Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

目からウロコの連続!

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『マリス博士の奇想天外な人生』(2004年)キャリー・マリス著 福岡伸一訳 ハヤカワ文庫

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今日の一冊は、文学ではなく自伝。

学生時代(しかも、できれば中高時代)に出合っていたら、進路とかその後の世の中の見方とかずいぶん変わっただろうなあ。だから、ご紹介。

 

マリス博士って誰?

いま耳にしない日はない、PCRを開発してノーベル化学賞を受賞した博士(サーファー)です。

 

いやあ、面白い!!!!!

中1次男が読みたいというから、どれ先に拾い読みしてみますか、とページをパラパラめくったが最後、一気読みでした。私は、理系というだけで拒否反応を示すくらい、理系関連のものが苦手。全然、頭に入ってこないし興味も湧かない。そんな私が、読めた!!!というか夢中になれた。これは、驚くべきことでした。

 

だって、訳が福岡伸一さんなんです。訳もいいんですよねえ。物語としてもユーモラスで、面白い。ところどころ、吹き出して笑っちゃいましたもん。学生時代のときの話なんてね、『ゆかいなホーマーくん』的な児童文学を読んでるかのような気分です。小屋で実験して、失敗しても失敗しても、やめろと言わずに“気をつけてね”とだけ言って見守るお母さん。いやあ、お母さんが、偉大。

 

ただ、マリス博士は世間から見ると、いわゆるトンデモ博士です。危険人物視されちゃうのも分かる。こういう本は子どもには勧めたくない人多いだろうなあ。女遊びは救いようがないし(笑)、LSDはやるわ、あげくの果てに宇宙人と遭遇とか言い出すわ。さすがに、あやしすぎるでしょ(笑)。

 

でもね、読むと分かるのですが、この方ほど“正直”な方はいないよなあ、って。純粋に好奇心旺盛な、永遠の少年なんです。だから、科学の世界のうそっぱちをどんどん暴露しちゃう(そりゃ、危険人物視されちゃいますって)。不都合な真実を誰にも気兼ねなく言っちゃう。トンデモ扱いされるだろうけど、この方の発言に嘘はない、と私は感じました。

 

びっくりしますよ。

私たちが思ってた環境問題......問題が違うってところや、HIVに関するところなど。O.J.シンプソン事件のことも書かれているのですが、理系に疎い私は刑事事件のDNA鑑定って絶対だと思っていたから、目からウロコというか、シラナカッタの連続でした!ほんとうに、いかに自分が他人が作った(一部の人だけが儲かるようにできている)世界観の中で生きているかに気付かされます。もしかしたら、気付かないほうが幸せに生きれるのかもしれない。だから、大人としては子どもにこの本を読ませるか、迷うかもしれません。それでも、色んな角度から見る大切さを子どもに教えたいから、そして、その後は子ども自身が選び取ってく力があると信じているから、私は読ませたいと思いました。

 

あーあ、マリス博士が生きていたら、PCRがコロナの判定に使われてることに、真っ先にクレーム言っただろうなあ、と想像に難くない。私は陰謀論とか好きではないけれど、この自伝を読むと……ああ、マリス博士は消されちゃったのかな、っていう思いがよぎります。そして、PCRが利用されてるのをあちらの世界から怒ってるだろうな、とも。

 

実は、私はビビリなので、この本を紹介することで私にも”敵”が生まれちゃうのかなあ、とドキドキしてました。いや、でもなぜ?マリス博士の考えが正しい!!!と主張したいわけではなく、ほお、こちら側から見るとこんな真実もあるのか、ということが分るのが面白いんです。読んでどう思うかはその人次第。真実なんて、人の数と同じだけ、ありますよね。ただ、私は自分の人生を他人に利用されたり、他人の作った枠組みの中で生きるのはいやだなあ。

 

とにかく!物語としても面白いし、自分の見てる世界を疑ういいきっかけをもらえるので、おすすめです!あー、面白かった。次男の感想が楽しみ。