Pocket Garden ~今日の一冊~

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コロナ禍で、生きる力を育む物語7選

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今日のテーマは、『生きる力を育む物語 7選』!

 

某紙の5月号で『生きる力を育む物語7選』を選書させていただいたのですが、いやあー、これ、めちゃめちゃ悩みました。コロナ禍で、落ち込んでいる人が多いので、このテーマでと言われたのですが……

 

だって……良い児童文学って、どれもこれも生きる力を育むんですものー!

どこが響くかは人それぞれなので、どの本も生きる力を育むことにつながるといえるかもしれませんが、やっぱり特に児童文学は生きる力を育くむと思うんですよねえ。ただただ純粋に楽しいだけの物語だって、見えないところで生きる力を育むし。

 

児童文学は、基本最後には“希望”があるんですよね。大人の文学には、あえてそこを欠けさせて印象深くさせてるものもあって、それはそれで自分が余裕があるときはいいと思うんです。でも、生きる力を育めるか、っていうとそこは疑問で。

 

というわけで、児童文学というくくりだと、生きる力を育くむ本がありすぎて悩みましたが、今回は紙面上の字数にも限りがあることと、読者層が高年齢なこともあり、こんな感じにしてみました。

 

①『モモ』

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『モモ』(2001年)ミヒャエル・エンデ著 大島かおり訳 岩波書店

 まず一番最初に持ってきたのは、”時間”とは何かを問う名作であるこちら。

豊かに生きるために、大切にすべきことは何なのか。効率ばかりを重視することの危険性に、コロナ禍で気づいた人も多いと聞きます。

聞き上手のモモから学ぶものは大きい!そして、時間泥棒って、もしかしてスマホ?なんていう人も。大人こそいま一度読みたいものとして、最初にあげてみました。

 

②『ゲド戦記Ⅰ 影との戦い

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ゲド戦記Ⅰ 影との戦い』(2009年)U.K.ル=グウィン著 清水真砂子訳 岩波書店

良質なファンタジーって、非現実的というよりも、ある種の〈真実〉をもって我々に迫ってくるんですよね。果たして、〈影〉とは戦うべきものなのか。ゲドと一緒に読者も成長し、どう影と対峙すればよいのかを学べるのですが、大人にも響く。思春期に出合っていたかった一冊です。

 

③『怪物はささやく

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怪物はささやく』(2017年)パトリック・ネス著 シヴォン・ダウド原作 池田真紀子訳 創元推理文庫

ゲド戦記』とセットで紹介したかったのがコチラ。こちらも児童文学で、主人公も少年ですが、でもね、大人にもすすめたかった。だって、大人になればなるほど、日頃我々は自分の感情にフタをして生きてしまっていると思うんです。大人だから、感情を抑え込める、って。それが”負”の感情ともなればなおさら。

 

でも、この物語が教えてくれるのは、感情には善も悪もなく、大切なのは自分の真実の感情と向き合うこと。東洋的な考えでびっくりしたー。

 

寓話を通じて、怪物が問いかけることは何なのか。なぜ、怪物は少年自身に最後の物語を話させようとしたのか。暗い物語ですが、おススメ。

 

④『第九軍団のワシ』

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『第九軍団のワシ』(2007年)ローズマリ・サトクリフ著 猪熊葉子訳 岩波書店

もうね、サトクリフの物語はどれもこれも紹介したかったので、迷ったのですが、やっぱりコレ。軍人生命を絶たれたローマ軍団百人体調のマーカスが、行方不明になった父の軍団とその象徴の〈ワシ〉を求め、旅に出るというストーリーなのですが……。あらすじだけ聞いても、全然惹かれないでしょう?いや、私だけ(笑)?

 

これがねえ、一種のロードムービー的でもあり、読み終えたあとは深い感動があるのですよ。主人公の挫折、内面の葛藤は、時空を超えて共感を呼びます。組織の中で働く世代にも響く。本をあまり読まなかったうちの夫にも響いた!

 

 ⑤『ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂』

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『ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂』(2018年)マーギー・プロイス著 金原瑞人訳 集英社

コロナ禍でね、制限が多く落ち込んでる人も多いと聞きます。そんなとき、これ読んでみてほしいんです。自然災害、疫病、権力組織や時代の制約など、その壁が大きければ大きいほど、自分ではどうにもならないと無力感を覚えてしまいますよね。

ジョン万次郎の生き方は、そんな我々に大きな励ましと生きるヒントを与えてくれます。うちの本が苦手な次男も、本が苦手(&当時読めない漢字も多かった)なのにこの物語は大好きで、友だちにすすめまくってました!

 

⑥『走れ、走って逃げろ』

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『走れ、走って逃げろ』(2015年)ウーリー・オルレブ著 母袋夏生訳 岩波書店

第二次世界大戦下、ナチス・ドイツの迫害の中で、ゲットーを抜け出した8歳のユダヤ人少年の過酷なサバイバル物語。......と聞くと、重くなりそうで敬遠しがちかもしれません(私がそうだった)。

 

でもね!これ、生命力あふれる物語なんです!過酷な中にもどこか明るさがあって。

不条理な運命を変える力はなくとも、それに対して”どうありたいか”は自分で決めることができるんだよなあ。そういうことを教えてくれます。驚きの実話。

 

⑦『ピーティ』

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『ピーティ』(2010年)ベン・マイケルセン著 千葉茂樹訳 鈴木出版

最後に持ってくる本はこれ、と決めてました。ことあるごとに、隙あらば、このブログで何回も紹介してるこちら(笑)。

 

いやあ、だってね、乗り越えるとかがんばるとか、そういうのもいいんですけど、それだけじゃない。何かを成し遂げなければということにとらわれてる人って、多いと思うんですよね。そういう人にとっては、ピーティは衝撃かもしれません。

 

だって、ピーティは何もできないんですもの(ある意味)。人生の大半を施設で過ごす。それでもね、自分の受け止め方一つで、ただ存在するだけ(←ここを伝えたかった!)でも、輝いた人生を送ることができるんです。それをピーティは教えてくれます。もし、いまの状況で落ち込んでる人がいるとしたら、ぜひピーティに出会ってもらいたい。

 

みなさまにとっての”生きる力を育む物語も、ぜひ教えてください。