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今日の一冊は、絵本。
正直に告白します。こちらの絵本が話題になった発刊当時、買いました。読みました。でも、全然頭に入ってこなくて、印象に残らなくて。ページ数も47ぺージで1ページあたりの文字数も多いことから、我が子たちも途中で飽きてしまい、聞いてもらえなかった。だから、ずっと家に眠ってたんです、この絵本。
久々に出してきて読もうと思ったのは、次男が数学に夢中だからかもしれない。
少しでもその世界に触れてみたいと思ったからなのかも。
さて、読み始めました……昨晩寝たのが遅かったこともあり、はい、眠くなってきました(笑)。そこで、今度は声に出して読んでみました。
すると、なんということでしょう......!!!
なんとも美しい世界がそこに広がり、私の中に流れ込んできたのです。わおっ。
なんたる体験!
『アリになった数学者』は、詩的でかつ哲学的な文で、数学の美しさを教えてくれます。数学を美しいと感じる日が来るとは。小学生向けとはなってはいるけれど、そういう意味では、この絵本の魅力が分かるのは、中学生以上かもしれない。
アリになり、他のアリに出会った数学者の著者は、数学のことはアリには少しも伝わらない、数がない世界がアリの日常なのだ、と実感します。
ところが。
雨上がりの朝、目を覚ますと、彼は女王アリ(多分)と出会うのです。
「朝の露が今日も光をわけあっている」
と透き通る声で、歌うように話す女王アリ。
地上にあるものはすべて、たがいをてらしあって存在している、という彼女。
一つ一つの露にも歴史があって、うつりこんでるのは『いま』だけではなく、連なる過去もちゃんとうつりこんでいる。
それが、見えるのか?とアリになった著者が聞くと、彼女はこう答えるのです。
「見えるというより、じっと耳を澄ませて聴くの。
音で、味で、あるいはにおいで、あらゆる感覚で、露のことばを聴きわけるのよ」(P.34)
ああ!これ!!!
私たちは頭でばっかり考えて、あらゆることに対して耳を澄ませるということを忘れてるんだなあ。耳をすます、って「いま、ここ」を全身で感じること。
アリには人間の数学はわからないけれど、おなじくらい人間にはアリの数学がわからない、と著者。そして、アリのからだに宿る数学は、人間のそれより、もっとずっと広くて自由なのかもしれない、と。
小さな小さな世界の中に無限に広がる世界、宇宙。
私たちはなんて不思議と驚きに満ちた世界に生きているんだろう。生きるって、素敵だなあ。そんな風に思わせてくれた一冊です。