Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

三百年前の世界へいざ!

『十三階の海賊たち』(1997年)シド・フライシュマン作 谷口由美子訳 偕成社

今日の一冊は、本が苦手な人でも楽しめそうなコチラ!

 

日本では4という数字が「死」を連想させるから駐車場などに使われなかったりしますが、欧米では13が不吉な数字で、13番地や13階はないそうです。

 

そういえば、私13日生まれなんですけど、ちょうど『13日の金曜日』というホラー映画が有名だった時期の13日に金曜日が当たってしまって、小学生の頃、からかわれて泣いた覚えがあります。いまでは、13は私が生まれた日にちの数字なんだからラッキーナンバー☆と思うくらい、メンタル図太くなりました笑。

 

さて、今回の物語は、そんな存在するはずのない13階に謎の人物から呼び出されるというタイムトラベルもの。

 

両親を事故で亡くした主人公のバディは年の離れた姉と2人暮らしなのですが、両親の残した借金で家を売り出しに出すほどの状況。姉は大学を卒業したての新米弁護士で、敏腕なのですが弱者の味方なので、お金にはならないんです。

 

そんなある日、バディは自分の先祖に紅海の財宝を隠し持った海賊クラックストーン船長がいると知るのです。

 

そして、謎の人物から呼び出されたとある建物の13階のエレベーターの扉を開けると、なんとそこは三百年前の世界。もうコレ、間違いなくワクワクしますよね。自分の先祖に海賊!宝!いざ冒険の旅へー!

 

コメディというほどではないのですが、どこかコミカルでユーモアがあって、そこが安心して読めるんですよね。危険がいっぱいで暴力的な要素のある冒険ものは、実は個人的には苦手。ですが、この物語は軽さがあったので、よかったなあ。物語の世界へこちらも一緒にトラベルできちゃう。

 

ところで、三百年前なので、当然ですが、時代違えば常識も違う。安息日には法律でキスしちゃいけないとか、走っちゃいけないとか、今では考えられないようなことが法律で定められていて、そんなことで逮捕されちゃう時代なんです。コミカルに描かれてるから笑っちゃうけど、いや、ホントこの時代に生まれてなくてよかった。

 

魔女裁判も史実に基づいて描かれています。みな誰かを先に悪者にすることで、自分は助かろうとする……同調圧力のある現代も、形は違えどこういうのあるんじゃないか、ってハッとさせられます。単純にエンターテイメントとしても楽しく読めるけれど、それだけに終わらない何かがある。

 

ラストも、ふふふ、となりますよ。

ああ、面白かった!そんな満足感が得られる物語です。

 

シド・フライシュマンは『かかし』という絵本も秀逸なので、ぜひ。絵本なのに、これは文学だ!って感動した一冊です。ちなみに息子のポール・フライシュマンも児童文学作家。息子の方もこれまたいい物語がたくさんです。