Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

✨感謝企画:あなたのためだけの3選✨

 

いつもブログ読んでいただき、ありがとうございます。

 

おかげさまで、Facebookのほうの

大人のための児童文学

ページのフォロワーさまが800名を超えました!その感謝として、『あなたのためだけの3選!』をさせていただきたいと思います♪

 

ふりかえってみると、埋もれている隠れた名作たちを発信したい!そんな熱い思いから、2016年よりブログを始めてはみたものの、途中何度も気持ちが折れそうに。

 

一般ウケするわけでもないニッチな分野、ネットの大海の中で誰が見つけて読んでくれるんだろう?児童文学好きの友だちに声掛けたら10名くらいはフォローしてくれるかな?そんな感じで、最初に30名くらいいったときは、とても嬉しかったのを覚えています。とはいえ、あまり数にこだわることなく、たった一人にでもその物語を必要としている人に届けばいいな、そんな気持ちで地道にコツコツと続けていました。みんな何かを始めるときは、ゼロからのスタートですもんね!

 

フォロワー数はあまり気にしませんでしたが、それよりも落ち込んだのは、素晴らしい物語たちの良さを言語化しきれない自分の文章力のなさ。それでも、分かりやすいと言ってくれる人がいたりして、読書の敷居を下げるのが私の役割なのかな、なんて思うようになってきました。THE☆開き直り(笑)。

 

そんな感じだったので、2021年に『あなたのためだけの選書』をしたときに、予想以上に全く知らない方々から希望がきて驚き、嬉しかったんですよね。正直、大変だったけど。

jidobungaku.hatenablog.com

 

私はついつい、あれもこれもとたくさん紹介してしまいがち(だって、この世は素敵な本であふれているんですもの)。なのですが、今回は3選に絞りたいと思います!

あんまり多く紹介されすぎると、どれを手に取っていいか分からない。紹介は1冊くらいでもいい、というお声もいただき。でも、1冊には絞り切れないので、せめて3冊は選ばせて~(笑)。

ご希望の方は、以下をお読みください。

 

①応募方法:FacebookInstagramのDMもしくはotsujishino☆gmail.com(☆を@に変えて下さい)まで。タイトルに「3選希望」と入れてください。

 

②いただいたメールアドレス宛に簡単な質問票をお送りするので、少しあなたのことを教えて下さい。それに沿って、心を込めて選書させていただきます。(無料です)

※質問票への返送がない場合は、選書は難しいのでご理解ください。

 

③3選をデータで送るか郵送がよいかお選びください。応募人数によっては、少しお時間いただくこともあるかもしれません。ご理解ください。

 

自分でいうのも何ですが、私は直観力はあるほうでして。この物語はこの方に!と本のほうが呼んでくれるというか。エネルギー注いで選書します!

 

あなたのためだけの3選に興味はあるけど面識ないし、コメント欄で交流したこともないしなあ......ともし遠慮されている方いたらご心配なく。前回もそうでしたが、面識ない方からのご希望があると“ああ、本当に画面の向こうに読者がいたんだ”と私も嬉しいんです。

 

いつも読んでくださり、ありがとうございます。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

想像力の欠如を自覚する

『ただ、見つめていた』(2017年)ジェイムズ・ハウ作 野沢佳織訳 徳間書店

※2月22日(木)・23日(金・祝)のイベントで“憧れの暮し”テーマに読書会開催します!詳細はコチラ↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

今日の一冊は、後味はそんなによくはないけれど、“外側から見えていることだけが全てじゃない”ということを実感できる一冊。

 

ロングセラーだという一文に惹かれて、図書館で手に取りました。短めですぐ読めます。家にお迎えして、何度も読み直したいか?と問われれば、うーん、なのだけれど、図書館(特に学校)には置いててほしいなあ、と思いました。

 

なぜか。

 

SNS時代の今、自分も含め、あまりにも“点”の情報だけで全容を決めつけがち。だから、たまにこういう物語に出合うと、ハッとするんです。登場人物それぞれの視点で話が変わるので、混乱する、分かりにくい、という声もあるようですが、人の心の中って、やっぱりその人の視点にならないと分からないからなあ。だから、図書館には置いてほしい。

 

