Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

なんでもかんでもBLに当てはめないで

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『ぼくたちのリアル』(2016年)戸森しるこ著 講談社

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実は、忙しすぎて、もうブログ書くのスキップしちゃおうかな、なんてチラッと思った本日でした。

 

何に忙しいって?

 

それは……、週末の藤井風のフリーライブを何度も見返すのに、もうもう忙しくて~(笑)。YouTubeアーカイブ上がってるので、もう全人類見てほしい。

雨に打たれながらの、日産スタジアムでたった一人&一台のピアノ。最高オブ最高!

もうねえ、メロディーが好みとか好みじゃないとか、超えちゃってて、もう彼の作り出すピースフルな世界観が好き。特に、今回の”優しさ”という曲、神がかってた。

藤井風教に入信しそう(笑)。

 

とはいえ、週2回更新すると決めているので、やっぱりブログ書きますね。心ここにあらずに感じたらゴメンナサイ。

 

そんなわけで、本題。今日の一冊は、2017年度の課題図書(小学生高学年の部)だったコチラです!

 

さらっと読めます。学校ものなので、読書が苦手な子でも共感しやすいかも。

 

実は、あらすじ読んで“ああ、自分にはきっと合わないだろうな”と思って、ずっと読んでこなかったんです。課題図書への先入観もあるかもしれないけれど、きっと友だち関係考えさせたいんだろうなー、って意図が見え見えで。課題図書じゃなければ、もっと素直に読めたのかもしれないな、なんて考えてしまいました。

 

物語の語り手である主人公よりも、璃在(リアル)というオールマイティーな子が物語の中心。時々いるんですよね、こういうスクールカースト最高位にいるような子。それでもって、性格までよい。ちょっと、身近にもいるので、重なりながら読みました。リアルは、弟を事故で亡くすという家庭事情があって、必要以上に大人になっちゃってるんですね。そんないい子じゃなくてもいいんだよ、もっと子どもでいていいんだよ、ってそういうメッセージががんばりすぎちゃってる子たちに届くといいなあ。

 

もう一つ、この物語のテーマはLGBTだったらしいのですが、これだけだとLGBTだったのかな?という疑問も個人的にはありました。だって、小学生や中学生の時期なんて、まだ性に目覚める前で、同性に恋焦がれることなんて、普通だと思うから。同性に対するほうが、憧れって強い時期ってありませんか?この物語内だけの描写で、LGBTという枠にはめようとするのも、ちょっとムリがある気が……。

 

さらに、この物語をBL(BOYS LOVE)ものだから、小学生にはふさわしくない、と書いてる人もいてびっくり。ちょ、ちょっとそれは違うよね?

 

いずれにせよ、今の子って、大人が思ってる以上に、この辺に関しては偏見がない。”人が人を好きになる”、という感覚だから、自分はたまたま異性が好き、くらいの子も多いと聞きます(なんて、素敵なんでしょう!)。

 

ただ、個人的には、この物語に限らないけれど、閉塞感がある現代だからこそ、やっぱり人間関係だけのところから、もう一歩踏み出してほしかったかな。自然とか何か人間をこえた大きなものとつながる体験を読書でできたらなあ、とやっぱり思ってしまうのでありました。

ふざけているようで真面目でまっすぐ

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『保健室のアン・ウニョン先生』(2020年)チョン・セラン著 斎藤真理子訳 亜紀書房

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今日の1冊は、韓国の高校を舞台にしたコチラ!

Netflixのオリジナルドラマの原作本だそう。

 

あらすじ

養護教諭のアン・ウニョンが新しく赴任した私立M高校。この学校には原因不明の怪奇現象や不思議な出来事がつぎつぎとまき起こる。霊能力を持つ彼女はBB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かう。はたしてM高校にはどんな秘密が隠されているのか…。斬新な想像力と心温まるストーリーで愛され続けるチョン・セランの魅力が凝縮した長編小説。(BOOKデータベースより転載)

 

もうね、個人的に怪奇現象とか霊能力とか、いやなんですよお。小さい頃はこわくて、こわくて。そして、今は単純に好みじゃないんです。だから、自分からは手に取らないタイプの本だったけれど、今回読んでみたのは、翻訳家で児童文学研究家の金原瑞人さんが、自腹切って(←すごいですよね!)発行しているフリーペーパー・BOOK MARKの“英語圏以外の本特集”に出ていたから。

 

読み始めて、先ず思ったのは、ポップというか、B級ドラマ感がスゴイ。なんともチープ。だが、そこがいい!!!!

