Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

いまさらムーミン

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講談社文庫 ムーミン童話限定カバー版 全9巻BOXセット

ムーミンが75周年だそう!

 

ムーミン、アニメで見てました。ところが、キャラクタービジネスが盛んだからなんとなく抵抗があったのか、原作には手を出していなかったんです。

シリーズものっていうのも、ハードルが高かった。

 

シュタイナーの7つの気質が、ムーミンのキャラクターたちに見事に当てはまっているという話を聞いて以来、気にはなってたんですけどね。なかなか踏み出せず……。

 

ところが、今回この新装版のクラシカルな表紙絵に、ズキュンと来てしまいまして!!!そうだ、私はもう大人じゃないか。つまり、大人買いできるじゃないか!!!と気づき、BOX大人買い。ああ、もう眺めてるだけで、幸せ~(←ミーハー笑)。

 

で、1巻から読んだかというと、そうではなく、7作目の『ムーミンパパ海へいく』からなぜか読み始めた私。パパと海に惹かれたんです。

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ムーミンパパ海へいく』(2011年)トーベ・ヤンソン作 小野寺百合子訳 講談社文庫


 そうしたら、読み始めた時期が夏の終わりで、偶然にも物語も夏の終わりから始まり、もうぴったりで。あっという間に、ムーミンの世界へ。

 

ああ、大好きでした!

これは、みなさんが夢中になるわけだわ。

 

これから読もうと思ってる方、1巻から読み始めなくても大丈夫でしたよ。

 

さて、今回の舞台は、おなじみのムーミン谷ではなく、海にポツンとある小島で、植物も生きるのが厳しい環境。住んでいるのは付き合いがキライな変わり者の漁師だけ。

 

パパの憧れに家族が振り回される形なのですが、パパのプライドを傷つけない配慮をしつつも、実は適当に流してるママも素敵だし、秘密を持ち始めるムーミンの成長もいい。

 

この巻は、他のムーミンの巻とはちょっと雰囲気が違うらしいのですが、子どもよりも大人のほうが感じ入るところが多いかもしれません。

 

美しい「うみうま」にも心奪われましたが、個人的にはみなから嫌われている氷の精モランの存在が心に残りました。

 

モランが触ったものはすぐ死んでしまうのです。モランが通った道は、植物が枯れてしまうから、植物たちもみんな怯えている。ムーミンママですら、モランとはかかわりを持たないようにとムーミンに伝えるくらいの嫌われ者。

 

そんなモランですが、明かりに憧れて近づいてくるのです。なんか、もう切なくて。モランは一体何を象徴しているんだろう、と考えてしまいます。

 

唯一ムーミンだけが、そんなモランが気になり、島にまで追っかけてきたモランに会いに夜家を抜け出すのです。カンテラの明かりを見せてあげたくて。

最後、灯油がなくなってしまって、カンテラを持たずにモランに会いに行ったムーミンですが、モランはカンテラのことなんて気にしなかったのです。全身でただただムーミンが会いに来てくれたことへの喜びを表現して、去っていくモラン。そしてね、去ったあとは、なんと凍っていなかったのです。もうね、何とも言えない感情で胸がいっぱいに。

 

モランはなぜ今まで死をもたらしていたんだろう?

なぜ気にかけてくれる人ができたら死をもたらさなくなったんだろう?

 

こうしてモランは私の中で、“問い”となったのでした。

 

さあて、次は『ムーミン谷の十一月』を読もうかな。

鳥から見えてくるものって?

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人間の憧れ、大空を羽ばたきたい!……高所恐怖症ですが(笑)

 

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先日のクーベルチップさんでの読書会のテーマが“鳥”だったので、今日は鳥が出てくる本をいくつかピックアップしてご紹介。

 

自分でも、酉年のときに“鳥”テーマで児童文学ピクニックを開催したことがあるのですが、いやあ、鳥の本ってホントに多いんです!