舞台は、とある島の夏のビーチ。いつも同じ場所で、ただただ見つめているミステリアスな少女がいます。少女が眺めているのは、いつも優しく妹の世話をしている兄のいる幸せ家族、そして金髪イケメンのライフガードの青年。二人とも彼女の視線に気づいてはいたけれど、自分の抱える問題でいっぱいいっぱいで関わろうとはしていなかったところに、事件が起き……。という内容。

 

幸せそうに見えても、誰がどういう悩みを抱えているかなんて、見えないことも少なくない。他者への想像力がただでさえ欠如していて、点で判断して分かった気になりがちだからこそ、こういう物語を読みたいと思うのです。

 

で、”想像力の欠如”といえば、話は飛びますが......。

テレビドラマで実写化された漫画原作者が、脚本改変を巡るトラブルで命を絶った、という痛ましいニュースをご存知でしょうか。あまりドラマ見ないのに、珍しくTverでこのドラマは見ていて、トラブルの経緯を見守っていた中でのニュースだったので、もうショックでショックで。

 

日本にある色んな問題が、この事件に凝縮されているような気がして。クリエイターを軽んじる日本の風潮、大企業の体質及び構造問題、弱いものへの責任転嫁、問題をすりかえる風潮、忖度、コミュニケーションの断絶、SNS問題などなど。色んな記事を読んでは、考え、自分に問い続けています。

 

テレビ局側の血の通わないコメントには、本当にがっかりし、憤りすら覚えました。でも、危機管理的にはあれは正しいのだとか。正しい......それはときに冷酷ですね。

 

そもそも原作があるものの実写化には、こういったトラブルは珍しくないそう。トラブルが多いと知りつつ、それでもオリジナル脚本によるドラマではなく、漫画原作が企画を通りがちなのは、企画判断側にも想像力が欠如しているから、という記事を読み、ナルホドなあって思ったんです。時間もない、オリジナルの企画を発案されても、提案された側にはイメージしにくい。その点、漫画原作ものは読めばイメージが分かるし、人気も保証されている。視聴者側も作り手側にも想像力が著しく損なわれているから、既知のもの(原作もの)がドラマ化しやすい、と。

 

想像力の欠如

 

これなんですよね。想像力さえあれば、テレビ局側はあんなコメントは出さなかったはずだし、そもそもこのトラブル自体起こらなかった。いや、トラブルは起こったかもしれないけれど、少なくとも歩み寄りはできた。

 

まずは、“ああ、自分も想像力が欠如していた”と自覚するところから。だから、私の場合は本を読む。今日の一冊は、そんなことを自覚させてくれる物語でした。

 

ご案内:アートなイベントで読書会(修正あり)

江ノ電を窓から眺めながらの読書会

このたび2月22日(木)・23日(金・祝)に行われる“アートな暮し”をテーマにしたイベントに出店します。

 

素敵なアートな参加者たちの中で、私だけアート感なし。紛れ込んだ一般人感ハンパないですが……。

物語に出て来そうなお庭と館での開催ですので、ぜひ遊びにいらしてください。

脇には江ノ電がゴトゴト走るのどかな環境が、とおっても素敵なんです。

(※壊れやすいアンティークの多い会場側の都合で、お子様は不可なんだそう。ごめんなさい)

 

読書会以外にも、ゆる読書相談や、書籍・雑貨の販売もこじんまりとやる予定。

詳細はコチラ↓

 

 

以下は私担当のところのご案内になります↓

 

 

【読書会テーマ:憧れの暮し】

読書会ってなあに?聞いてるだけでもいいの?という初めての方も

マニアックなことが話したい!という方も

いずれも大歓迎です。

 

誰かと話すことで、自分でも見えていなかった自分の本当の望みに気づいたり。

口に出すことで、憧れの暮しに一歩近づいたりするから不思議なんです。

この読書会に参加することが、憧れの暮しへの一歩につながるかもしれません。

 

それに、一期一会の知らない人同士って、案外本音を話しやすいもの。

ホラ、旅先で出会った人とはいきなり深い話ができる、あの感じ。

小人数で、あなたの憧れの暮しについて語りあってみませんか?

