。

 

ああ、野川!表紙の絵もまたいいんですよねえ。

武蔵野の地には個人的に思い入れがある(そのあたりの大学に通っていた)ので、風景が目に浮かぶようでああ、懐かしい。野川自体の記憶はあまりないけれど、野川公園とか行ったなあ。あの辺は都会からそう遠くないけれど、あきらかに時間の流れ方が違っていた。ピクニックに行きたくなってしまいました。

 

なぜ、新聞部が伝書ハトを飼うのか。

帰巣本能など謎多きハトの生態。

とても興味深いです!もっと知りたくなります。

 

印象的だったのは、音和が「心を育てる授業にはいつもうんざりしていた」という場面。あ、分かるー!なんだろう、体験を大事にしてくれてるんだけれど、そんな“点”でやっても結びつかないのよね、って私も思ってたから。もちろん、それがきっかけで興味をもって深めていく子もいるわけだから、それ自体が悪いものではないのだけれど……それで大人側が“体験させた気になってる”のが、なんか違うよなあ、って。

だって、感動するときって、いろんなことが“つながった”ときだと思うから。

 

長く関わってきた、実体験をしてきた人の話を聞く。そして、想像する。それは、追体験であり、物語を読むこともこれなのよね、って。そちらのほうが、”つながる”。

夏休みに川好き次男にもおすすめしてみよう。

自分自身を発見する

『カッコーの歌』(2019年)フランシス・ハーディング著 児玉敦子訳 東京創元社

 

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同じ著者の『嘘の木』があまりにも面白かったので、続けてコチラも。期待裏切らず、良作。巻末の深緑野分さんの解説がこれまた良いのですー。

 

うーむ。唸ってしまいました。

途中まで、ファンタジーということをすっかり忘れていて、物語の世界に入り込んでしまった。そのくらい心理的にリアリティがあるんです。以前、臓器移植を受けた人が前の持ち主の記憶をもってしまうことがあるという話を聞いたことがあるのですが、そういうことってあるのかも。うん、人間の身体がただの入れ物だったとしたら、記憶などをインストールすれば他の入れ物でも、本質になってしまうのでは?入れ物である自分は、他人の記憶をもってでも本物になれる???自分が偽物側だったら?自分って一体なんだ???

 

これは読む人によって、色んな響き方がある物語だなあ。響くポイントが一つのテーマじゃないから、感じるものがありすぎるから、大好きなのに、どうにもこうにも感想が書きにくい(笑)。

 

単純に冒険ストーリーとしても面白いんです。「あと7日(何が?)」というタイムリミットもあるから、ドキドキの緊迫感もすごい。自分自身の発見の物語でもあり、姉妹がいる人にとっては、姉妹間の葛藤が共感できるだろうし、一見常識良識ある理想的な家族なように見えて、実は毒親の元にある娘の人生に共感する人もいるかもしれない。個人的には、この毒親像を見てこれ国にも当てはまるな、なんて思いも。不安にさせて、実はコントロールしやすくして、子ども(国民)を守られた気にさせる。こういうのって、実は意外に身近にあるのかもね、と。

 

ところで、9歳の妹のペンは気性が荒く、一見破天荒でレビューを読むと感情移入できない人が多いようですが、私はこの子が一番好きなんですよね。一番人間らしくて、違和感のあるものにちゃんと抗っていて。ただ、表現するすべを持たないから、ああいう形で噴出するだけであって、この子が実は一番まともなんじゃないかな、って。

 

もう一つ、この物語で興味深かったのは、疎外されている人々への何ともいえない思いです。疎外されてる側が、悪者側として描かれてはいるのですが、実は主人公は疎外側に属していて。でも、自分の意志的には違うほうに属しているから、葛藤。その、視点が面白い。白か黒か、善悪二元論なんかで割り切れないんです。

 

解説にあった、ハーディング自身のインタビューが興味深いです↓

 

