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今日の一冊は、日本では原作よりも劇団四季によるミュージカルのほうが有名かもしれないコチラ!文字も大きめ、短い物語ですぐ読めちゃいます。本が苦手な子にもおすすめ。
ふふふ、ユーモラスで面白かったです。たまにこういう物語を読むと、なんだかリセットされます。訳が神宮輝夫さんだったので、間違いない!と思って手に取りました。
あとがきの中で、
世の中には、子どもの文学と大人の文学をわけて考える人と、そんな区別はないと考える人とがいます。私は、この本が、そうした垣根をつくることをの無用さをはっきりしめしていると思います。(P.196)
と神宮輝夫さんが述べられているのですが、私も賛成!子ども“も”読めるようにルビをふったりするのは大事。けれど、変に区別してしまうことで、本当は大人こそ読んだほうがいい物語や子どもだけれど背伸びしたい子など、本当はあなた(わたし)のための物語なんだけどな、っていう人に届かなかったりすることを感じているから。
物語は、ダンスタンの森に住む、大魔法使いステファヌス大学士の飼い猫のライオネルが、人間になりたがるところから始まります。ステファヌス大学士は大反対。だって、過去にブライトフォードという町に住んでいた頃、さまざまな秘法を伝授してあげたのに、ことごとく彼らがその使い道を悪い方向にしたからなんです。
棒で苦労して土を耕している姿を見て、すき、くまで、くわなどを作る方法を教えたら、人間は剣や槍を作る。病気がちだったので、薬草の使いかたを教えれば毒薬を煎じる方法を見つける。役に立つ友にさせるため、牛や馬を飼うことを教えると、友どころか、こきつかって働かせる。しまいには、農民や商人たちが川を渡らなくて済むように橋を作ってあげると、通行料を取るようになる。その話を聞いても、人間になりがたるライオネル。しまいには願いをかなえ、町へ向かいます。さあ、どうなるでしょう?
人間の愚かさが、とっても分かりやすく描かれています。そして、ああ、私も麻痺してる部分いつの間にかいっぱいあったなあ、と気付かされる。おかしなことには、おかしい!ってもっと声をあげよう、って気付かされる。物語の展開も読めるし、一見単純に見えるかも。でもね、一見ムリと思うものに立ち向かう勇気をもらえるんです!
この物語の中では、悪人は最後までとことん悪人として単純化して描かれています(そこがいい)。長編の物語だと、人間はキャラづけできるものではなくて、悪人にだって背景はあるからそこも描いてほしい、って思いがちな私ですが、こういう物語は別。変に改心してみんな仲良く暮らしましたとさ、じゃないところがいい。
悪い人間は、とことん救いようがなく悪者として描かれていますが、それに立ち向かう勇気ある人々がいる。そして、その勇気ある人を支えようと助けるまわりの人々の姿に、人間って確かに嫌なものかもしれないだけど、いいものでもあるなあ、ってしみじみと思わされるんです。あきらめずに、変えようとする人々がいることに救われる。
そんな人々との出会いを通し、ライオネルは”愛”を知っていくのです。
さあ、“愛”を知ったライオネルは、果たして猫に戻るのでしょうか?
気軽に読めて、それでいて力をもらえる物語でした。疲れている大人にこそぜひ。