30冊以上あるので、今日はその中からかいつまんでご紹介。

 

テーマ縛りで読むって本当に面白いんです。

自分でも思いがけない発見があったりね。

“鳥”テーマは、実は最初はあんまり乗り気じゃなかったんですよね。リクエストがあったからやったようなもので。

ところが、ところが!何冊も読むと、共通したものが見え始めるんです。これが、面白い。

 

さて、鳥から見えてきたものとは……!?

答えは最後に書ますね。

 

 

『スノーグース』

間違いなく名作だけれど、今の自分には正直あまり響かなかった……なーんて書いたのですが、名作ってやっぱりスゴイ。だって、その後もずっと心の中に残っているんだもの。ジワジワときます。美しい物語です。↓

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『家なき鳥』

こちらは、あまり知られていないのですが(絶版ですしね)、大好きな一冊。インドの大地の香りがしてきます。芯が強いってこういうこと!逆境でも、たくましく生きる少女がまぶしい物語です。↓

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『ミサゴのくる谷』

現代っ子も感情移入できるものとしては、ぜひこちらをご紹介したい。GPSを使ってミサゴを追跡したり、まさに現代テクノロジーも駆使しています。自然保護、友情、いろんなテーマが絡み合って、問いをくれる物語。ラストは爽やかです。↓

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『赤い鳥の国へ』

リンドグレーンといえば『長くつしたのピッピ』をはじめ、楽しい物語の語り手のイメージですが、暗い悲しいお話も書いています。こちらの物語は、結末が賛否両論。読んだ方の感想お聞きしたいなあ。↓

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『三千と一羽がうたう卵の歌』

こちらは、大人が読むとちょっと物足りないのですが、安心して子どもに差し出せる物語。ニワトリの視点からの生命の話が人間中心でなくていいなあ、と。↓

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『ナゲキバト』

そして、こちらが個人的には鳥テーマで一番におススメしたい物語です。クリスマスの時期にも。人生やり直せることを教えてくれる深い物語です。↓

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まだまだたくさんあるのですが、今日はこの辺で。

 

■鳥が象徴するもの

 

さて、たくさんの鳥の物語を読んで見えてきたものはなんだったでしょう?

 

それは……

 

“自由”

 

でした。

大空をはばたく鳥たちは自由の象徴として描かれているんだな、って。

昔から、人は空を見上げて鳥たちに憧れてきたんだな、って。

 

また、鳥視点で見ると、物事を俯瞰でき、自然ともつながれます!ぜひ。 

つながる本屋:クーベルチップさん

 

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弘明寺にある子どもの本の店 クーベルチップさん

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今日はずーっと行ってみたかったところに、やっと行ってきました!

 

クーベルチップさん。それは、小さな子どもの本専門店。

 

横浜駅から市営地下鉄か京浜急行で約10分のところにある弘明寺(ぐみょうじ)。

商店街の真ん中に赤い橋が出てくるので、そこを左折(市営地下鉄から来た場合)すると、わりとすぐに出てきます。

 

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川沿いって何とも言えずいいですよねえ

小さな店内は、手作り感と温かみがあって、お店というよりも家庭文庫にお邪魔している気分。子どもの本好きの人が集まるので、初対面でも話が弾む、そんな嬉しい空間。

 

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絵本がズラリ

名前の由来が面白くて、PICTUREBOOK(絵本)を逆さから綴るとKOOBERUTCIP!なんと!その発想はなかった(笑)。

 

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岩波少年文庫フェアもやってました!

 

さて、今日は、そのクーベルチップさんが毎月開催している“小さな読書会”に参加してきました。今回のテーマは“鳥”。

 

以前自分でも“鳥”テーマで読書会を開催したことがあったので、候補はたくさんあったのですが、一つ選ぶとしたら……ということで、私が持って行ったのはコチラ↓

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そして、クーベルチップさんから連れ帰ってきたのはこの子たちです↓

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遊牧民の暮らし最高!