 

クスッと笑っちゃうんです。アン・ウニョン本人はいたって大真面目に戦ってるんですけどね。だって、BB弾の銃とレインボーカラーの剣だもの。面白すぎるー!

 

本当は怨念だとか、負のエネルギーだとか、読んでるこちらも重たくなってしまうような内容だと思うんです。それが、ゼリー状のちょっと憎めない形になっていたり、生徒たちのエロエロパワー(笑)まで見えちゃってたり、読んでる方が気持ちが軽いまま読み進められるんですよね。著者ご本人が、「私はこの物語をただ快感のために書きました。」と書いていらっしゃるのですが、確かに読んでくうちにだんだんと快感を覚えてくるから不思議。スカッとする。悪態つきながらも、ただただ、善を信じるまっすぐな人。学校に熱意がないようでいて、生徒に教育熱心な人。シンプルにいい。

 

ジャンルでいうと、ホラーコメディらしいのですが、意外にもホロリともさせられました。アン・ウニョンの今のキャラクターを作り上げた昔の同級生が出てきた章は、しんみりとした気持ちに。あの章、好きだなあ。

 

昔から、他の人が見えないものが見えてしまうアン・ウニョン。そのため、何の報酬もないし、何の自分の得にもならないけれど、見えちゃうから戦って救うしかない。そして、見えないけれどいる存在たち。時に悪用されてしまう見えない存在たち。ああ、こういう存在があるほうが自然な世界で、ないと思われてる世界のほうが狂ってるよね、って以前読んだ伊藤遊さんの『えんの松原』を思い出したんです。全然タイプの違う物語だけれど。

 

霊といえば、私は、鎌倉に住んでいるのですが、鎌倉ってやっぱり歴史上怨念もウロウロしているらしくて。見える人は、いきなり車のフロントガラスに落ち武者がぶつかってきて、事故りそうになるという話も聞きました(こわすぎっ)。

 

あるとき、偶然お祓い師の人と知り合う機会があったのですが、その人いわく本当はエネルギー使うからお金もらいたいところだけれど、電車とかに乗ってて小さい子に霊がつきそうになってたら、見て見ぬふりできないからこっそり祓う、って言ってたんですよね。だから、電車は疲れるから乗りたくない、って。

 

ああ、私たちは見えないところで、全然知らないこういう人たちに支えられているのかもしれない。それ、忘れたくないなあ。

昔は、先祖うんぬんとかいうのもうさんくさくて嫌だったし、キリスト教の環境で育ったので、そういうものを全否定して育ってきたけれど、いまはそういう人たちの守りもあるんだろうなあ、と思うようになってきました。ウニョンがエネルギーチャージさせてもらう漢文教師のホン・インピョが先祖たちの強烈な守りパワーに守られているように。

 

この物語は、何よりも設定がユニークで面白いし、文章もポップで、学園ものとしても子どもたちにもすすめやすい。それでいて、本当は見えない存在がいっぱいいるほうが自然で、知らないところで誰かに守られてるということを、説教くさくなく感じさせてくれて、とってもいいなあ。いま、中1次男が読んでるので感想が楽しみ。

 

ドラマも観たくなってきました!

ドキドキハラハラ自分を取り戻す!

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『13カ月と13週と13日と満月の夜』(2003年)アレックス・シアラー著 金原瑞人訳 求龍堂

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今日の一冊は、夏休み何か本読まなきゃいけなかったのに、読めてない!

