Pocket Garden ~今日の一冊~

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命に優劣?あるのが現実

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『あいまいさを引きうけて』(2018年)清水真砂子著 かもがわ出版

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昨晩、高1長男からLINEに動画が送られてきました(同じ空間にいるのにLINEで送ってくる世代)。それが、いま大炎上しているメンタリストDaiGoの差別発言の動画。

ニュースはこちら↓

news.yahoo.co.jp

 

 でもね、命に優劣はない!なんて、胸はって言えないなあ、私は。

だって、無意識下で自分にも差別意識があった、っていうこと、いやというほど文学を通して突き付けられてきたもの。もちろん差別はしない。でも、自分にも差別意識はある、そう認識しているほうが謙虚になれる気がするのです。

 

DaiGoのような影響力のある人がそんなことを言ってはいけない

これを議論や考えるきっかけにしたらいいと思う、一人ひとりが。

感情的に批判するのではなく、なぜ彼はそういう思いに至ったのだろう、なぜ自分はそう思うのか、じゃあ、社会の仕組みはどうなのか、などなど。

 

命に優劣はない、ってきれいごとですよね。だってね、大人の世界は矛盾だらけじゃないですか。現実は優劣ありまくりじゃないですか。

 

差別はいけないと言ってる先生がたくさん、生徒を差別してますよね......。

いじめられる側にも問題があるだの、いじめる側にも守られる権利があるだの。

 

平和の祭典と言ってるオリンピック。どこが復興テーマだったんでしょうか.......?

手を差し伸べるべき人々が無視され、一部の企業に巨額が流れ込む。それがオリンピックビジネス。復興が必要な地域の命は、軽く見られてるように見えてしまいました。

 

また、戦争映画見たら、主役側に感情移入してみませんか?勝ったらほっとしません?

それって、(映画上での)敵国の命は劣ってるってことですよね……。相手は亡くなるわけですから。相手が西欧の国か、馴染みのない中近東かでもイメージは変わってくると思います。自分はそんな人間じゃない、と思っていても、ウェストールの『弟の戦争』なんかを読むと、自分の中にも差別意識を発見して愕然とするのです。

 

だから、私の場合は、物語を読むんです。自分のことを勘違いしないように。色んな人の立場に立って、物事が見れるし、感じれるから。自分だったら?と問い続けられるから。

 

清水真砂子さんの『あいまいさを引きうけて』の中の言葉をご紹介しますね。

 

もし、文学に力があるとしたら、疑似体験を通して、そういうことを問い続けてくれるだろうという気がします。自分の見たくないところを見させてくれる。そこにこそ文学の意味があるのではないでしょうか。P.35

 

清水真砂子さんは、「自分を壊してくれる本に出合ったとき」によかったと思うと述べられています。そう、読むことで、何度も何度も私たちは自分が壊される。価値観がガラガラと崩れ落ちたり、自分の中にあるダークな部分を見せつけられて愕然とする。だからこそ、例えば戦争になったら正義を貫く自信がないからこそ、戦争自体を起こさない世の中にしよう、って思う。貧困のない社会にしよう、って思う。

 

批判することで、自分は正しいと酔えるかもしれない。

でも、それよりも、問い続ける自分でありたいな、と思った一件でした。