 

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小宮さんの新作は、子どもの本専門店でどうしても買いたかった

英国・カーネギー賞受賞作の『ディア ノーバディ』は、もう一般書店には並ばないそうです。でも、”消えてほしくない物語”と聞けば、そりゃ買いますって。読むのが楽しみ。

 

クーベルチップさんには、色々な作家さんが訪れたり、本当に魅力的なイベントをたくさんしていらっしゃるんです。人と人とのつながりが、この空間を作り上げているんだなあ、って。

 

“思い”のたくさんつまった、そんな本屋さんでした。

 

【営業時間】木~土曜日 11:00~18:00
日曜祝日 12:00~17:00

※原則 木曜~日曜の営業です(月~水の祝日は休業)
不定休あり・お問い合わせください

 

詳しいアクセスはこちら↓

 

ehonsuki.wordpress.com

 

 

 

 

次男の乱:運動会なんて大っキライ

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『一瞬の風になれ』(2009年)佐藤多佳子作 講談社文庫

 

スポーツの秋ですね。

取材力がすごい佐藤多佳子さんによる陸上部の物語全3巻は、陸上部出身の夫もおすすめ。大人になってからですが、これ読んで走り方参考にしたくらいだそうです。

さて、今日は本の紹介はここまで(早っ笑)。

 

だってスポーツ苦手なんです。はっきり言うと大っ嫌い。というわけで、世間のほとんどの家庭が楽しみにしているであろう運動会も、私と次男は親子で苦手(低学年三男は張り切ってますが)。

 

私自身は運動音痴だったので、運動会やマラソン大会の日が苦痛で苦痛でたまらなかったのですが、「親になると違うよー。やっぱり我が子ががんばってる姿見ると感動するよー」と友だちに言われて期待。でも、やっぱり苦痛で。

 

そんな中、ずいぶんと前から小6次男からは、今年の運動会は出ない宣言をされていました。さすが親子?いやいや、次男と私はちょっと状況が違うんです。

 

私は運動音痴で万年ビリ。でも、まじめというか休むなんて発想もなかったから、ただただ苦しかった思い出。将来は、学校の先生になってえらくなって、体育という科目を廃止してやる!と思っていました。なんて壮大にして長期計画(笑)。

 

一方で次男は運動神経がよく、体幹もいいと周囲から期待されちゃうタイプ。だから、やりたがらないことがあまり理解してもらえないんですね。サボってるとか、やる気のなさを怒られてしまう。

 

次男は、とにかく人前で発表したり、順位付けされることが苦手。

1/2成人式も休み(これ、私も疑問なので休むのに賛成したけど、先生の説得内容がひどくて学校側に失望した思い出)、少林寺(現在はやめてる)の試験日当日に布団から出てこない、などなど数々の前科を残す男。昨年は、リレーを走らなくてすむように、確信犯で長靴(!)履いていきましたからね(笑)。

 

そんな次男でしたが、ギリギリになって、最後の運動会にかけるクラスメートたちの熱い思いに負けたみたいです。6年間一クラスしかなくて、本当に絆が深いんです。みんなで作り上げたいというクラスメートたちの思いを裏切れない、って。

 

だけど、やっぱり人前で順位付けされる徒競走には納得がいかない。

そんな次男が出した、彼なりの方法は……!?

 

前代未聞!?

 

ま・さ・か・の……

 

談合(笑)!!!

 

いやね、おかしいなと思ったんです。次男の順番のときだけ、一斉にゴール前で速度を落とし、走りをそろえ、ほぼ差がない形でゴール。

 

後で聞いたら、紅組2人、白組1人だったので、白組の子を1位にさせて、紅組が2位3位の点数を足すと平等になるように決めたらしいです。自分が勝つための談合ではなく、平等にするための談合。

 

新しい時代到来!

