Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

高校生が夢中になった童話とは

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『遠い野ばらの村』(2011年)安房直子作 偕成社文庫

知ったきっかけは、高校時代前の席に座っていた子が、休み時間も夢中になって読んでいたから。

 

「何読んでるのー?」

 

と聞いたら、かえってきた答えが

 

安房直子さん」

 

だったのです。それが出合い。

 

読む?と彼女が貸してくれて、あっという間にその世界に引き込まれて、当時そろえられるだけ文庫版をそろえたんだったなあ。(余談ですが、当時の値段の安さにもびっくりで、時代の流れを感じる笑。200円台、300円台ですもん)

 

ああ、好き。なぜ好きかとか、そんな理由さぐるのが野暮と感じるくらい、ただただ安房直子さんの世界観が好きでした。

 

安房直子さんの世界はちょっと幻想的で、ファンタジーなのだけれど、どこか日常の延長線上にあるような気がして。心象風景の中に、いとも自然に連れて行ってくれて、不思議なのに、どこか懐かしさを覚える。優しいだけじゃなくて、どこか悲しい人間の性みたいなものもさらりと描かれていたりするところも好き。

 

『きつねの窓』などの短編が、教科書にも載ってるから、触れたことがある人も多いかもしれませんね。

 

いま、客観的に振り返ると、もし彼女が読んでいたのがハードカバーだったら、いかにも“子ども用の童話”という感じがして、高校生の私は手に取らなかったと思うのです。

文庫版、大事!!!ちなみに、私が持ってるのは講談社文庫とちくま文庫版でしたが、いまは偕成社文庫しか残っていないようです。大手出版社で児童向けの本を売り続けるのってやっぱり難しいんだなあ。偕成社さん、ありがとう。

 

また、大人になってから、小さい頃繰り返し読んで好きだった絵本が安房直子さんだったことを知って、“あなただったのですね!!!”と妙に感動してしまった。

背表紙もボロボロ、年季の入った(笑)絵本はこちら↓

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当時の絵本って、作者の住所まで書いてあって、さらにびっくり。保谷に住んでたんだ……。

 

安房直子さん作の絵本はいまでもあるけれど、個人的には安房直子さんは絵本じゃなくて文字だけで味わいたいんですよね。ていねいに言葉で表現してくれているから。

 

なんだかモヤモヤしてたり、特に理由はないけれど閉塞感を覚えたりする日などは、安房直子さんの短編を読むとどこか風穴があくような気がします。

こういう世界に触れていないと、人ってギスギスしてくるのかな、って。

 

短編ばかりですし、何か読みたいけど読む気力がないな、なんてときにもぜひ!