Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

退屈な日々に奇想天外な物語を

『ペッパー・ルーと死の天使』(2012年)ジェラルディン・マコックラン作 金原瑞人訳 佐竹美保絵 偕成社

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そんなに重たくなくて、さらっと楽しいお話、奇想天外なお話が読みたいときに差し出したい一冊。佐竹美保さんによる挿絵もいい!

結構ハチャメチャでドタバタです笑。なので読んでいて疲れる人もいるかもしれません。ですが、これぞ本でしか、物語でしかできない表現よね!って思うようなストーリーで、私は面白かったです。

主人公のペッパーが14歳までに死ぬ運命だと告げられ、死の天使から逃げようとする冒険物語。とっても非現実的なのがいい。

この主人公、ある意味なかなかに賢いと思うんですよ。例えば、新聞社にもぐりこんで、そこで職を得たいと思ったら、質問に質問で切り返す記者の話し方をちょっとずつつかみ、自分も実践するんです。

 

”いまはだれのところで仕事している?”
”あなたのところでしょう?”

といった具合に仕事ゲット。

でも、根が優しくて素直で多分性善説で生きてるからか、意地悪なおばさんから言われた呪いを信じてしまうんです(賢さはどこへ?)。で、逃げ続ける羽目になる。

追ってくる死の天使から逃げまくているので、場所も次次と変わり、展開はめまぐるしいです。退屈してる方、ぜひ読んでみてくださいね。

ああ、いいなあと思ったのは、新聞社で、うその記事を創作しちゃうエピソード。

 

小さなゆらめく火をともすように、ペッパーはひとつひとつの記事で火をともして、『南の星新聞』の読者の日々を明るくしたかった。けっきょくのところ、世界はみんながおそれているほどひどい場所でも、心ぼそい場所でも、怒りにみちた場所でも、生きづらい場所でも、おっかない場所でもないと思ってほしかった。だれもが世界をこわがっている。(P.117)

 

そして、ペッパーの書くうそ記事で売上があがる南の星新聞なのでした。

みんなの幸せを願うペッパー、そしてそのために考える発想がなんともいえず子どもらしくて、ああこういう感覚忘れてたなあ、ってはっとさせられます。

 

あるときペッパーはすごく怖い目にあり、怖がることが男らしくないと恥ずかしそうにうつむくんですね。そのとき、いや、それでいい、と言われた場面も印象的でした。

 

世間で起こるこまったことの大半は、男が男らしくしようとして起こるものです。

ときどきは女性的にもなってみるべきですよ。そうすれば、世の中もすこしはおだやかになるでしょう(P.370)

 

まさにそう!

 

思い込みから解放されて、自分の人生を生き始めるラストもよかったです。
疲れてるとき、案外こんな物語に救われたりするのかもしれません。