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前回に引き続き、今回もウェストール!
今日の一冊は、大人はもちろん、思春期(特に男子)に差し出したい短編集。
短編集ってあまり普段読まないのですが、ああ、ウェストールは好きだなあ。
人間の負の部分も割と描くから、読んでいて“人生楽しい!最高!”とはならないんだけれど、思春期ってそういう世界もきちんと見せないと、“きれいごとばっかり......”と感じがち。だからか、ウェストール読むと“うんうん、分かってる~”、ってなる気がするんですよね。
特に思春期男子におススメと書きましたが、男子の気持ちが分からない女子や女性にもおススメです。男子ってこんな感じなんだ、というのが分かる。
そこで、思い出したのがサリンジャーです。
『ライ麦畑でつかまえて』を初めて読んだとき、私にはちんぷんかんぷんでした。主人公のホールデンに1ミリも共感できない(笑)。でも、ものすごく惹かれて、大好きな一冊なんです。そして、強烈な印象で残っているのが、私の兄が「高校生のときに出合いたかった。こんなにも自分の気持ちをあらわしてくれてる物語があっただなんて」のようなことを言ってたことなんですよね(強烈な印象のわりには発言ウロ覚え)。
ウェストールの描く思春期男子たちもそれに通じるものがある気がするんです。男子にしか分からない男の友情、女子への思いetc.etc.
ここには9編収録されていますが、どれも甲乙つけがたいくらい好き。
一番印象に残ったのは、『吹雪の夜』というお話。短編というよりこれは中編ですが、ここに出てくる父親の子どもへの接し方を見て、我が身を振り返り反省させられるところも多かったので。
『吹雪の夜』もそうですが、『羊飼いの部屋』という物語も吹雪を扱っていて、自然の脅威におののきます。自然(天候、動物)、幽霊、ウェストールの物語は人間だけが世界じゃないよ、ということを示してくれるんです(ダークな面でだけど)。そのせいか、苦しいのに、息苦しくはないというか。うーん、言語化するのが難しい......。
ラストを『女たちの時間』でしめたのもすごくいいなあ。
翻訳者原田勝さんの、あとがきで(各話への補足)もこれまたいいんです。
男が戦場や吹雪の中へ出ていき、また、祝祭より仕事を選ぶのは、臆病さの裏返し、器の小ささの表れである、という見方は、男性であるわたしには、あたっている気がします。そして、女性というのは、打つ手がなくなったときにどっしりとかまえ、また、楽しむときは楽しむ、そういう胆力をそなえた性である、というのもうなずけます。(P.277)
命に関することは女性が強いですよね!だから、世界の中心が女性たちなら、戦争は起こらない(命を落とすものだから)。
って、ここまで書いて思いましたが、これじゃあこの短編集の魅力が伝わらないですね。トホホ。短編なんで!とにかく1話でも読んでみて!と言いたいです。きっと止まらなくなることでしょう。
ちなみに、ウェストールといえば、ジブリの宮崎駿監督がウェストール好きで有名。今回のカバー画も宮崎駿さんによるものです。以前も書いたけれど、私、宮崎駿監督が最後の映画を作成すると聞いたとき、ウエストール、キター!!って思ったんですよね。見事、ハズレましたけど(笑)。
男子たちを魅了するウェストール。ぜひ。