Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

刺激をお求めなら角川武蔵野ミュージアム!

カッコイイ。圧巻!

ずっと行ってみたかった角川武蔵野ミュージアムにやっとこさ行ってきました!

 

第一印象……え、ココ!?

 

いやあ、思い込みってコワイ。写真見た印象から、勝手に広大な丘の上にあると思ってたんですね。軽井沢とか八ヶ岳にあるような。普通の街中にあってビックリ(笑)。

 

そんな思い込みはあったものの、隈研吾氏設計による建築には圧倒されました。建築には疎くて、特に現代的なものとなると良さがイマイチ分からない私ですが、花崗岩で覆われた建物は、まるで生きているみたい!願わくば広大な丘の上に建ててあげたかった(笑)。この建物は、想像をかき立てる何かがあるんですよねえ。その巨大な岩は、私の中でこの物語を思い起こさせました↓

『星に叫ぶ岩ナルガン』(1982年)パトリシア・ライトソン著 猪熊葉子訳 

 

河合隼雄さんが何かの本の中で紹介していて、アボリジニーの伝説をもとに描かれたファンタジーで、とっても興味深く読んだオーストラリアの物語。読み直したくなりました。

 

さて、角川武蔵野ミュージアム

美術・博物・図書をまぜまぜにする、前人未到のプロジェクト。イマジネーションを連想させながら、リアルとバーチャルを行き来する複合文化ミュージアム

なんだそうで、ナルホド、まずはイマーシブアートと呼ばれる体感型デジタルアート劇場で、のゴッホ展を楽しんできました。

 

映像がグルグルするので、ちょっと酔いました(笑)。個人的には、どうしてもアナログの質感が好きなのですが、デジタルだからこそできる体験。その体験を参考に、あとで脳内で、アナログの質感で没入しなおしてみたりもしました。楽しい!

 

そして、楽しみにしていた本棚。やっぱり、アナログの質感が好きー!積み上げられた本たちにワクワク。ここに色んな知恵や物語が眠っているかと思うとゾクゾクする。中身を一冊まるまる読むには時間がないけれど、もうね、背表紙見てるだけで楽しいし、なんだか刺激を受けるんです。本ってそういう不思議な力があるよなあ、って。

プロジェクションマッピングも面白かった

本棚劇場

 

分類の仕方も面白いし、時には覗いてはいけない人の心のうちを覗いてしまったかのような感覚にもなる。あ、思ったよりもKADOKAWAの本にこだわっていなかった点も素敵でした。

 

”街”のような図書空間になっているそうで、異国の街に迷い込んだかのような感覚になります。ここからなら、異世界にも通じそう!?物語が隠れていたり、生まれたりする、まさにそんな場。

 

座って読めるようになってます

 

ちなみに次男は、マンガ・ラノベ図書館のほうへ行き、「漫画いっぱい最高!」って言ってましたが、漫画は思っていたよりも少なかったような?(←個人の感想です)

あ、ここはKADOKAWAのものばかりが集められているから、私はあまり惹かれなかったのかな(小声)。

 

ランチは角川食堂へ行ってみたかったけれど、行列だったので、ラーメンWalkerキッチンへ。ラーメンなら回転が早いだろう、と。正解!全国の人気店主が入れ替わりで出店しているから、思いのほか美味しかったのです。

 

角川武蔵野ミュージアム、家族で行くと意外と散財するのでギョッとしますが、一日楽しめる場所でした!

心を草原に飛ばそう!

 

『トヤのひっこし』(2015年)イチンノロブ・ガンバートル (著)、バーサンスレン・ボロルマー(絵)、津田紀子(訳) 福音館書店

『りゅうおうさまのたからもの』(2016年)イチンノロブ・ガンバートル (著)、バーサンスレン・ボロルマー(絵)、津田紀子(訳) 福音館書店

※ 毎週月曜日の19時頃投稿しています♪

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今日はコチラの2冊の絵本のご紹介!

 

珍しいモンゴルの作家と画家による遊牧民の暮らしを描いた絵本です。モンゴルといえば、いままでは『スーホの白い馬』だけが有名でしたが、あれはちょっと切ないので、今回は楽しいのをご紹介。

 

ひとつめの『トヤの引っ越し』は、遊牧民ならではの引っ越しの様子を描いたもの。動物たちも一緒の大移動。もうね、絵本でモンゴルの雄大さや暮らしぶりを体験できるから、ぜひぜひ!

