Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

自然!五感!いまの喜び!

f:id:matushino:20220411203922j:plain

『子どもが心配 人として大事な三つの力』(2022年)養老孟司著 PHP

※ 毎週月曜と金曜の週2回更新 → 月曜日の週1更新に変更

 Facebook『大人の児童文学』ページもよかったら♪

ひっそりInstagramも気まぐれ更新

 

このブログ、いままで週2回で更新していたのですが、これからは週1回更新に変更させていただこうかと思います。え、別に最初から週2回も求めてなかった、って(笑)?

いや、私自身が焦るように読みたかったのです。だって、素晴らしい児童文学であふれていて、あれもこれも読みたい!だったから。

 

ところがですよ、児童文学って平易な文章だけれど奥が深いので、関連して色々児童文学以外の本も読みたくなっちゃうんですね。その関連本たちが、読むのに意外と時間がかかってしまうんです、私の場合。(あとは藤井風の動画巡りに忙しい笑)

というわけで、この4月から、更新を月曜日の週1回に変更させていただきますね。

 

さて、今週の一冊はコチラ!

子どもとタイトルに入っているものってね、なんだか子育て真っ最中な人しか手に取らないイメージがあるんですけど、これはみんなの課題なんだなあ、って読んでしみじみ思いました。子どもがいない人も、子育てが終了した人も、みんなに関係している。子どもを育てるのは社会全体の責任だから。みんなの未来だから。

 

実はこちらの本、発売されてわりとすぐに買い求めたのですが、重版待ちだったんです。今年の3月1日に発刊されているのですが、同月内に重版がかかってるって、それだけ興味がある人がいるってことで、希望を感じる。なんか、嬉しい(←何目線)

 

さて、気になる中身。出版社HPによると内容は↓

 

子どもたちの遊び場が次々に消失し、体を使って外で遊ぶ子どもの姿を見なくなった。自殺する子どもも、後を絶たない。子どもは本来「自然」に近い存在だと論じる解剖学者が、都市化が進んだ現代の子どもを心配に思い、四人の識者と真摯に語り合う。
医療少年院で非行少年の認知能力の低さに愕然とし、子どもの認知能力の向上に努めてきた宮口幸治氏。インターネットで「正しい育児法」を追いかける親を心配する、慶應義塾大学病院の小児科医、高橋孝雄氏。国産初の超電導MRIを開発し、子どもの脳の大規模研究を行なってきた小泉英明氏。生徒が自分で野菜を育て、机や椅子も作る学校、自由学園高橋和也氏。子どもと本気で向き合ってきた経験から紡ぎ出される教育論。

ね、面白そうでしょ?ただ、教育論という言葉はちょっと違うかも。教育論、ではないです。まえがきにも書かれていますが、この本では考え方の基本が語られているだけで、具体的なことは自分で考えてくださいスタンス。なので、答えを求めている人には物足りないかもしれません。でも、答えをすぐ求めようとすることに警鐘を鳴らしているので、そうこなくっちゃ!ですね。

 

個人的にとっては、ハッとする言葉がいっぱいで、付箋貼りまくりでした。また、小児科医や脳研究者の観点も入っているので、感覚的なことが苦手な男性陣にも響きそう。そういえば、対談に出てくるのはみな男性ですね。

 

まえがきの中で養老孟司さんはこう書いています

子どもは自然であって、自然はひとりでに展開していくものであろう。現代人はそこを自分の考えでなんとかしたがるわけだが、その傾向が少子化を生み、いわば若い世代を不幸にしていってる元凶でないかとすら思う。(P.5)

 

巷にあふれている育児のハウツー本、子どもが大人の力で管理できると錯覚している私たち。子どもに真摯に向き合うことと、コントロールを勘違いしがちで、我が身を振り返ってみても猛省です。

 

たくさんの言葉をメモしたけれど、結局のところ大人は子どもがチャレンジできるように「安心安全の土台」と「伴走者」になることが求められる、というところを心したいと思います。ついつい口を出しがち。口出しではなく、大事なのは子供の「代弁者」になること。そのためには、子どもの心の声が理解できないといけない。

 

キーワードは、「いま」の喜び(幸福の先送りをしない)、自然のなかに身を置いて、五感を通して自分の周りで起きているさまざまな現象を感じとること。

 

植林の話のところで、”植林の醍醐味は、結果が自分自身に返ってこないこと”というのもなるほどなあ、って。教育も同じで、結果が自分に返ってくることばかり求めていると、自分の利益になることだけをしようという発想になる。「いつ、誰の役に立つかわからないこと」を長い目で見守り、応援することが大切、というところに頷きまくり!

 

“7世代先の子どものために、今何をしなければいけないかを考えて行動する”というネイティブアメリカンの教えを思い出しました。

 

どの章もとっても興味深かったです!

欲をいえば、最後にまとめのような養老孟司さんの総括が欲しかったなあ。おススメです。