 

誰も恥をかかないようにし、次男なりに平等を考え、話を持ち掛けたところ、一緒に走る子たちが賛同してくれたそう。

 

いや、これ正直複雑。だって、本気で走らせたかった親御さんからしたらいい迷惑だったでしょう?本気でやってる子たちに対して失礼という考え方もあるかもしれません(うちの夫が考えそうだな)。

 

だけど。

大人から言われたのではなく、自分たちで考えたことならば、こういう形もアリなのかな、と考えさせられてしまった。

 

だからといって、本気の子たちを冷めた目で見てるわけでも、否定してるわけでもなくて。本気のぶつかり合いのリレー戦はリレー戦で、見ていて目がしらが熱くなりましたし、次男もダンスは本気でやっていました。

 

競争自体が全てダメだとは思わない(むしろ、勉強における競争なんかは私は楽しんできたタイプ)。ただ、全員に同じ競争を強いる時代は終わったのかな、と。

 

得意な子たちや競争の場が活躍できる子たちもいる。それは、それでいいし、そうじゃない子はそうじゃないというありかたもいいのかな、って。

 

”自分との戦い”という大義名分もよく聞くけれど、人前で順位さらされるのが自分との戦い?昨年よりがんばりの成果が出るのは素敵なことだけれど、また別のみじめな思いする子を生み出すだけ。だけど、好きな分野でだったら、悔しい思いはバネになるのも事実。

 

だから、どちらもアリであってほしい。

そんな次男の発想に、時代が追いつくのはいつかな?

 

それまで母は必要であれば「すみませーん」と頭下げ続けるから、どうぞ今のまま自分の考えを貫いていってくれ、次男。

 

以上、運動会をめぐる次男の乱でした(笑)。

 

 

 

疲れたら優しい世界へ!

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『ヤービの深い秋』(2019年)梨木香歩作 福音館書店

 

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やっと大好きな秋が来たと思ったら、また夏日に戻ったり、何着たらいいか困ってしまう今日この頃です。というわけで、今日の一冊は秋テーマから。

 

『ヤービの深い秋』あらすじ

出会ったのは森の奥深く、きみの夢の底深く

秋はしだいに深まり、冬ごもりの支度におおいそがしのヤービたちは、博物学者であったグラン・グランパ・ヤービが、ややこし森でみつけたという、まぼろしのキノコ、ユメミダケを探す冒険に出発します。同じころ、フリースクールの生徒ギンドロと、ウタドリ先生たちも、ギンドロの見つけた不思議な手紙に導かれ、テーブル森林渓谷、ヤービたちのいうところのややこし森へと向かっていたのでした。ヤービシリーズ待望の第二弾。(出版社HPより転載)

 

『岸辺のヤービ』の続編です。前作を読まなくても楽しめる内容にはなっていますが、登場人物同士のつながりや、過去の出来事も出てくるので、やっぱりできるなら一作目から読んだほうがいいかもしれません。1作目↓

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相変わらず丁寧で優しい世界が広がっています。優しいといっても、胸がきゅっとなるような切なさや悲しみも描かれているんです。ええ、秋の気持ちが。

だけど、意地悪い人が出てきたり、人間(生き物)不信に陥るような出来事は一切出てこないんですね。大沢さかえさんの挿絵もこの世界観にあっていて、とっても素敵。

 

個人的には、パパ・ヤービがツボでした。誰よりも少年心を持ってワクワクしていて、だけど威厳を保とうとしていて、かわいいなあ(笑)。そして、自分が間違えたと思ったときは、素直に謝り、子どもたちの意見にも耳を傾ける。パパ・ヤービが念願の鳥の背中に乗って大空から下界を鳥瞰(俯瞰)したときに感じたこと、大きい人も小さな生き物も、みんなみんな同じ時を生きているという実感もとてもよかった。

 

もう一つ印象的だったのは、ウタドリ先生が、どういう子が秘密の手紙を見つけるかを、ちゃんと分かっていたところ。羽目板の後に手紙が隠れていることに気づくのは、やるせない気持ちをもってそれを眺めている子。毎日が充実してて、友だちとワイワイ楽しんでる子は次の行動に忙しくて、そんなことには気づかない。そうなんですよねえ!

 

個人的には、“孤立”は避けたいけれど、“孤独”自体は悪くないと思っていて。人は時として孤独にならないと見えてこない景色出会いがある。孤独にならないと、感じられないこと、自分自身を見つめなおせないことがある。ギンドロも複雑な家庭事情があり、孤独を感じていたけれど、友だちとワイワイしてたらこの冒険には出ていなかったと思うんです。

 

その他にも、虚言壁のあったトリカの成長も見どころ(?)ですし、何より食べ物が美味しそう!(←重要笑)

 

疲れている方、ヤービたちの優しい世界へ行ってみませんか?