 

ふたつめの『りゅうおうさまのたからもの』は、モンゴルの昔話を描いたもの。昔話あるあるで、はじめて読んだ気がしないのですが、きらびやかな場面があったり、モンゴルらしさも随所にあって、うちの三男は大好きでした。

 

ところで、なぜ、急にこちらを紹介したくなったかって?それは、中2次男が短いけれど、この夏モンゴルでのひと時を過ごしてきたからなんです with じいじ。

 

あーーーーー、羨ましい!!!私も行きたかった。馬で草原を駆け抜けたい!!!しかし、じいじも80歳超えてるのに元気だな。

 

モンゴルって、ウランバートルにはビルがあるけれど、ひとたび草原に出れば、本当にこんな景色が広がっているんです。

360度大草原!

岩場もあったり、大地は表情豊か

雄大、壮観って言葉じゃ足りないくらい。

次男は途中で写真を撮るのをやめたそう。だって、この360度大草原はフレームにはおさまりきらないから。しっかりと、目に焼き付けてきたそうです。

 

弓矢もふだんから自分で竹で作ったりもしている野生児の次男。その成果か、なかなか弓矢の腕がよかったらしく、はじめての馬もすぐ乗りこなせたので、“遊牧民にならないか?”とたびたびスカウトを受けたそうな。←受けなよ、そのオファー!と本気で思った母(笑)。THE☆草原留学。

 

ところで、私自身は、大学時代にコチラを読んで、モンゴルに行きたくなった思い出↓

オーパオーパ!! モンゴル・中国篇・スリランカ篇』(1991年)開高健著 集英社文庫

当時はまだ一般旅行先としてはモンゴルは有名ではなく、旅先として行けるのかな?って感じだったのですが、調べてみたら、なんともまあ魅力的なツアーがあるではないですか!

 

ワイルドキャラバン。遊牧民の人たちと一緒に、ひたすら馬に乗って移動してはキャンプ、移動してはキャンプという結構過酷なツアー。バイト代貯めて行きましたよ!まさか、20数年後に同じツアーにじいじが行くとは当時は想像すらしていなかったけれど。その後、すっかりハマったじいじは毎年のように行くように(笑)。貯金ゼロで死ぬぞー(=遺産は残しません)、がじいじの口癖。

 

ああ、モンゴルよかったなあ。一番感動したのは、虹が地面から出ているところからアーチを描いて、そのまた向こうの地面まで消えるところを見れたこと。自分たちがいるところは晴れ、真ん中に分厚い雨のカーテン、そのまた向こう側は晴れ、という壮大な景色を見れたこと。人間なんてちっぽけだなあ、って。羊の解体も、まさに“儀式”で、グロテスクかと思いきや美しかった。

 

大自然自体も素晴らしいのですが、そこに生きる遊牧民の人たちにも惹かれて惹かれてやまないのです。その後、何かいやなことが起こると、心の中にしまっておいたモンゴルを取り出しては、元気になっていました。

 

とはいえ、なかなか行ける場所でもない(旅費が高い)ので、いまは絵本を取り出してはウットリしています。

 

この夏、広い草原に心を飛ばしてみませんか?草原の爽やかな風に吹かれてみませんか?よかったら。

動物たちから学ぶ生き方

『バンビ 森に生きる』(2021年)フェーリクス・ザルテン作 酒寄進一訳 ハンス・ベルトレ画

※ 毎週月曜日の19時頃投稿しています♪

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ああ、困ったこまった。みなさんのお知恵拝借したい!

 

本って、人にすすめやすい本と、すすめにくい本がありますよねえ。誰が読んでも、絶対気に入ってもらえる、面白いと思ってもらえる一気読み系の本。一方で、最初はピンと来なくても、じわじわと深いところに響いてくる本、でも自分からはなかなか手に取らないから、誰かに手渡してもらわないと出合えないかもしれないタイプの本。

 

今日の一冊は、どちらかというと後者に属しそうな物語なんです。バンビ、名前を聞いたことない人はいないかも(ディズニーのおかげでね)。ディズニーのほうも見たのか見ていないのか、物語の内容自体は全く覚えていないのですが、あのかわいいバンビの映像だけはクッキリと脳裏に残っている。映像の力、スゴイ。しかし、それが固定イメージを作って邪魔をするときもあるから、よしあしだなあ、と(小声)。

 