っていう子にもおすすめ。だって、読み始めたら止まらないから。

 

スリリングでとても読みやすく、続きが気になるタイプの物語だけれど、単なるエンターテイメントというので終わってません。ちょっと考えさせられもする。

魔女が出てきたりもするけれど、これがねー、リアルなのですよ。

 

主人公は12歳の女の子で、クラスでどこにも所属してないような浮いてるタイプの子。

以下ネタバレ含みますので、物語の展開ごとお楽しみになりたい方は、このブログは閉じて本を読むのに取りかかってくださいね。あ、ただ、本の目次を読むだけでネタバレになるので、目次も読まないほうがよいかも。

 

といっても、物語序盤ですぐネタバレするんですけどね(笑)。

 

 

■あらすじ

 いわゆる入れ替わりものです。

親友がほしくてほしくてたまらなかった赤毛のカーリーのクラスに転校生メレディスがやってきます。両親は既に他界しているメレディスは、おばあちゃんと二人暮らし。カーリーはその子が親友になってくれないかなあと願っているのですが、彼女はなんだか冷たくて。そして、なぜかおばあちゃんを監視しているような感じ……。

 

あるとき、メレディスのおばあちゃんと話す機会があったカーリーは、おばあちゃんから聞いた話に目を丸くします。なんと、メレディスの中身は魔女で、もともとはおばあちゃんだった自分の身体と、若いメレディスの身体を入れかえてしまったというではないですか。そんなの信じられるわけない。でもでも、様子を見てると、孫のメレディスとおばあちゃんの立場が逆転しているように見える……。

 

どうしたら、本物のメレディスを救える?

一人の女の子が勇気を振り絞り、自分の頭で考え行動する物語。

 

 

■邪悪なものは優しい顔をしている

奇想天外なストーリー!?いやいや、これがなんともリアルなのですよ。

本当に悪い人って、みじんもそんな素振りは見せずに近づいてくる。邪悪なものって、目的を達成するまでは、親切な顔、美しい顔、信頼されるに足る何かを持ってやってくるんですよね。それ、忘れちゃいけない。

 

そもそも、なぜ、人(って魔女だけれど)は長く生きたいんでしょうね。不老不死を求めておかしくなる話って、いっぱいありますよね。アニメ映画のルパン三世の中にもあったなあ。

 

確かに、年を取ると身体がいうことをきかなくなり、関節は痛むは、目はよく見えないわ、など不自由なことがいっぱい。若さあふれる身体、それはもうそれだけで魅力的!そのときは気づかないけれど……。

だから、その頃を懐かしむ気持ちは分からなくもないけれど、“執着”っていいことないですよね。そんな、老人の悲哀の気持ちを体験できるだけでも、この物語は読む価値ありです。 

 

■いまを味わうために生きてる

もちろん、それだけじゃありません。この物語を読むと、月並みな言い方になっちゃいますが、“いまを生きる”ことのすばらしさ、“自分が自分であること”の大切さが身に染みて分かるんです。

 

魔女のようにあんなに醜い思考で、ただただ生きながらえても何になるんだろう……。長く生きるだけが素晴らしいんじゃないよね、いまをちゃんと味わって生きてるからこそ生きてる価値があるんだよなあ、って実感できるんです。そして、家族の絆。これは、ハウツー本ではできない、物語を追体験しないと実感できない感覚。

 

 

■コロナ禍をどう生きるのか

 ところで、個人的には、この物語が、不安視するあまり色々なものがズレていってしまっている、いまのコロナ禍とも重なってしまいました。飛躍してると言われるかもですが、個人的に。

 

命は大切。ええ。

でも、なぜ大切なの?って。煽り情報をすべて鵜呑みにして、自分で調べることもせず対策だけを練る……何のために?どれだけ対策しても、不安に陥り、疑心暗鬼になり、他人を批判したくなってくる人が少なくない。

 

以前、恐れるあまりに消毒しすぎて、体調を壊した方を知っています。その方は、無症状の子どもたちが感染を広げてると信じ込み(無症状で感染広げるって……どうやって?)、子どもが公園で遊んでる姿を見かけると怒鳴るとおっしゃってました。子どものせいで、老人が危ない、って。子どもは家にいろ!って。恐れるあまりに、別の精神的な病気になった人も知ってます。

 

好き勝手して他人に迷惑をかけることは当然違うけれど、できる範囲で、自分の頭で考えて、直感を信じていまを味わうこと、楽しむこと忘れたくないなあ。笑って楽しんで免疫あげることが、一番の対策じゃないかな。

 

また、この物語を読み終えるとね、しみじみ幸せを感じるんです。誰かに乗っ取られることなく、自分の中身が自分の身体にあることを!