以下の内容で2冊ご紹介ください。

 

①あなたの憧れ、目指したいのはどんな暮し?あなたの憧れが詰まった本をご紹介ください。写真集、絵本、物語、エッセイ、漫画、本のジャンルは何でも。

(持参するのが重ければ、表紙画像の紹介だけでも大丈夫)

 

②もし何の制約もないとしたら、してみたい暮しは?過去の世界、異世界無人島、宇宙なんでもあり。非現実的だっていい、あなたの“究極の憧れ暮しが描かれた本をご紹介ください。

 

■日時:2月22日(木)13:00―14:30

           2月23日(金・祝)10:30-12:30

 

■場所:garden&spaceくるくる 2F

       https://kurukuru2014.jimdofree.com/access/

 

■参加費:1,200円(デリドコさんのお茶菓子付)

※要事前予約(DMまたはotsujishino@gmail.comまで)

 

■持ち物:紹介する本2冊(上記参照)

 

■当日の流れ:軽く自己紹介→各自本の紹介(一人約5分)→紹介された本についてフリートーク→感想

 

※宗教やネットワークビジネス勧誘目的の方はお断りします

鎌倉観光もできるし、よかったら。

お待ちしております。

 

【カードセッション&ゆる読書相談】

※ごめんなさい。こちらは諸事情により中止します。

色々理由はあるのですが、自分の中にわきおこってきた”違和感”を大事にしたいと思います。もし、検討してくださっていた方がいたら、気軽に普通に相談してくださいね。

読書相談は無料でいつでもご相談にのります。

 

 

むなしくなったりするけれど

関東は初雪!まるで水墨画の世界

少ない雪でもミニミニ雪だるま~

今日は関東では初雪!もうもう子どもたちは大はしゃぎです。

 

私はといえば、先週右手指を骨折してしまい、利き手なのでほぼ何もできず……これをいいことに何もしてません(ニヤリ)。いや、本当のことをいうと、最初はスマホ三昧でした。左手指一本で操作できて便利だし、とにかく痛くて痛くて、最初の頃は思考停止で読書どころではなく、ぼーっとくだらない動画眺めているのが正直ラクだったのです。無意味にYouTube shortを見続けたり。スマホ見てるとあっという間に一日が終わる。『モモ』に出てくる時間泥棒のごとく。ダメ人間まっしぐら~で、夫に心配される始末でした。

 

でも、雪と読書ってあいますよね。ちょっとずつ痛みもおさまってきたので(全治2-3か月らしいけど)、雪降る今日はおうちでぬくぬく本を読みました(ダメ人間ちょい脱出!)。

 

というわけで、今日の一冊はこちらを再読しました。

『雪のひとひら』(2008年)ポール・ギャリコ作 矢川澄子訳 新潮文庫

ちなみに、装丁は、現在の文庫版より単行本のときの茶色ベースの地味なときのほうが個人的には好きでした。

 

以前読んだときは、学生時代、多分中高のとき。正直、この物語の良さが分からなかったんですよね。ふーん、って感じ。なぜ、母がいたくこの物語を気に入っていたのかも分からなかった。でも。いま、自分が当時の母の年齢になって再読してみたら……沁みます。女性の一生を雪のひとひらに例えた物語。特に終盤では涙が出てきました。

 

おおいなる創造主の手によって造られ、そのもとへ帰っていく私たち。

何の目的で私たちは造られ、何のために生きているのか。

 

分からないまま、それでもこの世のさまざまな美しいものに心から感動したり、つらい目にあったり、ときには無気力になったり。

 

臨終のときにあっても、雪のひとひらは虚しさに襲われるのです。

 

こうして死すべくして生まれ、無にかえるべくして長らえるにすぎないとすれば、感覚とは、正義とは、また美とは、はたして何ほどの意味をもつのか?(P.92)

 

それはそれは悲痛な叫びです。臨終のときまで、むなしい思いにとらわれていたけれど、それでもいままでの人生が走馬灯のように彼女をめぐったときに彼女は悟るのです。自分の全生涯が奉仕を目ざしてなされていたことを。創造主から片時も忘れられたり、見放されたりしていなかったことを。

 

最後のほうまで虚しさに襲われているからこそ、説得力があります。

そして、救いがあります。

 

雪が降ったからこそ、再読しようと思い立った。雪からの思いがけないプレゼント。

これぞ、大人のための児童文学でした。ぜひ。

あとがきにガツンとやられる

『緑の髪のパオリーノ』(2020年)ジャンニ・ロダーリ著 内田洋子訳 講談社文庫

基本、毎週月曜日の19時~21時頃に投稿しています♪

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今日の一冊は、荒井良二さんのカバー装画に惹かれて選んだ一冊。

