Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

ただただ楽しい気分になりたいときに

『かかしと召し使い』(2006年)フィリップ・プルマン作 金原瑞人訳 理論社

 

毎週月曜日の19時頃投稿しています♪

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年末頃、私はちょっと疲れていました。行事続きのうえ、暗い・重い・呆れるニュースを立て続けに目にしてしまい、どよーん。ともすると、未来への希望が感じられなくなって、この国どうなっちゃうんだろう、子どもたちの未来は、って暗い気分に陥っていました(ずっとじゃないけど)。

 

こういう気分のときに、何か児童文学を読もうと思っても、重たい文学はなんか読みたくなかったんです。ただただ楽しい、気分を明るくしてくれる、そういうのが読みたいなー、って図書館の書棚を見てまわっていました。そうしたら、目に飛び込んできたのが今日の一冊。本って不思議で、大体中身見なくても、自分の望むような内容のものが“ここだよ!”って呼びかけてくれるんですよね、あちらから。あとがきを読んでみると、明るい気分になりたい、気持ちを軽くしたかった私にドンピシャの内容かも!とさっそく借りてみました。

 

いやあ、面白かった!そう単純に言える幸せ。

 

分野でいうとナンセンス文学。実は、私ナンセンス文学って苦手なんです。でも、今回初めて救われるといったらおおげさだけど、こういうのいいなあ、って思いました。肩の力がふっと抜けて、気持ちが軽くなった。

 

内容は、かかし卿とその召使になった貧しい少年のドタバタ冒険記。まさに珍道中。そんなことってあるぅ~笑???の連続。このかかしがね、ジェントルマン気取っているけど、相当まぬけで、でも憎めないんです。頭はカブでできているのですが、英語では、カブって頭からっぽっていう意味なんですって。一方、少年は賢い。賢いんですけど、かかしのことをバカにした態度を取らないところがいいんだなあ。バカだと思うことはあるけれど(だって、笑っちゃうくらいハチャメチャで思い込んだら猛突進なんですもん)、でも見下した態度はとらないのは、少年が己の立場をわきまえているから。頭の回転ははやく、素直で必要以上の欲を出さないから幸せになれる。そんなところもね、説教臭くなく、でも実は大切なことを教えてくれたりもする物語なんです。

 

作者はライラの冒険シリーズを書いた人で、この『かかしと召使い』は中学年向け。あとがきで、訳者の金原瑞人さんも、この物語はいわゆる考えさせられる物語じゃないけど、実は深いのかも、とおっしゃってます。うん、なんだろう。色んなことがちっぽけに感じてくるから不思議。

 

重たいの読みたくない。気持ちが軽くなるようなものが読みたい、という方はぜひ!

とっても楽しい物語です。