 

魔女ってね、いわゆる魔女の形をしてないかもしれない。言ってみれば煽り報道をするテレビやネットの情報も部分的な魔女といえるかも。それらに思考乗っ取られてない?それは本当に自分の思考?

 

制限があろうとも、まだ私たちは自分の意志で動ける、この恵まれた環境。

自分を取り戻そう、って思いました。

 

エンターテイメント性もありながら、ふと立ち止まり大事なことを思い出させてくれる、そんな物語でした。

子育て本は、もうこれ一冊でよいかも

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『「ティール時代」の子育ての秘密 あなたが輝き、子どももより輝くための12章』(2020年)天外伺朗著 内外出版社

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今日の一冊は、ああ、読んじゃった。

読まなきゃよかったかなあ、とちょっと戸惑ってしまったコチラ。

 

なぜ、戸惑うかって?

薄々分かってたんです。こちらに書かれていることが“すべて”なのだということを。

これさえ実践できてれば、もうどんな育児書もいらないということを。

あとは、実践するだけで、もうどんな言い訳も立たなくなるから。後戻りできないから。ああ、まだ、言い訳したかったんだなあ。子どものせいにしたかったんですね、私。

 

子育てに悩んでる方は、ぜひ手に取ってほしいなあ。

すぐには、なかなか受け入れがたいかもしれませんが、そもそも受け入れられる人はこの本必要ないよね、とも思う。すぐ読めちゃいます。さらっと読めるからこそ、落とし込むのに何回か読み直したい。あとは、実践するのみ!

 

私がこの本を知ったきっかけは、ブロガーきょうこさんがおススメしていたことから↓

kyokoippoppo.hatenablog.com

 

育児書に関していえば、私自身は、ハウツー本があまり好きでないこともあり、あまり読んできたほうではありませんでした。好きだったのは、佐々木正美先生の本や、自然育児、シュタイナー系、そしてコチラ↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

子育て関連のスピ系もそれなりに読んできました。じいじがブックオフ巡回(笑)で買ってくるスピ系の本を、自分が読み終えると回してくるんですよね。うちは子どもが荒れたので、もうそのときは藁をもすがる思いで読みました。

 

でも、スピの本は、話せる人が限られるというか、自分自身もあまり頼りたくなかった。

 

”スピ嫌いというわりに、詳しいよね”と言われるのですが、じいじから渡されるからです(笑)。厳密にいうとスピの内容が嫌いというわけではなく、言ってることは分かるんだけど、その言語で語られたら、本当に必要としている普通の人に届かないじゃない!って思ってしまうんですよね。スピの本のときは、絶対カバーするし、読んでるところ見られたくない ←この心理はなんなんでしょう。

 

今日の一冊は、そんなスピ嫌いの私から見て、「おお、(スピ)ギリギリのところせめてきたな。これなら、スピ苦手な人にも手渡せそう」(←上から目線)って感じでした。でも、そう、もう新しい時代完全に始まっちゃってますよね。人の意識の変容が起こってる。

 

 子どもを変えようとしない

 

 無条件の受容

 

 「心の内面」が外の世界に反映する

 

もうね、人間関係含め、ぜーんぶ世界作ってるのは自分なんですよね。

 

今まで心に響いた本は、どれも形は多少違えど、同じことを言ってました。

もう、いい加減、認めよう。ぜんぶ、私なんだ、ってこと。

良いも悪いも、自分が世界を作ってるんだ、ってこと。

だから、未来は明るい。

 

あ、ちなみにスピ嫌いといいましたが、スピ系のこと語っていても、あやしくない、隠したい気持ちにならなかったのは、藤井風くんがはじめてです(←本関係ない。アーティストだけど笑)。彼が、デビュー曲で、ハイヤーセルフのことをナチュラルに語ってるのを聞いたときの衝撃たるや。やっぱ最高です、藤井風。おまけで、どうぞ↓

www.youtube.com

 

小学生男子の味方!