朝起きたての眠たいとき、家事の合間、電車で、寝る前になどなど細切れ時間に楽しめる短編集です。

 

正直な感想書きますね。最初読み進めたときの感想は、

 

へっ!?ちょっと待って、ここで終わる!?(唐突すぎるでしょ笑)

あ、これ最後まで読めないかも……

 

でした。そもそも、ナンセンス文学ってものが苦手だったんです。

 

ところがですね、一つ一つのお話が短いものだから、もうちょっと読んでみようかな、あと1話、あと1話と読み進めていったら、気付いたらロダーリワールドにひき込まれていたみたいです。なんだこれ?ってなったり、ふふっ、ってなったりしながら、気付いたらなんだかちょっと心が軽くなったみたい。

 

そして、荒井良二さんのあとがきを読んで、ガツンと殴られたような気分になりました。

 

読むたびに、「あなたの頭は、石みたいに硬いですね?」と言われているようで、そのとおりです!と重い頭をつい垂れてしまう

 

と。えー!あんなに自由な発想の荒井良二さんの頭が石みたいに硬いなら、私の頭は……岩?化石???

 

荒井良二さんにとって、ロダーリの書く物語は、だいじなお守りのようなあめ玉で、いつも心のポケットに忍びこませているそうです。そうしているうちに彼の創作する石頭は少し溶けて、いい感じに柔らかくなるかもしれない、と。

 

色んな「〇〇ねばならない」から解放してくれるのが、こういうナンセンスな物語なのかもしれません。柔らかく軽やかに生きたいな、最近コチコチになってきたな、と思ったら私もロダーリを取り出そう!意味のないもの、むだなものが本当は大事なのかもしれない、世界をやわらかくするのかもしれない、と思う今日この頃です。

 

怪異がある方が健全!?

『博物館の少女 怪異研究事始め』(2021年)富安陽子著 偕成社

『博物館の少女 騒がしい幽霊』(2023年)富安陽子著 偕成社

 

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今日の一冊ならぬ二冊は、いますぐ上野に飛んでいきたくなるコチラ!

 

続編とともにワクワクと一気読み。ああ、これは第3巻、4巻とどんどん続きを出していただきたいなあ。アニメ化できそう。

 

富安陽子さんといえば、絵本の『まゆとおに』のやまんばシリーズが大好きだったのですが、実は長編はほとんど読んだことがなかったのです。児童文学好きの間で好評だったので、手に取ってみたところ、うんうん、面白かったです!

 

時代は、文明開化の明治16年の東京。着物メインのところに、ときどき洋装の人がいるような時代。

 

なんだろう、この時代特有のワクワクするようなエネルギーは。新しい時代の幕開けのエネルギーなんでしょうか。この時代といえば、大和和紀の『ヨコハマ物語』という漫画も私大好きで。人々がイキイキとしていて、町全体に活気があるような、そんな空気が伝わってくるんです。

 

主人公は、大阪で古物商を営む家に生まれた花岡イカル13歳。両親を亡くし、親戚のいる上野へと上京してくるところから物語は始まります。上京した先の夫婦は厳格で、静かな生活を強いられるから、まだ若くてエネルギーに満ち溢れてる関西人のイカルにはたまったもんじゃあない。ある日、用事を言いつけられて博物館を訪れたイカルは目利きの才を見込まれて、博物館の古蔵にある怪異研究所の手伝いをすることになるのです。そこで不思議な事件が起こり……。

 

博物館の館長や、怪異研究所の所長、イカルの親戚という設定の天才絵師河鍋暁斎とその娘でイカルと仲良しになるトヨ(暁辰)、山川捨松など実在の人物たちが多数登場することもあってか、とてもリアリティがあるんです。この物語をきっかけに、この時代のこと、この時代の人々のことをもっと知りたくなりました!なんなら、博物館もあまり興味なかったのに、いますぐにでも行きたいです。この物語をきっかけに、色んな興味が広がっていく。そこが、いいんですよねえ。

 

