Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

十代からやり直したくなる

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『十五の夏』(2020年)佐藤優著 幻冬舎文庫

※毎週月曜・金曜の19時~21時の間に更新中!

(できるだけ19時ジャスト更新!ムリだったら、21時までに更新笑)

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今日の一冊は、今月が誕生日だった高1長男にあげたコチラ!

“いま、冬なんだけど。しかも、15歳おわって16歳になったとこなんだけど”

というツッコミいただきましたが、いいの、いいの。中高生のうちに出合ってもらいたかったの!!!

 

何コレ……面白いー(もう叫んじゃう)!!!もうね、面白くて、面白くて、ページをめくる手が止まりませんでした。

 

正直、最初は分厚さみて、ウッ、としり込み。だって、ただでさえぶ厚いのに上下巻。

いやあ、久々のワクワク感。大学時代の合宿中、他の部員たちが楽しそうにしている輪に入らず、一人朝までベッドで『深夜特急』6巻を読みふけった、あのときのような感覚。なぜ、私はこれを学生時代に読まなかったのか。……と思ったら、初版が2018年。どうりで学生時代に出合えなかったわけです(笑)。

 

内容は、元外務省主任分析官・佐藤優氏の十五歳の夏の思い出を書いた旅日記。カイロ経由でチェコスロバキアからポーランド、ペンフレンドのフィフィ一家が住むハンガリールーマニアを経て、ソ連入国までの全40日間の旅の記録。ただの、旅行記と違うのは、旅先が1975年の制約も多く、まださほど外国人に開かれていない時代のソ連・東欧だったから。冷戦下の社会主義国へ高1で一人旅ですよ!?すごすぎ......いわゆるエリート家庭でもなく、決して裕福でもないのに、こういう体験に価値を見出して、送り出す両親も尊敬しちゃう。

 

お恥ずかしながら、佐藤優氏の書いたものを読むのは初めてでした。少年、優くんの魅力的なことよ!どうでもいいけど、当時は痩せててイケメン(笑)。びっくりするくらい早熟で、とても高1とは思えない教養。会話の内容の濃さ、深さたるや。大学生でも、こんなにちゃんと考えてる子、いまは少ないかも。そういう意味でも読んでいて刺激的でした。早熟なんだけれど、早熟にありがちなニヒリズムにも陥っていなくて、猫をかわいがってたり、お母さんや妹さんに手紙書いたり、父親から「優くん」と呼ばれて大事にされてる様子が見てとれて、ほっこりもするんです。あまり多くは書かれていないけれど、このお父さん、なかなかの方です。

 

どうしても物語の方が好きで、ノンフィクションの中でも政治的なこと、外交的なことへの興味が薄く、その手の内容は読んでもすんなり入ってこない私なのですが、この本は違った。なぜなら、その土地に暮らす“人”に焦点が当たっていたから。少年優くんが、ニュースや書物ではなく肌で感じた、その国の文化、人たち。なぜ、ソ連や韓国のことを知らなければならないのか、それがよーく分かった。隣国であるということがどういうことなのか。月並みな言い方になってしまうけれど、

 

自分の目で実際に見て、感じることの大切さ

 

一人ひとりとの出会いの物語が、とても興味深く、全部ご紹介したいくらいなのですが、これはぜひご自身で読んで体験してもらいたい!盛りだくさんすぎて、どこから感想言っていいか分からないのです(笑)。

 

個人的には、早稲田か外語大を目指すと思われた著者が、なぜ同志社の神学部に進んだのかとても興味があったので、最後にさらっとだけれど書いてあった経緯が興味深かったなあ。この40日間の出会いが彼を変えてしまったのね。

 

もう一つ、この記録で個人的に読んでいて楽しかったのは、なんといってもローカルな食べ物たち(←これ、大事)。読み終えたあと、さっそくロシア料理が食べれるところを検索した私です(笑)。

 

と、ここまで、書いてみて、いや、違う。こんなんじゃ、全然この本の魅力が伝わらない......と絶望しかけました。が、あまり多くを語るのは、あえてよそう(じゅうぶん、無駄に長いという声も聞こえてきそうですが)。とにかく、刺激受けること間違いなしです!たとえ40日でも、その後の人生に大きな影響を及ぼす。ああ、子どもたちには旅をさせたい。とても、興味深い一冊でした。

 

正直、大人になってからの彼がどうなのかは著作を読んでないので分からないのですが、少なくとも、少年・佐藤優氏は刺激をいっぱいくれました。次は、同氏の『先生と私』『友情について』を読んでみたくなりました。ぜひぜひ。