Pocket Garden ~今日の一冊~

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ざわつく心に平和をもたらすブックリスト

年末訪れた清里 自然の中はやっぱり気持ちいい!

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気付けば1月も半ばです(びっくり!)

 

すっかりご無沙汰してしまいました。今年は年始から心痛めることが続いて、なんだか書けませんでした。色んな思いが交錯し……でも、それはまた別の機会に。まだまだ心がざわついてる方も多いと思うので、今日は不定期掲載している某紙に12月に紹介したブックリストをここでも再紹介させてください。

 

実は、先方からの依頼内容は、「こんなご時世なので“戦争と平和”でどうでしょう?」というものでした。でも、そのテーマは過去にも既に掲載済みだったのと、年末に暗い気分になりたくないよなあ。そもそも平和って?というところからちょっと考えこんでしまいまったのです。

 

みな頭では世界平和が大事だって思ってるけど、もし自分自身が苦境のさなかにあったら……正直それどころじゃないですよね。まずは自分が平和でなければ、周りの正直平和なんて願えない、というかそんな余裕ない。そして、心がざわつく理由も人それぞれで。だから、こういうタイトルにさせてもらいました。

 

届けたい ざわつく心に平和を

 

紙面での紹介の難しさって、ブログと違って文字数がかなり限られてることなんですよね。タイトルに込めた思いを説明することもできないし、紹介文も字数が限られてる。そんな中でどこまで届けられるかな、って歯がゆい気持ちはつきまとうけれど、一人でもいいから、必要としている人に届くといいなという祈りをこめて。

 

無謀なのはわかってるんです。だって、同じカテゴリーの悩みですら人それぞれで、その人に合う本ってそれぞれ違うから。それでも。それでもね、一人にでも届けばいいかなあ、って。紹介したのは以下のとおり↓

 

 

①『虫眼とアニ眼』(2008年)養老孟司宮崎駿著 新潮文庫 

虫が大好きな養老孟司とアニメ界の巨匠宮崎駿が、宮﨑作品を通して自然と人間について考え、若者や子どもへの思いを前向きに語ったもの。心がざわつくのは、人間関係ばかりに焦点を当てているからかも。たまには、人間以外の世界に触れよう。“お先真っ暗でいいじゃない。だから、人生は面白い”と養老氏。感性の育み方が興味深いんです。

 

『共感革命: 社交する人類の進化と未来』(2023年)山極壽一著 河出新書 

山極氏は、京大元総長だった霊長類学者で総合地球環境学研究所所長。人類が直面する問題や課題、未来を、類人猿の「社会」の成り立ちを振り返りながら解説。

 

戦争や環境問題などの危機を前に、絶望的な気持ちになるときに。「共感革命」という切り口から長い長い歴史を振り返ると、違う視点で人類の本性が見えてくるんです。新しい未来への希望が湧いてくる一冊。

 

これ、何がいいって、山極さんは若者たちを信頼しているところなんですよねえ。とかく子どもたちの未来を不安視したり警鐘を鳴らすものが多い中で、ああ、この人は子どもたちの可能性を信じてるんだな、ってなんだか嬉しくなりました。

 

③『死は存在しない:最先端量子科学が示す新たな仮説』(2022年)田坂広志著 光文社新書 

死後我々はどうなるのか。輪廻転生、前世記憶などを、最先端の量子科学の知見から仮説をたて、読み解く。

 

死への不安から心がざわつくものの、宗教にもスピリチュアル系にも抵抗がある方へ。量子科学の“ゼロ・ポイント・フィールド”仮説が証明されれば、真実は一つと実感できる。一読の価値ありの個人的には納得の一冊でした!

 

④『わたしはあかねこ(20011) サトシン作 西村敏雄絵 文渓堂

 家族全員白か黒の毛色の中、ひとりだけ赤毛のあかねこ。そのままの自分を受け入れてもらえないあかねこは、家族の元を去り……。

 

そのままの自分を受け入れてもらえず苦しんでいる人に。環境を変えることで心に平和が訪れることを、あかねこが教えてくれます。うん、石の上にも三年とか我慢とかもういいから、環境変えてみるのもいい。よかれと思って子どもを変えようとする困った大人にも(むしろ、そちらの方に)ぜひ。

 

ブッダとシッタカブッダ』(2003年)小泉吉宏著 KADOKAWA

漫画と侮るなかれ。悩めるブタの前に現れるシッタカブッダが、人生の幸福、不幸、悩みの正体について易しい言葉で語る。シリーズの1作目(個人的には3作目が特に響いた)。

 

本当に大切なことはいつだってシンプルかつ深い。人生の根源的な問いを、4コマ漫画で描く。心の運転の仕方を知ることにより、あらゆる思い込みや偏見から解き放ってくれる傑作。小学生にも響きましたよ!

 

⑥『さみしい夜にはペンを持て』(2023年)古賀史健著 ポプラ社 

日記を書くことで自己と対話する方法を、中学生の主人公タコジローの物語で描く。自分を好きになれない人たちへの救いの書。

 

書くことで、心のざわつきを取りのぞこう。そう言われても、何をどう書いていいか分からない人へ。答えではなく、答えの出し方を、具体的かつ一歩踏み込んだところまで教えてくれる一冊。

 

⑦『楽しいムーミン一家』(2011年)トーベ・ヤンソン著 山室静訳 講談社文庫

 

ムーミンシリーズ第3作。ムーミンが発見した黒い帽子は、飛行おにの落とした魔法の帽子で、次々と事件が起こり……。

 

暗いニュース続きで、塞ぎがちな気分に風穴をあけてくれるのが児童文学。読めば、欠けていた何かが満たされ、内側が整う不思議な感覚に。児童文学には、必ず救いと希望がある。もっと物語を。

 

はい、最後に児童文学持ってきました!

ムーミンだけじゃない。本当は、もっともっと児童文学を、物語をおすすめしたいなあ。抱えている悩みに直接的には関係ないような物語がいいんです。直接的だとハウツーに陥りがちで、一見答えをもらったかのような気にはなるけど、本当に心が晴れたり、抱えて生きていこうと思えるのって、ハウツーじゃないから。ハウツーは受け身になりがちだから。

 

だからね、児童文学ではないけれど、こちらの本を読んだときも、そうそうそうそう!って一人興奮して頷いたんです笑。↓

 

『お探しものは図書室まで』(2023年)青山美智子 ポプラ文庫

この物語では、さまざまな悩みを抱え、人生に行き詰った登場人物たちがとある町の図書室を訪れます(図書館ではなく、図書室というこじんまりとした空間、司書との距離感がポイント)。そして、そこには無愛想な司書さんがいて、彼女がくれるブックリストの最後に必ず関係ないような“なんでこの本?”っていうような本があるのです。

 

“なんでコレ?”

その引っかかりが、自分の中から“問い”を引き出してくれるのかも。それぞれ自分で問いをたて、自分で道を見つけていくんですよねえ。この司書さんが余計なアドバイスとかしないのがいいんだな。

 

それでは、こんなスロースターターな私ですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。