ところで、イカルがお世話になる先の厳しい夫妻(こちらは架空)、妻の登勢(とせ)は、厳しい態度は変えられないけれど、言動のところどころにイカルを思いやる気持ちがときどき(本当にときどきだけど笑)垣間見られ、『赤毛のアン』のマリラや、『えんの松原』の伴内侍を彷彿させる。好き。

 

そして、怪異なので当然ミステリー要素も満載。実は、私ミステリーものが大の大の苦手で、安心して読むために結論から先に読むくらいな人だったので、この手の物語は避ける傾向に。が、富安さんの物語は大好きでした。主人公の花岡イカルの関西人らしい明るさ、屈託のなさがいいんですよねえ。だから、怪異に包まれていても、全体的に物語が明るい。それに、全てが怪異なわけじゃなくて、そこには怪異現象と見せかけた詐欺もあるわけで。そこもイカルは見抜くわけです。本人的には見抜くってほど大げさなものではなくて、ただ観察眼がすぐれているから気づくっていう感じなのだけれど。

 

怪異現象が当たり前に存在する世界。なんだか、そのほうが健康的な気がするのです。『えんの松原』にも書かれていたなあ。怨霊が忘れらた世界のほうがこわい、って。

そして、こうやって物語に描いてもらうこと、誰かに思い出してもらう、知ってもらうことで、そういう霊たちは成仏?できるような気がしてくるのです。

 

何か面白いもの読みたいなと思って手に取ったら、なんだか前向きになる気持ちまでもらえちゃった。そんな物語でした。健全な(笑)怪異。逆に怪異が当たり前にあることが、世の中を健全にする?

どんどん続編出していってもらいたいです。

ざわつく心に平和をもたらすブックリスト

年末訪れた清里 自然の中はやっぱり気持ちいい!

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気付けば1月も半ばです(びっくり!)

 

すっかりご無沙汰してしまいました。今年は年始から心痛めることが続いて、なんだか書けませんでした。色んな思いが交錯し……でも、それはまた別の機会に。まだまだ心がざわついてる方も多いと思うので、今日は不定期掲載している某紙に12月に紹介したブックリストをここでも再紹介させてください。

 

実は、先方からの依頼内容は、「こんなご時世なので“戦争と平和”でどうでしょう?」というものでした。でも、そのテーマは過去にも既に掲載済みだったのと、年末に暗い気分になりたくないよなあ。そもそも平和って?というところからちょっと考えこんでしまいまったのです。

 

みな頭では世界平和が大事だって思ってるけど、もし自分自身が苦境のさなかにあったら……正直それどころじゃないですよね。まずは自分が平和でなければ、周りの正直平和なんて願えない、というかそんな余裕ない。そして、心がざわつく理由も人それぞれで。だから、こういうタイトルにさせてもらいました。

 

届けたい ざわつく心に平和を

 

紙面での紹介の難しさって、ブログと違って文字数がかなり限られてることなんですよね。タイトルに込めた思いを説明することもできないし、紹介文も字数が限られてる。そんな中でどこまで届けられるかな、って歯がゆい気持ちはつきまとうけれど、一人でもいいから、必要としている人に届くといいなという祈りをこめて。

 

無謀なのはわかってるんです。だって、同じカテゴリーの悩みですら人それぞれで、その人に合う本ってそれぞれ違うから。それでも。それでもね、一人にでも届けばいいかなあ、って。紹介したのは以下のとおり↓

 

 

①『虫眼とアニ眼』(2008年)養老孟司宮崎駿著 新潮文庫 

虫が大好きな養老孟司とアニメ界の巨匠宮崎駿が、宮﨑作品を通して自然と人間について考え、若者や子どもへの思いを前向きに語ったもの。心がざわつくのは、人間関係ばかりに焦点を当てているからかも。たまには、人間以外の世界に触れよう。“お先真っ暗でいいじゃない。だから、人生は面白い”と養老氏。感性の育み方が興味深いんです。

 

『共感革命: 社交する人類の進化と未来』(2023年)山極壽一著 河出新書 

山極氏は、京大元総長だった霊長類学者で総合地球環境学研究所所長。人類が直面する問題や課題、未来を、類人猿の「社会」の成り立ちを振り返りながら解説。

 

戦争や環境問題などの危機を前に、絶望的な気持ちになるときに。「共感革命」という切り口から長い長い歴史を振り返ると、違う視点で人類の本性が見えてくるんです。新しい未来への希望が湧いてくる一冊。