私は不正を好みませんが、誰かが他者を不公平に扱おうとする心理に興味があり、アイデンティティの謎にも関心があります。/私は何かが間違っていることを見た時、ただ否定するよりも、それを理解したいと思っています。中に入ってみたいのです(P.444)

 

なるほどね。モズをはじめとする“はぐれもの(ビサイダ―)”は、人間側から見ると恐ろしく排除すべき対象。でも、いずれもかけがえのない、命あるものたち。ビサイダー側からの視点で描いても、人間側からの視点で描いてもこの物語は成り立たない。ビサイダ―側に属しつつも、人間側の心情を持つ主人公の視点だからこそ成立する、深みのある物語だったんです。

 

感想を書くのが難しい(?)ファンタジーですが、きっと誰しも響くポイントがある物語だと思います。ぜひ。

すき間時間に堪能できるブックガイド

『「もの」から読み解く世界児童文学事典』(2009年)川端 有子 こだまともこ 水間千恵 本間裕子 遠藤純編著  原書房

 

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今日の一冊は、ずっと気になっていたコチラ!なんせお高い(6,380円)なので、まずは図書館で借りてみました。なかなか面白い切り口で、児童文学好きにはたまらない。

 

うんうん、小さい頃ありましたよね?
これなんだ?と思いながら読んだ記憶。『長くつ下のピッピ』に出てくる“たき木箱”

とか、しょうが入りクッキーとか。糖みつのキャンディー、あぶりソーセージ、ひまし油、天窓、寄宿舎、ハシバミなどなど。

 

気になる「もの」は人によって、当たり前だけど違うから、上記にあげたものはこの事典の中では何一つ取り上げられていませんでしたが(笑)。

 

この事典では、「もの」が以下の8つの項目に分類されています。↓

  • 食べ物
  • 身につけるもの
  • 道具
  • 植物
  • 生きもの
  • 乗り物
  • 家の中のもの家の外のもの

 

ワックワクで目次を拝見。

あ、あれ......?そうそう!って激しく共感しようと思ってたのに、意外にも知ってる物語が少ない(笑)。一気にテンションが下がる私。

 

と・こ・ろ・が!ですよ。

テンションが下がったところから、パラパラ気になるところから読み始めたら、これが面白い。まだまだ出合っていない物語がこんなにあるんだ!と興奮すらしてくる。シリーズの「時」編、「場所」編も俄然読みたくなってきました。

 

 

ところで、川端有子さんが、前書きに書かれていたことで印象的だったこと

 

わたしたちは奇妙なことに気がついた。「もの」が事細かに描きこまれ、作者の思い入れも深く、印象的なのは、どちらかというと50年くらい前の物語に多いということだ。現代の小説は、刹那の気持ちを捉え、空気を読むのにたけているかもしれない。さらり、と書き流されて、あとに強く残る印象が薄いのが特徴であるような気もする。

 これほど「もの」があふれる世の中でありながら、いや、そうであるからこそ、「もの」にこめられた魂は力を失ってきたのだろうか。それならばぜひにも、たくさんの物語の中から、「もの」の力を解き放って、よみがえらせてみたい。「もの」のもつサブテクストを再現してやりたい。そしてその「もの」の魂の力で、こんどはその物語を読んでみたいという読者が現れてくれたなら、わたしたちの思いは遂げられたということになろう。」(P.13)

 

はい、著者のみなさんの思いは遂げられましたよ(笑)。読んでみたい物語が、確実に増えました!