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『がんばれヘンリーくん』(2007年)ベバリイ・クリアリー作 松岡享子訳 学研プラス

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今日の一冊はシリーズもの。

読書が嫌いな小学生男子の強い味方!!!

 

うちの子三兄弟はみな読書が好きではないのですが、小3三男の夏はヘンリーくん一色でした!何か本を読もう、という話になったとき、三男からリクエストがあったのが、

「ホーマーくんみたいなのがいい!」

だったんです

jidobungaku.hatenablog.com

 

で、思い出したのがヘンリーくんシリーズ。こちら、同じく読書が苦手だった長男が、小学生の頃唯一読破できたシリーズだったのです。

 

クスクス笑いながら、立て続けに5冊読んでました。それを見て、なぜか夫も読み始めました(笑)。

 

すんごい事件が起こるわけじゃありません。でも、日常の中のちょっとした事件。

男子あるあるがいっぱい!時代は古くて、日本でいうところの昭和初期の香りがするけれど、今の子たちにもじゅうぶん魅力的にうつるようです。ほっとするんですよね。

THE☆児童文学って感じ。刺激は少ないかもしれないけれど、共感いっぱい。

 

著者のベバリー・クリアリーさんは、司書をしていて、そこで出会ったたくさんの子どもたちが喜ぶ本を、ということで書き始めたそう。ファンタジーではなく、リアリティ文学と呼ばれる日常を描いているというところも、本が苦手な子でも入りやすい理由かもしれません。

 

後半は、ヘンリーくんシリーズにも登場する女の子の友だちとその妹の話に移っていくのですが、それがラモーナシリーズです。

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ヘンリーくんが純粋に子ども心に楽しめるとしたら、ラモーナシリーズは“なんでこの子はこうなんだろう?”とついつい思っちゃう大人に読んでもらいたいシリーズ。

ああ、子どもってこんな風に世界を見てるんだなと分かって泣けてくるんです。いかに大人が表面しか見ていないことか。

 

ヘンリーくんもラモーナも子どもを代表してくれているようで、おすすめです!

 

はじめての文学シリーズ

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『はじめての文学 村上春樹』(2006年)村上春樹著 文芸春秋

 

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これだけ周りにハルキスト(村上春樹の熱烈ファン)が多いと、大声で言いづらいのですが(ってブログに書いてるけど)、実は、自分は春樹ワールドと相性が合いません……。

 

人間と同じで、本にだって相性はあるのだから、別におかしなことではないのだけれど、落ち込む。良さが分からない自分に落ち込む。あんなに世界的に認められてる人の物語の良さが分からない(というか最後まで読めない)自分は、本の感想ブログなんて書く資格ないんじゃないか、とすら思ってしまう。うー。

 

そんな村上春樹が、いま高1長男のクラスで人気だそう。

長男は、本が好きじゃないけど、とりあえず友だちにすすめられたから、と夏休みに学校図書館から借りてきたのが、今日の一冊です。

 

ちなみにこれ、シリーズもので、ほかにも川上弘美よしもとばなな浅田次郎宮本輝重松清などがあります。小学生でも読めるように書いてあるので、文字は大きめだし、ルビもふってある。他の人のは未読なので分からないけれど、村上春樹のは短編集で、そのほとんどがナンセンスものです。

 

ああ、私ナンセンスものもこれまた苦手というか、相性が合わないんです。

ナンセンス文学の存在意義は、分かるつもりでいるんです。壊すこと、意味をなさないことの大事さ……ありますよね。ただ、いかんせん相性が合わない。ナンセンス文学について分析してたり、論じていたりするものは好き。けど、ナンセンス文学そのものを自分自身が楽しむことは、難しいんだなあ。『不思議の国のアリス』も最後まで読めない人……。

 

ま、そんなこともありますよね(開き直りっ)。

 

こちらの『はじめての文学』では、著者自身があとがきで、一つ一つの物語にコメントしているのですが、著者自身はあまり気に入ってないというか、自分らしくないと感じている話が、私には一番面白かったです。これ読んだら、少しは春樹コンプレックスが解消されるかと思いましたが、加速しただけでした(笑)。

 

なぜ、自分はナンセンス文学が苦手なのか、もうちょっと追及していこうと思った2021年夏。自分からでは手に取らなかったので、ありがとう、長男。

興味がなくとも、人の”推し”の話は面白い

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海獣学者クジラを解体する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~』(2021年)田島木綿子著 山と渓谷社

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今日の一冊は科学エッセイ本のコチラ!

