Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

こんな時期だからこそ思い出したいこと

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センス・オブ・ワンダー』(1996年)レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳 新潮社

※毎週月曜・金曜の19時~21時の間に更新中!

(できるだけ19時ジャスト更新!ムリだったら、21時までに更新笑)

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今日の一冊は、こんなコロナ禍だからこそ、子どもというよりも大人自身、そして子どもに関わる全ての大人に、いま一度おすすめしたい本。

 

とても、有名な本なので、読んだことはなくてもタイトルくらいは聞いたことがあるという人も多いのでは?

 

最近はなんだか、ワクチンワクチンでね……我先にと殺到し、抜け駆けした人を罵倒する人たち……芥川龍之介蜘蛛の糸を連想してしまうのは私だけ?

 

こんなにも二極化した世界を見るのも初体験で。同じ状況下にいるとは思えない。親族も、考え方が正反対真っ二つな感じ。

 

何が正しいとか言えないし、真実も人それぞれだと思うのですが、一つだけ言いたいとすれば、今日の一冊にある言葉、

 

「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない

 

ということ。

 

ここでいう、「感じる」は、恐怖や不安のことではなくて、自然の神秘に驚く、「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見張る感性」。

これを見失わなければね、どんな状況下でも、豊かに生きることができる気がするんです。

 

著者のレイチェル・カーソンは、1962年に出版した『沈黙の春』という本で、いちはやく農薬などによる環境被害を訴えたことで有名な人。『沈黙の春』は、昔私も読みましたが、正直……小声で言いますと、こちらは読み返したいとは思わなかった。

その当時私はオーガニック業界で働いていたので、危機感は既に持っていたし、もっともっと持たねばとは思っていた。でもね、この手の本から警鐘を鳴らされるのは、気づくきっかけはもらえるけれど、気持ち的にはその後疲れてきちゃうのです、私は。

 

でも、この『センス・オブ・ワンダー』は、ひたすら自然のすばらしさについて新鮮な驚きをもって書かれていて、幸せな気持ちになるんです。短いエッセイなので、大人なら30分もかからないで読めちゃいます。

 

著者と小さな甥っ子ロジャーがメインの森や海を探索する様子は、それはそれは美しくて。

 

でもなあ、そんな自然の中、そうそう出かけられないしなあ……と思うでしょう?

ところが、著者は都会でもいい、って言ってくれるんです。

空を見上げれば、そこには夜明けや黄昏の美しさがあり、流れる雲、夜空にまたたく星がある、と。たとえアパートの角でも風のコーラスに耳を傾けることもできるし、雨に打たれながら、ひとつぶの水の長い旅路に重いを巡らせることもできる。台所の窓辺の小さな植木鉢を見ていたって、植物の神秘について、じっくりと考えらえる。

 

身近な小さな自然に目を向け、その不思議さに驚けば、ステイホームだろうがなんだろうが豊かに過ごせるんだなあ。

 

空は、誰の上にも平等に広がってますしね!

 

不安になったり、異なる考えに批判的な思いを抱くよりも、自然の神秘さや不思議さに目を見張ろう(←自分に言い聞かせてます)。その先に広がっているのは、きっと素敵な世界。