Pocket Garden ~今日の一冊~

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「こんな母親になりたい!」特集

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Happy Mothers' Day!

今日は母の日ですね♪

毎年(お姑さんに)する側で、される側にいない私は、みなさんの「子どもたちに、こんなことしてもらいました♥」投稿見ると、若干イジけた気分になる器の小さい人間です(笑)。そんなときは、物語の中の素敵な母親像を思い出し、反省。

 

そんなわけで、今日は「こんなお母さんになりたい!」特集です。

 

絵本には素敵なお母さんっていっぱい出てくるのですが、意外や意外?児童文学には、あまり母親が登場してこない気がします。

 

母子一体の幼少期とは違って、自立の時期だからなのか。そして、出てくる場合は、毒親系や未熟系で、子どもを理解してくれない存在としての登場が多い(笑)。特に現代ものは、親という障壁を乗り越える物語が多いなあという印象です。

 

素敵な母親像は、出てきても、ホントにチラっとなんですよねえ。見守る系。脇役に徹していて、過干渉じゃないんです。

 

というわけで、これから紹介する本に出てくるお母さんもチラッとしか出てこないことも多いのですが、そのチラっと登場するときの対応に、かくありたいと思うんですよねえ。

 

育児書にももちろんいい母親像がいっぱい書かれていますが、物語で読むと、子どもにイラッとしたときとかに思い出せるんです。あのお母さんはどうだったかな、って。そこがいい。

品切れや絶版が多い(←こんなにいい物語たちなのに!!!)のが残念ですが、どうぞ↓

 

 

『のっぽのサラ』 

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『のっぽのサラ』(2003年)パトリシア・マクラクラン作 金原瑞人訳 徳間書店

お見合いどころか、新聞広告の花嫁募集欄(!)をみて、お父さんの再婚相手(新しいお母さん)がやってくるという時代の物語。短い物語なのですが、心が温かくなり、優しい気持ちになれて、とおってもいいんですよねえ。お母さんに先立たれて、新しいお母さんがほしくてほしくてたまらない子どもの切ない気持ち。遠く離れた土地にやってきて、少しずつ夫婦の信頼関係を、家族の形を築いていく。そう、家族って自然になるというより築き上げていくものなんだなあ、としみじみと感じさせてくれます。サラのどの言動が響くとか、具体的にどの場面に惹かれるとかではなく、存在そのものがもうもうまるごといい!続編の『草原のサラ』と合わせてどうぞ。

 

 

 『わんぱくきょうだい大作戦』

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『わんぱくきょうだい大作戦』(1997年)マヤ・ヴォイチェホフスカ作 清水真砂子訳 岩波書店

こちらもお母さんに先立たれて、お父さんが奮闘する物語なのですが、ワンパクな三兄弟というところも、うちの場合は我が子とかぶるためか、ひとごととは思えない。

こちらは亡くなった母親の回想部分が素敵なんです。もうね、理想!子どもたちの表面的な言動を見るのではなく、ちゃあんと心に寄り添う。私自身は、よく子どもたちの表面的な言動に踊らされて怒ってしまう未熟な母なので、かくありたいなあ、って思います。字も大きめであっという間に読めて楽しい物語。

 

 『ロッタちゃんのひっこし』

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『ロッタちゃんのひっこし』(1966年)アストリッド・リンドグレーン作 山室静訳 偕成社

こちらは幼年童話なので、さらに短い物語ですが、こちらのお母さんの心の寄り添い方ももうもうお手本!絵本『フランシスのいえで』も思い出します。

朝から癇癪起こして泣き叫んでるロッタちゃん。ああ、もうこの時点で多分私だったら沸点に達しているかも(反省)。子どもとの距離感の取り方、近づいていくタイミング、寄り添い方、これはもう母の教科書として保健所とかで配ったらいいと思う!

 

 『鉄道きょうだい』

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『鉄道きょうだい』(2011年)E・ネズビット作 中村妙子訳 教文館

こちらの物語では、夫が誤解から逮捕されてしまうのですが、このお母さんは子どもたちに心配させないよう、そのことをひたすら子どもたちに隠すんですね。ところが、いったんバレたら素直に子どもに寄り掛かれるんです。その柔軟さが素敵だなあ、って。逃亡者をかくまう勇気もある、誇り高い母親で、母親というか人間として魅力的。

 

 『秘密の道をぬけて』

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『秘密の道をぬけて』(2004年)ロニー・ショッター作 千葉茂樹訳 あすなろ書房

逃亡者をかくまうといえば、黒人逃亡奴隷を逃がす手伝いをするこちらの物語も。少女たちの友情がメインなのでほとんど母親は登場しないのですが、母親同士もまた友情を結んでいたと、いう一文にこの母親の人柄が洗われてるんですよねえ。かわいそうだから助けるという自分の立場が上に立つのではなく、対等な人間として接していたことが伝わってくきて、すごいなあ、と。そして、父親にはできなかった最後の決断。女性の強さを感じます。

 

 『小さい牛追い』

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『小さい牛追い』(2005年)マリー・ハムスン作 石井桃子訳 岩波書店

ノールウェイの農場に住む4人兄弟の素朴な日常を描いた名作なのですが、この母親もねえ、またいいんです。仕事が忙しいので、現代の母親のようにあれやこれや子どもの世話を焼いたりしないんですよ?でも、その後ろ姿を見せることで、子どもたちから尊敬されているって理想!そして、子どもがいけないことをしたときは、感情的になることなく、しかしキッパリとやるべきことだけを伝える態度も素敵。続編の『牛追いの冬』とあわせてどうぞ。

 

 『ベーグル・チームの作戦』

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『ベーグル・チームの作戦』(2006年)カニグスバーグ作 松永ふみ子訳 岩波書店

 現代の母親なので、ここに出てくる母親は、普段から子どもの気持ちを思いやれる素晴らしい母というわけではないんです。でもね、いざという時に信頼できる母親。親に子どもが秘密を持つことを許容できること、裏切り者の友だちがいたときどうするかなど、いざという時の距離感の取り方はすごく参考になります!

 

『ブロックルハースト・グローブの謎の屋敷』 

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『ブロックルハースト・グローブの謎の屋敷』(1995年)シルヴィア・ウォー作 こだまともこ訳 講談社

最初は、ここに出てくるお母さんはちょっと苦手だったんです。嫌味っぽく仕切り屋の姑の言いなりになってたりね。でも、子どもに対することでは頑として自分の意見を譲らない。一見主体性がないように見えて、実は芯の強い母なんですよね。そして、子どもがどんな状態にあろうと、子どもへの愛情は無条件。「○○だったら認めてあげる」と言いがちな現代の母親たちと大違いで、我が身を振り返り反省させられます。

 

このほかにも『炉辺壮のアン』で母親になったアンは素敵だなとかありますが、でもそれってお手伝いさんがいるから余裕があるのよね、とかも思っちゃいます(笑)。

 

チラッとしか登場しないのに、母親たちの存在感。さすがです。

もし、この物語に出てくるこのお母さんが素敵、というのがあったら、ぜひぜひ教えてください!