 

もう一つ、何がいいってね、事典なので、順番に読まなくてもいいところ。ひとつの「もの」の物語に関して描かれているのはわずか2ページで、写真やイラストも使われています。なので、すき間時間にぱら読みするのにぴったり。料理の最中、朝起きてすぐ、夜寝る前にひとつ読むなどなど。

 

児童文学の専門家たちによって書かれているので、文章は軽くもなく、堅苦しくもなくその中間くらい。歴史や背景何かも知れるので、知的好奇心が満たされていく感じがいいんですよねえ。

 

お値段が高いから、図書館でとりあえず借りてみたけれど、手もとに置いておきたくなっちゃいました。シリーズ3冊大人買いするか迷い中。誕生日まで待つかな。

 

切り口が面白く、すき間時間に堪能できる、素敵なブックガイドでした。

人間の弱さ、愚かさ、そして希望

『嘘の木』(2017年)フランシス・ハーディング著 児玉敦子訳 東京創元社

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今日の一冊は、タイトルに惹かれたコチラ。

うわぁ、こ・れ・は!!!秀逸な物語でした!今年読んだ中でベスト5に入る勢い!(今年まだ半分しかたってないけど、そんな予感。そのくらい好き)

 

いわゆるダークファンタジーという類らしい。個人的にはダークファンタジーって好みじゃないので、自分からは手に取らないんですよね。ところが、ところが。私、実はダークファンタジー好きなのかもしれない。いや、フランシス・ハーディングのもものが好きなだけかもしれないけれど、とにかく引き込まれて一気読み!ページをめくる手が止まらない。それでいて、読み終わってしまうのがモッタイナイ気がして、残りページ数の分厚さを確かめながら読み進めるという。これよこれ、Kindleでは絶対に味わえない感覚。あとどのくらい残ってるか厚さ確認しながら読む、これが醍醐味なのですー!

 

『嘘の木』あらすじ

世紀の大発見、翼のある人類の化石が捏造だとの噂が流れ、発見者であるサンダリー博士一家は世間の目を逃れるように島へ移住する。そんななか博士が謎の死を遂げ、父の死因に疑問を抱いた娘のフェイスは事件を密かに調べ始める。父が遺した奇妙な手記、嘘を養分に育ち真実を見せる実をつけるという奇怪な木……。19世紀イギリスを舞台に時代の枷に反発し真実を追い求める少女を描いた、コスタ賞大賞・児童書部門ダブル受賞の傑作。

 

ほう、これも児童文学なのか。やっぱりすごいわ、児童文学。

謎解き要素も満載なので、子どもの頃に読んだら、それはそれで夢中になっていたと思う。でも、大人になって読んだからこそ響く場面がたくさん。物語に厚みを感じるのは、時代を生きた女たちの物語が詰め込まれているからなんだろうなあ。女性が読むと特に感じ入るものが多い気がします。

 

冷静に振り返ってみると、個人的には女性であることが原因で悔しい思いをしたりということも、取り立ててなく。もちろん、多少はあるけれど、でも、男性だって性別の枠で色々な思いするから五分五分よね、と思うわけです。なのに、なぜだろう。私の中に眠るフェミニスト(笑)が、敏感に反応しちゃう。この時代の女性の息苦しさ、開き直って一歩上手をいって図太く生き抜くさま。謎解き要素もあるので、あまり内容に触れられないのが残念ですが、母娘の最後のほうの会話が、もう……ねえ。読んで!!!としか言えない(笑)。

 

とついつい、女性に関するところに感じ入るところが多いのですが、大きなテーマは“嘘”。そして、“知りたい”という人間の欲求とでもいいましょうか。嘘を養分として育ち、真実を教えてくれるという架空の木が出てくるから、紛れもなくファンタジーなのですが、なんともまあリアリティに富んでいることよ。

 

良質なファンタジーは、事実よりも“真実”に迫っている、ホントそう。

 

嘘の木が真実を見せてくれている場面は、お父さんがラリってる姿は、LSDとかの世界に似通ってる気がしました。だからなのか、リアリティがすごい(あ、私自身はLSDやってことありませんよ?念のため笑)。純粋な動機だったはずが、欲望にいつの間にかすり替わっていくさま。ミュージシャンたちをはじめとするアーティストたちが薬に手を出してしまうケースも、こういう感覚なのかな、って。ああ、人間の弱さ、愚かさよ。嘘について、考えさせられます。

 

その他にも、誰が犯人なのかという点においては、自分が思ってた人物たちの印象が読み進めるうちに何度も変わり、ヒヤッとしました。自分の感覚もあまりたいしたことないな、と。いかに自分も表面的なものに踊らされているか、などなど反省ひとしきり。この物語に出合えてよかった!

