Pocket Garden ~今日の一冊~

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魔法ファンタジーを解き明かす




『魔法ファンタジーの世界』脇明子著 岩波新書


ハロウィンがあったせいか、頭の中に色んな魔法ファンタジー系の本が渦巻いています。そんなわけで、今日は私が魔法ファンタジーの謎が解けてスッキリした本をご紹介♪
主張が主観的すぎる、と何かと反感を買うことも多い脇明子さん。私自身は彼女の考え方に近いからか、好きなんです。まあ、決めつけちゃ反感買いますよね。色んな考え方があっていいんだと思います。でも、やっぱり主観を主張しても別にいいんじゃないかな~。じゃないと、当たり障りのない無難な意見ばかりになって、それってツマラナイもの。

この『魔法ファンタジーの世界』は私が個人的に感じていたご都合主義の現代ファンタジーものへの違和感がズバッと述べられていて、“そうか、そうかナルホド”と実に爽快だったんです。でも、そういうファンタジーに違和感覚えない人にとっては、自分が否定された気分にきっとなっちゃうんでしょうね。ともあれ、一読の価値アリです。

欲望や願望をかなえる魔法が本当にすばらしく思えるのは、それがその人物の心の底から出てきたもの、その人物を本来の姿へと花開かせるものである場合だけ・・・

最近のファンタジー的読みもの、アニメ、ゲームなどは「しかえし」や「こらしめ」の欲望を魔法で満たすものが目立ち、人間観や世界観が冷たいものが多い・・・

古典的ファンタジーに出てくるのは、“敵”というより“障害物”。“悪”とは少し違う・・・


などなど、ファンタジーの魅力の秘密や、また、そこに潜む危険性について迫っています。

さらに、読んだ当時“お~、シラナカッタよ”、と思ったのは、『昔話』という元々人の輪の中で語りを聞いて楽しんだものから、『読書』という個人的な営みへは、自動的には移行しないということ。自分は本好きで、自然に移行したから、みんなそんな感じなのかと思ってたー!“感情移入”を鍵として、具体的にどんな本がその移行への橋渡しになるかが、子どものタイプ別にも述べられていて、自然に移行しないタイプの我が子たちへ、とても参考になりました。

一口に魔法といっても、色んな質がある、そんなこと頭の片隅に置いておいてもいいのかも。