 

これ、何がいいって、山極さんは若者たちを信頼しているところなんですよねえ。とかく子どもたちの未来を不安視したり警鐘を鳴らすものが多い中で、ああ、この人は子どもたちの可能性を信じてるんだな、ってなんだか嬉しくなりました。

 

③『死は存在しない:最先端量子科学が示す新たな仮説』(2022年)田坂広志著 光文社新書 

死後我々はどうなるのか。輪廻転生、前世記憶などを、最先端の量子科学の知見から仮説をたて、読み解く。

 

死への不安から心がざわつくものの、宗教にもスピリチュアル系にも抵抗がある方へ。量子科学の“ゼロ・ポイント・フィールド”仮説が証明されれば、真実は一つと実感できる。一読の価値ありの個人的には納得の一冊でした!

 

④『わたしはあかねこ(20011) サトシン作 西村敏雄絵 文渓堂

 家族全員白か黒の毛色の中、ひとりだけ赤毛のあかねこ。そのままの自分を受け入れてもらえないあかねこは、家族の元を去り……。

 

そのままの自分を受け入れてもらえず苦しんでいる人に。環境を変えることで心に平和が訪れることを、あかねこが教えてくれます。うん、石の上にも三年とか我慢とかもういいから、環境変えてみるのもいい。よかれと思って子どもを変えようとする困った大人にも(むしろ、そちらの方に)ぜひ。

 

ブッダとシッタカブッダ』(2003年)小泉吉宏著 KADOKAWA

漫画と侮るなかれ。悩めるブタの前に現れるシッタカブッダが、人生の幸福、不幸、悩みの正体について易しい言葉で語る。シリーズの1作目(個人的には3作目が特に響いた)。

 

本当に大切なことはいつだってシンプルかつ深い。人生の根源的な問いを、4コマ漫画で描く。心の運転の仕方を知ることにより、あらゆる思い込みや偏見から解き放ってくれる傑作。小学生にも響きましたよ!

 

⑥『さみしい夜にはペンを持て』(2023年)古賀史健著 ポプラ社 

日記を書くことで自己と対話する方法を、中学生の主人公タコジローの物語で描く。自分を好きになれない人たちへの救いの書。

 

書くことで、心のざわつきを取りのぞこう。そう言われても、何をどう書いていいか分からない人へ。答えではなく、答えの出し方を、具体的かつ一歩踏み込んだところまで教えてくれる一冊。

 

⑦『楽しいムーミン一家』(2011年)トーベ・ヤンソン著 山室静訳 講談社文庫

 

ムーミンシリーズ第3作。ムーミンが発見した黒い帽子は、飛行おにの落とした魔法の帽子で、次々と事件が起こり……。

 

暗いニュース続きで、塞ぎがちな気分に風穴をあけてくれるのが児童文学。読めば、欠けていた何かが満たされ、内側が整う不思議な感覚に。児童文学には、必ず救いと希望がある。もっと物語を。

 

はい、最後に児童文学持ってきました!

ムーミンだけじゃない。本当は、もっともっと児童文学を、物語をおすすめしたいなあ。抱えている悩みに直接的には関係ないような物語がいいんです。直接的だとハウツーに陥りがちで、一見答えをもらったかのような気にはなるけど、本当に心が晴れたり、抱えて生きていこうと思えるのって、ハウツーじゃないから。ハウツーは受け身になりがちだから。

 

だからね、児童文学ではないけれど、こちらの本を読んだときも、そうそうそうそう!って一人興奮して頷いたんです笑。↓

 

『お探しものは図書室まで』(2023年)青山美智子 ポプラ文庫

この物語では、さまざまな悩みを抱え、人生に行き詰った登場人物たちがとある町の図書室を訪れます(図書館ではなく、図書室というこじんまりとした空間、司書との距離感がポイント)。そして、そこには無愛想な司書さんがいて、彼女がくれるブックリストの最後に必ず関係ないような“なんでこの本?”っていうような本があるのです。

 

“なんでコレ?”

その引っかかりが、自分の中から“問い”を引き出してくれるのかも。それぞれ自分で問いをたて、自分で道を見つけていくんですよねえ。この司書さんが余計なアドバイスとかしないのがいいんだな。

 

それでは、こんなスロースターターな私ですが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。