 

 

なぜ周りが変わらなければならないのか

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『ケーキの切れない非行少年たち』(2019年)宮口幸治著 新潮社

 

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今日の一冊は、児童文学ではないのですが、児童つながりでぜひ色んな人に読んでもらいたい一冊。

 

『ケーキの切れない非行少年たち』あらすじ

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。(BOOKデータベースより転載)

 

 

一時期すごく話題になりましたよね。ベストセラー本は基本読まないひねくれ者なので(笑)、興味はあったもののなんとなく読んでいなかったら、お友だちが貸してくれました。

 

うちにはテレビがないので、マスコミがどのように紹介しているか分からないのですが、著者の意図とは違う感じで取り上げられていてとても残念、とそのお友だちが言っていました。本当は、“非行少年たちはこんなに困っていて、助けが必要な子たちなんだ”ということを伝えたいのに、“反省以前の知能が低い子たちなんですよ”という側面ばかりが取り上げられる、と。

 

確かに私自身も中身を読むまで、「へえ、非行少年たちはケーキもまともに等分できない、平等に分けるという感覚がないんだ!」くらいな印象をこのタイトルから受けていました。

 

違う、違う!!彼らこそ、助けが必要な子たちだったのです。

理解すべき、態度を変えるべきは、周りにいる私たちだったのです。

だからこそ、色んな人に読んでもらいたい。

犯罪を減らすために私たちにできること、あるんです!

 

とはいえ、Amazonのレビューでも書かれているように、確かに最後まで読めないと「非行に走るのは知能が低いからだ」と誤解されそうな編集です。だから、最後まで読んでほしいなあ。

 

個人的には、ああ、そうだったのか!とストンと落ちるところがいっぱいで。

 

身近に知的障害の人がいるのですが、見た目普通なので、親が理解しようとしないんですね、いまだに。

 

手に職をと思って親がすすめた洋裁の学校は続かず(この本読むと分かるのですが、不器用なんです。そもそも無理なんです)。

社会人になってからも、案の定仕事も続かず。生理現象もあって、頻繁にトイレに行かないといけないのですが、それがサボってると取られる(職場からも、親からも)。

 

何をやっても続かないダメな人という烙印。

親は、「自分たちを困らせようとしているのか!?」と逆ギレ。

 

違うのに。違うのに。

 

その人は、この本にあるように、先を見通すことができないことによる窃盗もしてしまいました。

 

その親はどう受け止めたか。自分たちに対する嫌がらせと受け止め、ますます反省を促し、結局その人は私が危惧していた通り、新興宗教に入ってしまいました。うん、でもその宗教がその人にとって救いだったのなら、それはそれでいいのだけれど、親はますます嫌がるという事態に。なんで、窃盗までしちゃったかなあ、と私も不思議だったのだけれど、そうか!先を想像する能力がなかったのか、とこの本読んで納得したのです。それだけでも、私にとって読む価値あったな。

 

というわけで、ぜひこの本をその当事者のご両親におすすめしたいのですが、テレビしか見ない、本を一切読まないのです......。さもありなん。

 

そう、困っている子の身内はそういう人が多いのではないか、ということがたやすく想像できるんです。

 

だから!

私たちが理解したいんですよね。変わるのは周りの方なんです。

具体的な方法も書いてあります。特に学校関係者の人たちに、ぜひ読んでもらいたい!

 

号泣が止まらなかったこちらとあわせて、ぜひどうぞ。

人を殺したりするほどの凶悪犯罪を犯した彼らが、なぜ自分たちのことを優しい人だ、というのか、この2冊を読むと理解できると思います。↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

 

新訳で楽しむ名作古典

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読書の秋到来!

 

すみません、今日は更新時刻大幅に遅れました💦

 

さて!秋の夜長には、名作が読みたくなるのは私だけ?