 

あまりにも面白かったので、すぐに同じ作者の『カッコーの歌』も読みました!そちらの感想はまた後日。

 

 

アクセスの悪さがメリットに!?シェア型本屋

神奈川県藤沢市にできたシェア型本屋&カフェ BOOKYさん

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今日は先日訪問した、シェア型本屋&カフェBOOKYさんのご紹介!

 

神奈川県藤沢市の柄沢橋というところに、自宅の1Fを改装してできた素敵な空間でした!何がいい、ってまずエントランス(入り口)がいいんです。中の様子が見える大きなガラスの引き戸。外のカーポートもまるで、ひと続きのお部屋のよう!あそこで、マルシェとかやったら楽しそう、などなど妄想広がります。

 

いやあ、入り口って大切!!!

本屋さんに限らないのだけれど、中が見えないと初めて入るときって、かなりかなりハードルが高いんですよねえ。でも、BOOKYさんのようにガラス戸で、中をばーんと見せていただくと”(どなたでも)Welcome!”って言われているような気分になって、嬉しいんだなあ。

 

入り口横の棚 仕切りはなんとダンボール!

ばーん!

コチラが、入り口横の壁のシェア本棚です。一つ一つの棚がオーナー制になっていて、それぞれのオーナーさんの個性が光る。まだ空いてる棚いっぱいありましたよ~。

ご興味のある方はぜひ(縦35㎝×横37㎝の棚で、月額2,800円+入会金5,000円)。

入り口付近には絵本や子ども向けの本が多く、広い玄関にちょうど腰かけて読むのがいい感じ。

 

ズーム!一つ一つに個性が光る

ちなみに、靴をぬいであがるタイプの本屋さんです。正直、靴ぬぐところって面倒で(笑)、あまり好きではないのですが、こちらのBOOKYさんにおいては、靴をぬぐからこその居心地の良さがありました!!!おうちに招かれたかのような心地よさ。奥のソファーもいい感じ。

 

入り口の開放感とは対照的に、中は観葉植物や本棚で見えなくなっている部分も多く、それが秘密基地感を出していてワクワク。また、人目にあまりつかない場所が何カ所かあることで、かえって落ち着いて本が眺められるという。入り口と中の空間の対比、考えた人優勝!!!

 

カウンター席にテーブル席があります このさらに奥にソファーが

はい、美味しい!10食限定の本日のカレー

シェア型本屋なので、棚にはさまざまなジャンルの本が並びますが、全体的には社会派や環境系のものが多かったです。

 

レコードブース

なんと、ご主人のご趣味なのかアナログレコードブースもあります!1ドリンク付きで1時間1,000円でヘッドフォンで独り占め。1960年代~90年代までのロックと1940年代~90年代のジャズがそろっているそう。

 

その他にもドッグセラピーあり、イベント貸し切りありなどなど、色んな可能性が広がる空間。さまざまなコミュニティが生まれていく予感。

 

スケジュール&アクセスはお店のHPからご確認ください↓

booky.jp

 

周りに特に何があるわけでもないし、地元の人しかなかなかいかない=地元のコミュニティになるという強み。さらに、アクセス良いわけでもないのに、わざわざ行く人に悪い人なし!ということで、アクセスの悪さがメリットになっている!?

