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今日の1冊は、韓国の高校を舞台にしたコチラ!
Netflixのオリジナルドラマの原作本だそう。
あらすじ
養護教諭のアン・ウニョンが新しく赴任した私立M高校。この学校には原因不明の怪奇現象や不思議な出来事がつぎつぎとまき起こる。霊能力を持つ彼女はBB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かう。はたしてM高校にはどんな秘密が隠されているのか…。斬新な想像力と心温まるストーリーで愛され続けるチョン・セランの魅力が凝縮した長編小説。(BOOKデータベースより転載)
もうね、個人的に怪奇現象とか霊能力とか、いやなんですよお。小さい頃はこわくて、こわくて。そして、今は単純に好みじゃないんです。だから、自分からは手に取らないタイプの本だったけれど、今回読んでみたのは、翻訳家で児童文学研究家の金原瑞人さんが、自腹切って(←すごいですよね!)発行しているフリーペーパー・BOOK MARKの“英語圏以外の本特集”に出ていたから。
読み始めて、先ず思ったのは、ポップというか、B級ドラマ感がスゴイ。なんともチープ。だが、そこがいい!!!!
クスッと笑っちゃうんです。アン・ウニョン本人はいたって大真面目に戦ってるんですけどね。だって、BB弾の銃とレインボーカラーの剣だもの。面白すぎるー!
本当は怨念だとか、負のエネルギーだとか、読んでるこちらも重たくなってしまうような内容だと思うんです。それが、ゼリー状のちょっと憎めない形になっていたり、生徒たちのエロエロパワー(笑)まで見えちゃってたり、読んでる方が気持ちが軽いまま読み進められるんですよね。著者ご本人が、「私はこの物語をただ快感のために書きました。」と書いていらっしゃるのですが、確かに読んでくうちにだんだんと快感を覚えてくるから不思議。スカッとする。悪態つきながらも、ただただ、善を信じるまっすぐな人。学校に熱意がないようでいて、生徒に教育熱心な人。シンプルにいい。
ジャンルでいうと、ホラーコメディらしいのですが、意外にもホロリともさせられました。アン・ウニョンの今のキャラクターを作り上げた昔の同級生が出てきた章は、しんみりとした気持ちに。あの章、好きだなあ。
昔から、他の人が見えないものが見えてしまうアン・ウニョン。そのため、何の報酬もないし、何の自分の得にもならないけれど、見えちゃうから戦って救うしかない。そして、見えないけれどいる存在たち。時に悪用されてしまう見えない存在たち。ああ、こういう存在があるほうが自然な世界で、ないと思われてる世界のほうが狂ってるよね、って以前読んだ伊藤遊さんの『えんの松原』を思い出したんです。全然タイプの違う物語だけれど。
霊といえば、私は、鎌倉に住んでいるのですが、鎌倉ってやっぱり歴史上怨念もウロウロしているらしくて。見える人は、いきなり車のフロントガラスに落ち武者がぶつかってきて、事故りそうになるという話も聞きました(こわすぎっ)。
あるとき、偶然お祓い師の人と知り合う機会があったのですが、その人いわく本当はエネルギー使うからお金もらいたいところだけれど、電車とかに乗ってて小さい子に霊がつきそうになってたら、見て見ぬふりできないからこっそり祓う、って言ってたんですよね。だから、電車は疲れるから乗りたくない、って。
ああ、私たちは見えないところで、全然知らないこういう人たちに支えられているのかもしれない。それ、忘れたくないなあ。
昔は、先祖うんぬんとかいうのもうさんくさくて嫌だったし、キリスト教の環境で育ったので、そういうものを全否定して育ってきたけれど、いまはそういう人たちの守りもあるんだろうなあ、と思うようになってきました。ウニョンがエネルギーチャージさせてもらう漢文教師のホン・インピョが先祖たちの強烈な守りパワーに守られているように。
この物語は、何よりも設定がユニークで面白いし、文章もポップで、学園ものとしても子どもたちにもすすめやすい。それでいて、本当は見えない存在がいっぱいいるほうが自然で、知らないところで誰かに守られてるということを、説教くさくなく感じさせてくれて、とってもいいなあ。いま、中1次男が読んでるので感想が楽しみ。
ドラマも観たくなってきました!