それに加え、実は、個人的に動物物語って苦手なんです。動物たちが人間の言葉でしゃべるのが苦手。それでも、今回『バンビ』を手に取ったのは、周りの児童文学好き仲間がこぞって絶賛していたのと、あの酒寄進一さんが出した新訳だったから。酒寄さんは以前こちらのお話を聞きに行って、その熱量に圧倒されたので↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

今回も、物語を読むより先に、教文館ナルニア国であった酒寄さんの講演会を聞きに行ったのですが、やっぱり熱量がすごい。面白い。あんな楽しそうに話されては、読みたくもなります。

 

結果……読めてよかった(涙)。

じんわりきます。深いところに響く物語でした。

 

でもね、これ手渡すの難しいなあ、って。だから、困ってるんです。

人生のうちで、こういう物語に出合っておきたいけれど、どうすればこの良さが伝えられるのか。

 

地味といえば、地味なストーリーなんです。派手な展開があるわけでもないし。いや、読んでいるとドキドキ感はすごいんですよ。生きることの凄まじさ。森の中で、芽生えるセンスオブワンダー。でも、スピーディーな展開に慣れてしまっている子どもたちが、最初のほうで読むのやめちゃわないかな、って。(←無用な心配に終わるとよいのですが)

 

さて、この物語の中で、ひときわ存在感をはなっているのが古老と呼ばれる威厳のあるシカなんです。読む人読む人、「もう、古老がいいよねえ!!!!」とみな感嘆していたわけが、読んで分かりました。古老は多くは語りません。背中で見せる。生きる姿を見せて、自分で学ばせる。かっこいい!!!

 

いまの大人って、私も含め、言葉で説明して子どもたちに教えようとしすぎている気がします。“答えらしきもの”を教えたがる。自分のことは棚にあげてね。“こうあってほしい”“こうあるべきだ”をひたすら語ってしまう。古老をみて、もう恥じ入りましたよ。

 

「自分の耳で聞き、鼻でかぎ、目で見るのだ。自分で学べ」

 

大人も子どもも生きてる実感が得られない人が増えているのは、自分で学んでいないからなのかもしれない。自分で学ぶためには、ひとりになる時間が必要。森から、バンビから学ぶものは大きいです。

 

どんな手渡し方をしたら、いいのか。お知恵拝借したいです!

 

 

 

情熱って伝染するもの

 

※ 毎週月曜と金曜の週2回更新 → 月曜日の週1更新に変更

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昨日は、この夏のイベントとして前々から楽しみにしていた『いのちの木のあるところ』刊行記念トークイベントを聞きに行ってきました!

 

著者の新藤悦子さんのお話は、いつ聞いても毎回違うお話をしてくださるし、もう楽しくて楽しくて。お話が楽しいのに加え、今回はトークイベントの場所が、なんと東京ジャーミイ隣接の講堂というではないですか。

 

東京ジャーミイとは、渋谷区代々木上原にある日本最大のイスラム教寺院。

大きくて、全体像写せない。日本じゃないみたい

 

 

新藤悦子さんの物語を読んで以来、文様の一つ一つが気になる!

 

以前、一度行ったことがあったのですが、そこだけ神聖な異空間で、大好きな場所だったんです。流れてくる祈りの歌の美しいこと。不思議な気持ちに包まれます。キリスト教の環境で育った私は、実は、なんとなくイスラム教にはいい印象を抱いていなかったのですが、留学時代に実際にムスリムの友だちがたくさんできたり、物語を通じて、いまではなんて素敵なんだろう、と思うようになりました。偏見がゆえに、この良さが分からなかっただなんて、なんて損してたんだろう、って思う。

 

今回の新刊『いのちの木のあるところ』もそんなモスクについての物語なんです。今なお多くの謎に包まれたトルコの世界遺産「ディヴリーの大モスクと治癒院」について書かれた壮大な歴史物語。すぐに一気読みしましたが、いろんな思いがふれて、なかなか感想がまとまらないので、まずはトークイベントの感想から。

 

今回のイベントは、挿絵を描いた佐竹美保さんの原画展もあり盛りだくさん!新藤さんの描く物語は、毎回どれも食べ物が美味しそう、という特徴があって食いしん坊の私たちを魅了してやまないんです。そして、今回はなんと併設のカフェで物語に出てくる料理の再現メニューが味わえるというので、ワクワクで向かいました。

見た目よりお腹ふくれる!

