Pocket Garden ~今日の一冊~

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周りの雑音を消すには

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『リズム』(2006年)森絵都著 講談社

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今日の一冊はコチラ。

中高生のバイブルとして読み継がれてきたロングセラーだそうで、それが小学生向きに講談社青い鳥文庫のほうでも出版されたとのこと。うん、青い鳥文庫は、小学校高学年でも、もう読んでるのなんだか恥ずかしい気分(子どもっぽい)気分になっちゃうんから、中高生以上だったら角川文庫こちらよね↓

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説明によると、

ロック青年のいとこの真ちゃんを慕う少女さゆきが自分らしさを探し始める中学3年間の物語。大人になると忘れてしまう中学時代の気持ちや、宝物のように大切な一瞬を丁寧にすくいあげ、「私たちの気持ちを言葉に表現してくれた」と中高生の絶大な支持を得ている森絵都のデビュー作『リズム』と続編『ゴールド・フィッシュ』の2作品を1冊に収録!

 

だそうです。そうかあ、これがバイブルなのかあ。

森絵都さんは好きです。だから、語弊があるといけないのだけれど、でも、ちょっとこれが中高生のバイブルというところが寂しく感じてしまった。いい物語だけれど、もっと世界が広がるような物語もいっぱいあるのに、バイブルはこっちなんだ、って。この物語、好きです。好きなんですけど、でもバイブル???って。

 

次男がいまちょうどこの主人公と同じ中1ということもあり、中1の男女がこんなに饒舌に語り合うかな?とか手紙書くか?とかも思ってしまった。

 

で、調べてみたら、最初に書かれたのは1990年なんですね。だったらありえる。逆に言えば、手紙を書きあう時代の物語だけれど、今の子にも通じるものがあるってことですね!

 

個人的には手紙の終焉って1990年代の終わりごろだと思っていて。私は1997年に留学していたのですが、そのときはメールもあったけれど、まだ手紙で頻繁にやりとりできる時代だったんです。その後も留学時代の友だちと手紙のやりとりが続いたけれど、数年後には完全にメールに取って代わってた。そして、今はLINE。告白だってLINEだそう。

 

個人的に手紙、好きなんです。思い返せば、留学中は毎日のように誰かしらから手紙を受け取ってました。熱心な彼氏がいるのね、と周囲から勘違いされて、リア充とうらやましがられてたけれど、彼氏なんていませんけど?と当時は逆ギレしてました(笑)。いや、どうやったら彼氏ができるのか本気で知りたかった当時(笑)。

 

手紙って、時間差があるからか、メールとは違う温度で、違う内容が送られてくるんですよね。やっぱり画面上の文字よりも”思い”が乗っかる。普段真面目なこと話すことそんなになかったサークルの男子(←男友達だけは多かった。異性ではなく同類に思われてた笑)も、悩み事とか深い内容を手紙に綴ってきたり。物理的距離や時間差があるから、翌日にも会うような相手には恥ずかしくて書けないようなことも、手紙だからこそ書いてこれたんでしょうね。今思えば、宝物。その人、その人の深い人間性や人生に触れられた気がして好きだった。

 

この物語を読んで、そんなノスタルジックな思いにもなりました。うん、手紙っていいです。今の子たちにも、大事なことは手紙に綴ってみてごらん、とすすめたい。

 

と、ついつい手紙が印象的だったので、その話になってしまいましたが、主人公が大好きで大好きでたまらない中卒のいとこ真ちゃん、私も大好きです、こういう人。バンド極めたくて、高校にも進学しなかった真ちゃん。自分にはそんな勇気ないから、余計に憧れる。その真ちゃんがね、“大切なのは自分のリズムだ”っていうんです。周りの雑音に気を取られず、心の中で自分のリズムを取る。

 

主人公のさゆきには、夢を追っかけてる真ちゃんがまぶしい。自分には夢が見つからないことに焦りを感じる。でもね、さゆきは自分のリズムを守るということがどういうことかに気付くんです。高校に入ったら、バイトをして、お客様に笑顔をふりまく。部活を楽しんで、明るい男女交際も楽しむ。そういう小さなことを、いちいち楽しみながらやっていきたい、って。

 

いい!さゆき、いいよー!!!夢のため、未来のためにに今を頑張るのもありかもしれない。でも、未来って今の積み重ねだものね。だったら“いま、この瞬間”をいちいち楽しみながらやっていけば、その先に未来が見つかるよね。

 

私はもういい大人だけれど、専業主婦だった時期、引け目を感じてたときがありました。仕事を続けていた友だちはみな優秀なんてもんじゃないレベルで、すごいキャリアを積み上げていってね。同じ主婦仲間の人も手芸や、プチ起業なんかでどんどん輝いていく……そんな中、私は一体何をやっているんだろう、って。落ち込む日も正直あった。でもね、やりたいこと見つからなくても、それが見つかるかどうかは今の積み重ねなんだから今を思いっきり楽しもう!と思った。目の前にあるものを思いっきり味わおう、って。そしたら、道が開けた(と思ってる笑)。タイミングは人それぞれ。

 

リズム、自分のリズムね。大切にしよう。