今日の一冊は、元同僚からいただいたコチラ。
彼女自身は、大人の文学が好きで、児童文学は読まないんです。でも、私が児童文学好きだから、あえて選んでくれたのだろうなあ、と思ったら、とっても嬉しかった。
主人公ラングストンは私の仲間。
私たちがなぜ本を読むのか、愛するのか、
その理由についてのおよそすべてが、
この中に書かれています
という辻村深月さんによる帯の文章も選ぶ決め手になったのかな、と想像。
自分にはチャンスがないと思ってる人、この環境じゃなかったら……と思ってる人に、ぜひ手に取ってもらいたい一冊!
舞台は1946年。主人公の少年ラングストンは、母親を亡くし、父親とアラバマからシカゴへと引っ越してきます。けれど、待っていたのは学校でのいじめ。居場所のないラングストンは、祖母のいるアラバマへ帰りたくてたまりません。そんなとき、偶然出会ったのが図書館。そして、自分と同じ名前のラングストンという詩人の本。やがて、それは亡き母の秘密へとつながり、ラングストンは心の自由と希望を手にいれます。
最初に読んだときはさらっと読み過ぎて、実はそれほど……だったんです。でも、感想を書こうとぱらぱら読み直していたら、まあ、しみじみといいではないですか。ところどころ、じんわり涙が出てきてしまいます。
この物語の中では、ラングストンは詩に出合って、変わっていきます。ラングストンは詩人はマジシャンみたいだ、と思うんです。ぼくの心から、ぼくだって気付いてなかったような言葉を引き出してくれるマジシャンだ、って。詩のどんなところがいいの?とクラスメートのクレムに聞かれるとラングストンはこう答えるんです。
「そうだな……だれかがぼくだけに話しかけている感じがするのが好きだ。それに、ぼく以外のだれかが、ぼくのことをわかってくれている感じがする……ぼくの気持ちを。うまく説明できないや……」(P.184)
ああ、詩に限らず、読書の喜びってそこですよね。
この図書館がきっかけで、ラングストンはいじめっ子のうちの一人であるクレムと徐々にうちとけていくのですが、そのさまもいい!本と出合えるのは一人のときだけれど、でも、そのあと誰かと分かち合えるのは、また別の喜びがあるんですよね。
そして、亡き母が、名前につけた思いや秘密にラングストンが気づくところは感動します!亡くなってからでもメッセージって伝わるんですね。
図書館は誰でも入れる場所。借りるのにお金もかからず、すべての人に開かれている場所。きっと、ラングストンのように、あなたのための一冊がそこにはあるはず。まさに誰にとっても図書館は、魔法のような“希望”が見つかる場です。