 

というわけで、今日は某紙面でご紹介した『新訳で楽しむ名作』の一部をこちらでもご紹介。ずーっと読み継がれたい古典名作でも、次の世代にも手渡すためには、やっぱり新訳が必要になってきたりもするんですよね。というわけで、今日は名作でも新訳のものを中心にご紹介しまーす。

 

 

【長くつしたのピッピ】

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長くつ下のピッピ』(2018年)アストリッド・リンドグレーン著 菱木晃子訳 岩波書店 

まずは、やっぱりみんな大好きピッピ!

最初新訳が出ると聞いたとき、えー、って思ったんですよね。必要ない気がしたから。

さらに、さらに、桜井誠さんの挿絵に思い入れがありすぎて、イングリッド・ヴァン・ニイマンの絵が受け入れられなかったんです。どれだけ桜井誠さんの挿絵が好きか、って黒姫山童話館まで原画を見に行っちゃったくらい。

 

しかーし!菱木晃子さんの新訳に関する講演を聞きに行き、その思いに触れ、今の子にはやっぱり新訳がいいのかな、と思い直しました。次の100年先まで手渡すために!ちなみにイングリッド・ヴァン・ニイマンの挿絵は、リンドグレーンのお気に入りなんだそうです。菱木さんの訳はとてもリズミカルで、声に出して読んでも楽しい。うちの子たちには全部読み聞かせました。

 

同じシリーズで、『名探偵カッレくん』や『やかまし村』も菱木さんの新訳で出ているのでぜひ。

 

 

【バレエシューズ】

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『バレエシューズ』(2019年)ノエル・ストレトフィールド著 朽木祥訳 福音館書店 

こちらは現代っこの小学校高学年女子たちに大人気でした!

日本語が美しい朽木さんが訳されるということなので、期待大でしたが、期待裏切られませんでした!

 

当時は珍しかった女性の自立を描いた古典名作を、訳で復刊したものです。リズムとテンポの良い新訳で、現代人にも響く一冊に。華やかなショービジネスの世界も見どころですよー。

 

 

 【ハックルベリー・フィンの冒険

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ハックルベリー・フィンの冒険』(2018年)マーク・トウェイン著 千葉茂樹訳 岩波書店

読んだことがない人でも、誰もが名前は知るハックですが、実は私、挫折組だったんです。あの大好きな村岡花子さんの訳でも読みづらくて......。

 

そんな中、初めて読み通せたのが、千葉茂樹さんによる新訳でした。ハックは訛りがひどくて、日本語訳だとそれが東北弁だったり、色々方言で表現されることが多いのですが、千葉さんはあえて割愛。さらに、差別表現も避けた新訳にしているため、引っかかりなく読み進めることができたんです。いやあ、面白かった!

 

 

 【楽しい川辺】

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『楽しい川辺』(2017年)ケネス・グレアム著 杉田七重訳 西村書店

100年以上読み継がれてきたイギリスの動物自然ファンタジーの名作。モグラ、川ネズミ、ヒキガエル……イギリスの豊かな田園に暮らすゆかいな動物たちの心躍る冒険物語が、ロバート・イングペンのオールカラー挿絵とともに、新訳・豪華愛蔵版で登場です。これは、手元に置いて、日々眺めたくなるような一冊で、プレゼントにもいいなあ、って。クリスマスにどうでしょう?

 

 

ジャングル・ブック

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ジャングル・ブック』(2015年)ラドヤード・キプリング著 三辺律子岩波書店

これまた、読んだことのない方でも誰もが名前は知ってる古典名作。

人間だけど、オオカミに育てられた少年モウグリが、ジャングルの掟を学び、成長していく物語ですね。映画化やアニメ化もされています。

 

実は、『ジャングル・ブック』として出ているほとんどのものが、モウグリのエピソードを抜粋したものなんだとか。モウグリ以外のエピソードも収録された完訳版が希望なら、山田蘭訳角川文庫版がおすすめ。他にもさまざまな新訳が出ているので読み比べも面白いかもしれませんね。三辺律子さんの訳、とても読みやすかったです!

 

まだまだ、色々あるのですが、眠くなってきたので(笑)今日はこの辺で......。