いやあ、面白かった。何度も言いますが、個人的に理系のものはすべて苦手で興味ないのです。が、これは面白かった!!!

 

というのも、2018年に鎌倉の由比ガ浜にクジラの赤ちゃんの死体が打ちあがったのですよ。夫と三男はチャリチャリ漕いで見に。まさか、あのクジラが国内初のシロナガスクジラの発見だったとは!そして、このクジラの胃からビニールの破片が発見されたことにより、神奈川県のプラスチックフリー宣言が出されていたとは、この本を読むまで、シラナカッター!

 

ただ一つ、出版社にモノ申したいのは、シロナガスクジラ座礁した場所が、文中ではしっかり鎌倉市由比ガ浜とあるのに、写真のキャプションでは江ノ島になってること。

江ノ島藤沢市だから!由比ガ浜から江ノ島見えないから!鎌倉市民としては、ココ大事。それとも江ノ島だったのかな?と思ったけど、背景どう見ても谷戸だらけで鎌倉でしたから~(笑)。

 

とっても読みやすいです。内容は小学生でもいけると思うのですが、ルビふっていないので、そういう意味では、読書好きな子でなければ中学生以上かも。

 

国立科学博物館(科博)の研究員である田島木綿子さんが、とてもポップに語ってくれているので、まるでお友だちから“推し”の話を聞いている感覚に(笑)。魅力的な挿絵の力も大きい。

 

もうね、とにかく熱量がすんごいんです。だから、興味なくても惹きこまれるし、“へえ!”がいっぱい。

 

日本中のどこかしらで、毎日のようにクジラが座礁しているんですって。

驚きですよね。そして、自治体にゴミとして処理されないよう全国から研究者が駆け付ける。すぐに解体しないものは、砂浜の底に眠らせて、微生物に骨になるまで分解させるなんてこともしているそうで、自分が歩いている砂浜の下にクジラが眠ってることがあるかも、なんてびっくりですよね。壮大なロマンを感じます。あー、すぐにでも科博に行きたくなってきた!

 

最後に余談ですが、個人的なクジラの思い出を一つ。

私にとって、初の一人旅は大学生の頃行った冬の北海道でした。雪で止まった電車のところまで鹿が来てくれたり、ほかに誰も観光客がいない川を樹氷眺めながらカヌーで宿の人と一緒にくだったり。

 

ある日、これまた泊まり客が私しかいなかった宿の人と一緒にクロスカントリーで森を抜けたんですね。まるでL.L.Beanの表紙にでもなりそうな森。その森を抜けると、そこは海岸で、なんとクジラの死体が打ち上げられていたのです。半分以上、鳥たちに食べられ、骨がむき出しになっていたクジラ。北の果ての凍てつく海岸で、どんよりとした曇り空の下にあった死体。心の底から感動が沸き上がってきたんです。死を目の前にして、生を感じたとでもいうのか。言葉にならない感動。

ホエールウォッチングで見たクジラよりも、冬の北海道で見たクジラの死体のほうが、忘れられなくて。ずっとずっと脳裏に焼き付いています。

 

田島さんは、一つ一つの死体から聞こえるメッセージに耳を澄ます、と言います。私は、田島さんのようにそこから自然環境的なメッセージを受け取るわけではないけれど、それでも言語化できないメッセージはしっかと受け止めました。田島さんもおっしゃっていたように、こんな巨大な動物が、自分と同じ時代に生きている喜びに心が震えたのです。死と生。

 

興味がない方も、地球の生物の壮大さを感じれますので、ぜひ。