 

写真、見た目シンプルに見えるかもしれませんが、これがじんわりと優しく身体の中に入っていく感じの味で、すっっっごく美味しかったのです。物語に出てくるものが味わえるだなんて、感激ひとしお。物語の時代はセルジューク朝時代ですが、その頃のレシピが見つからなかったため、メインに関してはオスマン帝国時代のレシピから再現してくれだんだとか。鶏肉の煮込みは干しアンズも入っていて、素材の味がひとつひとついきていて、なんとも誠実な味。お米のプリンは……日本人には、うん、ちょっと甘すぎましたが(笑)。トークイベント自体はワンデイでしたが、原画展は8月21日まで開催されていて、この間の土日はこの限定メニューが提供されるそうです。ご興味のある方はぜひ!!!併設のHalalショップも珍しいものがいっぱい並んでいて楽しいですよ。

 

さて、おなかがいっぱいになったところで、いざトークイベントへ!世界遺産だというディヴリーの大モスクと治癒院の存在、この物語を読むまで全然知りませんでした。いやはや、すごい建物に志の高い人々。こんな場所、こんな人たちがいたんですねえ。

 

ディヴリー建築の第一人者のクヴァン先生という方が、モスクの装飾を手掛けた天才石工・フッレムシャーのことを「ガウディのような天才」と絶賛しているそうなのですが、まさにまさに。クヴァン先生いわく、フッレムシャーの魅力を伝えるにはもう小説にするしかないと考えたこともあったそうで、「想像したまえ。想像することでしか、フッレムシャーに近づけない」とおっしゃったそう。

 

そこで、トルコに造詣の深い新藤悦子さんが、想像に想像をふくらませて描いたのがこの物語。出合えてよかった。きっと歴史で習っても、それほどは感銘は受けなかったと思うんです。すごいな、とは思ってもきっとすぐに忘れてしまう。でも、物語をいう形で届けてもらったからこそ、心に残るんですよね、としみじみ。

 

想像って、単なる妄想とは違うんです。自分の願望を妄想するのとは違う。さまざまな資料、話のエピソードを聞きながら、想像を重ねて重ねて膨らませる。そうすると徐々に見えてくる。これを、人は“(物語が)降りてくる”というのかもしれません。自分でプロット(筋書)を練るというよりも、導かれる感じ?

“ここまで情熱をもってくれるのなら、この人に自分たちの物語を託そう”と過去に生きた人たちが思い、何らかの形で書き手に伝えてくれているような気がしてならないんです。だから、リアリティがあるんだなあ。

 

今回、さまざまな興味深いお話を聞くことができたのですが、中でも印象に残ったのは、“情熱って乗り移っていく、伝染していく”という新藤さんの言葉でした。

 

そうなんです。物語を読むだけでももちろん面白かったのですが、今回のお話を聞いたことで、会場中の人たちにも情熱が伝染したことは間違いなし。挿絵を描いた佐竹美保さんの情熱もすごかったです。資料の写真から、職人たちの思いを読み取り、人物像までも立ち上げていく。作家と画家の情熱によって、物語が立ち上がっていくさまを聞けたのは感動でした。こうやって、思いって受け継がれていくんですね。それにしても、佐竹美保さんが日本から一歩も出たことがないという話は驚きでした。想像の翼ってスゴイ。

 

閉塞感のあるいまの時代に、こういう物語を届けたい。私も情熱を伝染させる一人になりたいなあ、と改めて思った素敵な時間でした。

新藤悦子さん、佐竹美保さん、企画してくださった福音館書店さん、YUNUS EMRE ENSTITUSUさん、ありがとうございました!

この夏、あなたも川のとりこになる

『ほとばしる夏』(2008年)J.L.コンリー作 尾崎愛子訳 福音館書店

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今日の一冊は夏に読みたいコチラ!

