Pocket Garden ~今日の一冊~

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タイトルに裏切られ......た?

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スマホを捨てたい子どもたち 野生に学ぶ「未知の時代」の生き方』(2020年)山極寿一著 ポプラ新書

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今日の一冊はこちら!

タイトルに惹かれまして。

ええ、うちの長男(高1)もね、見ていてイライラするくらいスマホしか触ってないのです。が、さんざスマホ漬けになってるのに、寝る前に「あー、スマホなんかなきゃいいのに!なければ依存しないのに!」って時々叫ぶんです。え、楽しんでないの?じゃあ、やめればいいのに、と思うのにやめられない。そこで、この本が目についたというわけです。

 

こ・れ・は!!!

いい意味で裏切られる内容でしたー!

 

どう裏切られたかって!?

 

スマホ依存、SNS疲れ……思春期のお子さんお持ちの親御さんの多くがお悩みだと思われるこちらのテーマ。タイトルに惹かれて読み始めたら、中身ほとんどゴリラの話じゃないですか(笑)。最高っ!

 

確かに、副題に“野生に学ぶ”とあったけれど、メインタイトルの印象が強すぎて、副題が印象に残ってなかったんですよね。

 

でもね、もしこれが『ゴリラに学ぶ生き方』だったら、手に取らなかったと思うんです。だから、ある種のひっかけのようなタイトルに騙されてよかった(笑)。

いや、騙してはいないんですけどね、ちゃんと最初と最後はスマホにつなげてるんですけどね、でも大半がゴリラの話。で、ゴリラの話になったとたんイキイキしている山極氏が目に浮かぶようなんですよ、これが。もう、ワックワクしながら読んじゃいました。副題にある「未知の時代」とは、AIなどが人間の能力を越えつつある社会のことですが、私にとっては、ゴリラのほうが未知の世界だった(笑)。フィールドワーク最高だな、もっと読みたい。

 

さて、ゴリラ研究者で京都大学総長の山極氏は、まえがきでこんな風に述べてます。

 

ぼくらが人間のどんな性質を見直すべきなのか、それは現代の人間だけを眺めていてもよくわからない。情報機器はもちろん、言葉すらもたない動物世界がどういうつながりをつくっているか見てみることで、人間的なつながりも見えてくる

 

そうそう、人間関係だけを見ていても、見えてこないし、モヤモヤがつのるんですよね。こちらに出てくる養老孟司さんの話を思い出しました↓

blog.goo.ne.jp

 

と思ったら、山極さんと養老さん、こんな対談を出しているではないですか!↓

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『虫とゴリラ』(2020年)養老孟司・山極寿一著 毎日新聞出版

 

なんと、まあ、直球なタイトル(笑)。 

今日の一冊を読む前だったら惹かれなかったけれど、次はこれを読む気満々。

 

人間は言葉があるから距離を保ってつながれる。

「持ち運び可能」な言葉が物語を生んだ

そして、身体より言葉を信じるようになった人間

 

……など、今回この本を通じて、“言葉”についても、改めて色々と考えさせられました。

もうね、一章一章感想を書きたいくらい。

 

そんなゴリラの話のあとに聞く、山極氏の言葉には説得力がありました。

最後のほうで、山極氏はこんな風に述べています。今のデジタル社会は、0か1かという発想で作られていて、その中間も、「どちらも」という考え方も許されない、と。

 

仲間でありつつ仲間でないという発想がなぜできないのか。どちらにも属するかもしれないし、どちらにも属さないかもしれないという「間」の発想が世間一般に広がれば、もっと色々なことが楽になるはずです。(P.184)

 

世界は本来、「実は正解がいくつもある」というものに満ちています。

たった一つの正解に至らなくても、決定的に不正解に陥らなければ、

戦争も起きないし、命も失われません。(P.174)

 

 うん、一つの正解にこだわらなければ、違いを認めつつ共存できる。

 

学術的だったり、難しい言葉は使っておらず、とても読みやすかったです。

余談ですが、ここに出てくるゴリラの父親が理想すぎて、これは夫に読んでもらわねばっ!と意気込んですすめてみました。面白いと一気読みしつつも、ゴリラの父親に関するところに対しては、夫無反応……チーン。

 

気を取り直して。最後に、ゴリラが出てくる児童文学をご紹介しますね↓

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『グリーンノウのお客さま』(2008年)ルーシー・M・ボストン著 亀井俊介訳 評論社

グリーンノウシリーズの4巻目にあたるこちらは、カーネギー賞を受賞。

ゴリラの魅力を知った今なら、より楽しめそう。これも読み直してみよう。