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イギリスを代表するストーリーテラー、マイケル・モーパーゴ原作の『アーニャはきっと来る』の映画を見てきました!
有名っていっても、私も児童文学にハマるまで、モーパーゴの名前すら聞いたことなかったんですけどね。
原作本が先にあるものの映画化はガッカリさせられることが多いのですが、今回は作者のモーパーゴ自身も満足していたので、見てみました↓
これはねえ、もう映像美!
とにかくピレネー山脈の美しさ、時が止まったような村の美しさを見るだけでも大画面で見る価値あり。
……だけ?
いやいや、内容ももちろんですね(笑)
内容は、羊飼いの少年はじめ、村人たちが一丸となってユダヤ人の人たちをかくまい、山越えでスペインに逃がす手伝いをする話。
私、はっきり言うと戦争ものは苦手なのです。
胸がギューッとなってしまい、目をそむけたくなるし、無力感にさいなまれるから。
できれば見たくない、読みたくない。でも、児童文学の名作って“戦争はこんな悲惨なんだ!どうだ!”じゃなくて、優しく問いかけてくれるからそんな私でも素直に読めるし、深く問いかけられるんです。
モーパーゴは戦争テーマに書きますが、いつも敵の中にも人間味あふれる人を描いてくれるんですよねえ。敵って、どちらの側から見るかで変わるから、当然どちらにも素晴らしい人はいるわけで。本来なら良き友人になれる人同士を分断させてしまうのが、戦争なんだなということがよく分かります。
で、今回の映画。
監督いわく、物語のリアリティを高めるために「道路や村々、さらにナチスドイツ軍の軍服や銃もすべて本物です」とこだわった、そう。
なのですが……
じゃあ、なぜフランス人たちに英語を話させた!?
とツッコみをいれずにはいられない(笑)。いや、ここ結構大事だと思うのですが。言葉って、その文化を形成しているから、文化へのリスペクトだと思うんだけどなー。それに加え、もっと描いてほしかったな、と思う場面もあって、正直微妙だなと思うところもありました。他の方のレビュー見てても、“あっさりしすぎてる”という意見も多くて。
でもね、思うのです。
ドラマチックに描けば人は感動するかもしれないけれど、それってぐわーっと受身的に受けるだけなんじゃないかな、って。なんとまあ、ドラマチックさを求める意見の多いことよ。
確かにそのほうが心揺さぶられるかもしれないけど、“問い”を持つきっかけになるかと聞かれたら違うかも。
あの人はどうしてああいう言動をするんだろう?
何があの人をそこまでそうさせるんだろう?
どういう背景でそこまで勇気を持てるんだろう?
この子たちはどうやって生き抜いてきたんだろう?
描かれないからこそ、今度は自分で調べてみようという気になる。
“しょせん児童文学、浅い”
とレビューで書いてる人がいたけれど、それは違うんじゃないかな、って。
児童文学があっさりしているのは、子どもたちが自分で“問い”を持つ力を信じてるからなんじゃないのかなあ。想像の余地を残してる。
また、この映画はユダヤ人迫害にありがちな残虐な場面はほとんど出てこないので、子どもを怖がらせずに一緒に見ることができます。
敵の中にもいい人はいる、結局は個人個人の人間性、ということも伝えてくれる。
でもね、だからこそ逆に厳しいとも言えます。
だって、言い訳がきかないんだから。あの場、あの状況ではああする(敵対)しかなかった、って言えないんだから。
どんな状況でも、人間としての尊厳を失わずに、自分ならいられるか。
自分の命がかかってでも見知らぬ人をかばえるか。
それを問われるんです。問い詰められることなく、自発的に。
この映画を見て物足りなかったところ、それは自分で調べてみようという宿題と私は受け取りました!
余談ですが、久々に見たジャン・レノ、いい味出してました!お腹もずいぶんと出てたけど(笑)。『LEON』好きだったなあ。
原作はまだ読んでないのですが、こちらです!↓