なんか、夏っぽいものが読みたい、そう思ってあらすじとかも全く知らないまま借りてみたら、思いのほかよかった。思いのほかよかったときって、なんてラッキーなんだろう!って嬉しくなる。

 

『ほとばしる夏』あらすじ

ある日突然、父親が失踪してしまったアレン家の母子は、噂話から逃れ、母親がより良い収入を得るために、田舎から都市部へと引っ越す。しかし、ベットタウンに馴染めない姉弟は、偶然見つけた渓谷の丸木小屋でひと夏を過ごすことに。なぞの森林管理官との出会いを通じて、ますます川の魅力のとりこになった姉弟は、かけがえのない夏を過ごす。

 

これは、“家族の崩壊”物語でもあり、少女少年の“成長物語”でもあり、“自然賛歌”でもあり……さまざまなテーマが入り組んでいる物語。一つのテーマに絞りきれないこういう物語が好き。だって、実際の人生は一つのテーマになんて絞り切れないから。読む人によって、響くところが違うような物語が好きなんだなあ。

 

不穏な始まり方で、最初はちょっとわけが分からず、読みづらいです。でも、途中から一気に引き込まれます。姉弟の心情に、大人たちの事情に、自然の豊かさに。

 

子どもが読めば、純粋に自然の中での遊びが羨ましいと思うかもしれない。あるいは、思春期の複雑な心情に共感するのかも。

大人読むとですね、さまざまなところが刺さるんだなあ、これが。

 

経済的余裕や経済的自立ってやっぱり大事よね、とか、田舎と都会の教育格差とか、いくつになっても夢を追いかけることの大切さとわがままの違いとか。個人的には、いくつになっても遅すぎるということはないし、夢は追いかけたいと思っています。でも、これだけ子どもたちを傷つけるのならば、そのやり方はやっぱり制限されるよなあ、と。だからこそ!!!!若いうちから自分の望みを押し込めることなく、好きなように生きることの大切さも感じます。

 

もう一つ、大人が読むとなんだかグッときてしまうのが、不器用な生き方しかできなかった森林管理官(レンジャー)のヘンリーなんです。偏屈で、人嫌いで、自然しか愛せないとにかく不器用な人物。「マスを食うと野生が乗り移る」「川が、骨の髄までしみ通るんだ」という言葉は印象的だったなあ。

 

ヘンリーはカヌーの名手で、川で死にそうな目にあったとき、これからは人にやさしく生きると誓い、一年くらいトライしてみるんですね。でも、きつくて人への思いをあきらめてしまうのです。優しくしたくても、どうしたら優しくなれるのかがもはや分からない。そんな偏屈ヘンリーでも、誰かに受け継ぎたかったんだなあ。川への愛情だけは人一倍だったヘンリーのこと、子どもってよく見ています。かといって、変に彼をあがめるでもなく、人としてダメなところは冷静に見ている主人公のシャーナも好き。ああ、人間ってなんて愛おしいんだろう、醜い部分も含めて、ってしみじみ思う。

 

そして、アルゴンキン族。彼らの足跡しか登場しないのになんたる存在感!

人生には何度か、贈り物のような瞬間がある、とシャーナの祖父が言っていたのだけれど、ホントそう。そして、それらは持ち帰れないものなんですよね。シャーナにとっては、蜘蛛の巣にびっしりとついた美しい朝露だったり、ヘンリーが見せてくれたマスの思い出だったり。私にもあるけれど、内緒。この物語を通じて、リアナ川の神聖なものを垣間見させてもらって、体験させてもらって、もはやリアナ川は私にとっても思い入れの深いものとなってしまいました。思わず、古書をポチっ。

 

何のこっちゃあ、分からない???

ふふ、読んでのお楽しみですよ。

ラストの川下りの場面は圧倒されますよ!

いやあ、母親目線で読むと、心配でいてもたってもいられない夏ですけどね。嘘ついて信頼は裏切るし、身体的にも危険極まりないし......でも、こういうリスクと隣り合わせでしかできない成長ってあるからなあ。

 

実際に自然の中へ出かけられたらそれが一番だけれど、そうも行かない方には読書で追体験がおすすめ。この夏の一冊にいかがでしょう?

 

落ち着いて読書できないときの助っ人

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昨日は、三男が所属しているジュニアオーケストラのミニ演奏会でした。

会場では、ほかにもさまざまなグループの音楽の演奏があって、久々のミニお祭りで子どもたち大はしゃぎ!