これからも楽しみな空間でした。

 

※ 本の聖地、神保町でのシェア型本屋もどうぞ↓

jidobungaku.hatenablog.com

感性の感度をアップさせたいなら

『センス・オブ・何だあ? ―感じて育つー』(2022年)三宮麻由子著 福音館書店

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今日の一冊は、コチラ。

そう、あの“名言、“「知ること」は「感じること」の半分も重要ではない”で有名な、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』のオマージュ。

 

作者の三宮麻由子さんは、4歳のときに目が見えなくなったそうで、こんな絵本を出していらっしゃいます↓

『かぜフーフホッホ』(2013年)三宮麻由子作 斉藤俊行絵 福音館書店

 

『おいしいおと』(2008年)三宮麻由子作 ふくしまあきえ絵 福音館書店

さらっと読めます。だからなのか、ふむふむ、そうよね、とか。あー、分かる。なるほど、面白い、それは気づかなかった!とは思うものの、実は、そんなに響かなかったんですよね(小声)。みなさん大絶賛している中で、水を差すようですが、それが正直すぎる第一印象。

 

でもね、これ実践してなんぼだったんです!!!

当たり前だけど、読んで終わりにしないところが大事でした!

 

この本を読んでから、以前より確実に“耳をすます”ようになりました。そしたら、聞こえる聞こえる、鳥の歌声が。意識が変わると、見える世界が変わってくる!!!

 

雨が降った日には、さっそく傘の内側から手をあてて、雨粒の丸みを感じてみましたよ。

 

「細かく聞けばキッチン・シンフォニー」という章も面白かったなあ。音を聞いたり、匂いで料理がいまどの段階にあるかが分かる。

 

日々、じょじょに感性の感度がアップしていってるのを感じます。

本ってこれだから面白い。すぐに響くものもあれば、じわじわと来るものもある。

読めてよかったー!

 

目が見えなくても、音などから色々推察できるという観点からは、こちらのウェストールの短編に出てくる『ビルが「見た」もの』という物語もぜひ。目の見えない老人ビルがいかにして、凶悪犯を通報できたのか。こちらは、美しい感性というよりもちょっと、コワイけれど感心しちゃう。オススメです↓

jidobungaku.hatenablog.com

経済学苦手さん、いらっしゃい

若者よ、マルクスを読もう 20歳代の模索と情熱 (2013年)内田樹石川康宏共著 角川ソフィア文庫

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今日の一冊は、私のように政治経済にいまいち興味が持てない人へ。

リスペクトするkodomiruさんがおすすめしていて、『いいから、黙って読みなさい』という帯の文言にもつられて、手に取ってみました。

 

神戸女学院大学文学部の二人の教授、内田樹氏と石川康宏教氏の往復書簡という形で書かれていて、かなりくだけて書いてあります。うん、確かに分かりやすい。

 

それでも、それでも、私には読み進むのがつらかったですー(笑)。思った以上に政治経済アレルギーがあるらしい、私。

 

基本、お二人は知性あふれるお方たちなので、どんなに入門編としてやさしく書いてくださっても、本読まない子には“無謬(むびゅう)”とか“瑕疵(かし)を言挙げ”なんて表現は……うん、なじまない気が。ただ、これで最後まで読めたら、達成感はありますよね。それに、時々出てくる難しい言葉に何か刺激を受ける可能性も。

 

ちなみに、内田樹さん自身マルクスを読むのは、知性が活性化するからなんだそう。“知的高揚感”(アカデミック・ハイ)が体感できるのが、マルクス。理論そのものは「賞味期限切れ」かもしれないけれど、そこが問題じゃないんだ、と。マルクス以外の革命家たちのマニフェストのほとんどは、最後の言葉は必ずしも、温かみのあるものではなかった。でも、マルクスの革命宣言は「友愛」の言葉で終わらせた。そのマルクスの人間的な構えに、内田氏はしびれているわけです。

 

アカデミック・ハイは何となく分かる気がします。ただ、私の場合はそれがマルクスじゃなくて、文化人類学だった。

 

ただ、何の分野にせよ、その人が熱量こめて、愛こめて語るものは、どんなに興味がないものでも感じ入るものがあるなあ、としみじみ思う今日この頃です。

マルクス苦手!と思う方も、とりあえず帯にあるとおり、“いいから、黙って読んで”みましょっか(笑)。さ、次はこれを読もうかな↓