Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

連続して死にざま見せられ、残るのは......

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『生き物の死にざま はかない命の物語』(2022年)稲垣栄洋著 草思社文庫

 

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今日の一冊は、小学校高学年から大人まで楽しめる科学エッセイ。ベストセラー『生き物の死にざま』の続編です。なぜ続編から読んだかというと……単純に間違えたからです(笑)。

 

タイトルの通り、さまざまな生き物の死にざまが詰まったエッセイなので、順番は関係なかったので、ほっ。

 

コウテイペンギンツキノワグマというみな知ってる動物から、オビラプトル(恐竜)、ブロブフィッシュ(深海魚)というマイナーなものまで。生き物に興味なく育ってきた私にとっては、ウナギが南方から3000キロも旅してくるなんてシラナカッタ。聞いてたかもだけど、記憶になし。

 

それぞれの死にざまはもちろん興味深いのですが、圧倒されたのは、次から次へと死にざまを連続して見せられるから。死にざまが書かれたものはあっても、次から次へと、となるとやはり珍しいし、ああ、現代の私たちは死が身近じゃなくなってたなあ、って痛感します。生き物は人間含め、みんないつかは死ぬのに。致死率100%なのに。ニュース、ゲーム、アニメ内ではたくさんの死を目にしても、なんだか、“自分ごと”とは実感できないのが、私含め、現代人なのではないかな、なんて思うんです。

 

そこで、思い出したのが中学のとき聖書の授業で習った“メメントモリ”というラテン語の言葉。あなたの死を覚えよ(いつか必ず自分も死ぬということを忘れるな)という意味。“死”を意識すると、不思議なことに“生”を意識するんですよね。いつかは死ぬ、じゃあ、いまをどう生きよう、って。その授業つまらなくて、つまらなくて(←大事なことなので2回言います笑)、ぜーんぜん内容覚えてないのに、この言葉だけは強烈な印象で記憶に残ってました。

 

著者も書いていましたが、生き物たちが“いま”しか生きてないと比較して、私たち人間は過去や未来にばかり目を向けて“いま”を生きることを忘れがち。それは“死”を自分ごととして意識することが少ないからなのかもしれない、そんなことを思います。でもね、これだけ、すべての生き物が死に向かっていることを目の当たりにすると、なんだか腹くくれる気がするんです。来るべきときが来たらジタバタせず迎えたいな、って。さあ、そのために、どう生きよう。

 

正直、理系的な興味は私にはないので、面白い!と思っても、読んだそばから、知識としての生き物たちの死にざまは忘れていきます。テストされたら赤点レベルに自信アリ!です(笑)。知識としては残らないけれど、“生き物の神秘と不思議”への何とも言えない感慨深い思いは心に残る。これが大事なんじゃないかな。

 

著者である農学博士稲垣栄洋氏は、面白おかしく書いてるわけでもなく、どちらかというと淡々と、でもその死にざまに対する自身の思いも主張しすぎない程度に書かれています。読み物として興味深いので、ぜひ!