お化け屋敷やヨーヨーすくいを楽しみました。

 

三男はチェロを弾いているのですが、チェロって人間の声に一番近い音域を持つ弦楽器なんですって。だから、聞くと落ち着く(三男が家で練習することは皆無ですが笑)。

 

というわけで、今日はチェロが出てくる絵本をご紹介。

セロ弾きのゴーシュ』はみなさんご存知だと思うので、それ以外をご紹介しますね。

 

『Oじいさんのチェロ』(2001年)ジェーン・カトラー作 グレッグ・コーチ絵 タケカワユキヒデ訳 あかね書房

まず、絵がとっても素敵。だからこそ、“戦争”という暗いテーマでも読み進めることができる気がします。戦争の被害者はいつだって、弱き者たち。そんな彼らの心をなぐさめてくれ、勇気や力をくれたのが、チェロの音色だったのです。音楽の美しさが、余計に戦争などという愚かなことを繰り返してはいけない、と感じさせてくれます。

 

『1000の風 1000のチェロ』(2000年)いせひでこ作・絵 偕成社

阪神淡路大震災復興支援チャリティー「1000人のチェロ・コンサート」のことを描いた物語。参加している人たちの背負っているもの、思いに胸がきゅっとなります。音楽って祈りなんだなあ。

 

『チェロの木』(2013年)いせひでこ作・絵 偕成社

こちらが、個人的には一番好き。すいこまれるような美しさの森の光景。森の中の光や空気を感じて、森の木を使って作られる楽器たち。森の風、川の音、小鳥たちのさえずりたちが楽器から聞こえてくる。職人ファンとしても読んでいて楽しいし、なにより“命”のつらなりや希望を感じる素敵な一冊なんです。見ているだけで、心が豊かになれるような気がします。

 

夏休みって、夏休みって、子どもたちが家にいて嬉しいけれど......結構母にとっては過酷月間ですよね。あれ、うちだけかな(笑)?なかなか落ち着いて本は読めない。そんなとき、手軽にすぐ読める絵本たちが、心を整えてくれるんです。落ち着いて読書できないときの助っ人。

 

みなさま、楽しい夏休みをば!

間違えたっていい

『ニ分間の冒険』(1991年)岡田淳作 太田大八絵 偕成社文庫

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昨日の選挙結果に、落ち込みます。なぜ芸能人が当選するのか、意味不明で毎回ガッカリする。ものすごーく、暗い気持ちになったけれど、どんな状況でもあきらめないのを教えてくれるのが、児童文学ではないか。最後は必ず希望なのが、児童文学ではないですか(←と、自分に言い聞かせてる)。ここからどうするか、自分にできることは何か、ですよね!

 

というわけで、今日の一冊は本が苦手な子でもスイスイ読めて夢中になれるコチラ。

長期休暇時以外は、ほとんど本を読まない我が家の小4三男からのなんか本探してリクエストは『ゆかいなホーマーくん』みたいな本!でした↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

ホーマーくんはゆかいな日常といった感じなので、ファンタジーは違うかな?と思いつつ、『二分間の冒険』をすすめてみたら、

 

かあちゃん!これや!俺っちの求めてたのは、まさにこういう物語やー!!!早く、かあちゃんも読んで。”

 

と言って興奮して読んでくれました。そして、

 

かあちゃん!二分間の冒険のこと歌ってる曲があるー!聞いてー”

 

と言ってきたのがコチラ↓

www.youtube.com

 

シンウルトラマンのテーマ曲ね。そうか、これ『二分間の冒険』のテーマ曲だったのか(笑)。

 

岡田淳さんの物語は学校舞台のものが多いので、世界観に入りやすい。それでいて、子どもたちが好きな冒険もので、剣、勇者、謎解きとくれば親しみやすいですよね。

 

主人公の6年生の悟は、「二分以内に戻ってこいよ」と先生に言われて体育館をぬけだし、保健室に向かう途中でふしぎな黒ネコに出会います。黒ネコにパラレルワールドのようなところへ連れていかれた悟は、元の世界に戻るために、“いちばんたしかなもの”を探し、竜と戦うことに......。リアルな世界では、たった二分間の出来事。でも、あちらの世界では長い長い冒険が始まるのです。

 

大人の私が読んで、ぐっときたのは、悟が何度か“これだ!これがたしかなものだ!”と思うものを見つけるのに、何度か間違う、っていうところなんです。人生ってこういうことちょくちょくあるよなあ、って。運命だと思ってた人が違ってたとか(笑)。違ったところで、“終わった……”と思うのではなく、じゃあなんだ?次となるところがいいな、って。

 

本当は、答えは自分で見つけなきゃいけないんだろうけれど、岡田さんの物語の中では友だちが答えを教えてくれる。他人と関わることでみえてくるものもある。協力することでみえてくることもある。それも、またなんかいいな、って。

 

ちょっと暗い気持ちになってきたときは、児童文学を読もうっと。