Pocket Garden ~今日の一冊~

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短いけれど珠玉

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『夕ごはんまでの五分間』(1996年)イヴァ・プロハースコヴァー著 平野卿子訳 偕成社

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今日の一冊は、思いがけずよかったコチラ!

 

全然情報なしに出合って、思いがけず良かった物語に出合えたときって、うわあと嬉しくなります。今日の物語は、短編というのか、文字多めの絵本というのかな。大きな字でたったの60ページなのですが、心の深いところに届くとっても素敵な物語でした。

 

もうね、出だしから心つかまれました。

 

冬の一日ってほんとうにみじかい。まるでメリーゴーラウンドにのっているみたいです。お日さまが屋根のむこうにしずんだかと思うと、まってましたとばかり、夕ぐれが部屋のなかに流れこんできました。夕闇はぎょろ目の大きな青いおさかな。にらまれたらさいご、だれでもたちまち目がとろんとしてしまいます。(P.3)

 

こんな風に始まります。

そこから夕飯ができるまでの5分間、主人公の女の子バベタはおとうさんに、お話をねだるんです。たいせつな話を。

 

そう、それはバベタの誕生をめぐる物語。何回も聞いているのでしょう、バベタはそれでも聞きたいのです。なんて、なんて優しくて愛しい物語なんでしょう。涙してしまいました。

 

バベタとお父さんは血がつながっていません。お母さんと出会ったときは、お母さんのおなかの中にはバベタがいたのですが、血のつながったお父さんとは別れることに。

 

悲しむお母さんを前に、近所の紳士マトハラさんはこう言います。

 

世の中に、父親はひとりしかいませんかなあ?父親なんて、山ほどいますがなあ。(P.15)

 

そして、バベタはみんなに喜んで迎え入れられるんです。

 

ところが、今度はバベタの目が見えないことが発覚。でもね、バベタは違う方法で、ちゃーんと見えていたんです、すべて。

 

家族ってなんでしょうね?血のつながりって。

 

心の奥深くがじーんとしました。

私の周りには養子を育てている人も何人かいるし、うちも児童養護施設の子のホームステイをしていた関係で、血のつながりについて考えさせられる機会が多かったせいか、この物語は、とてもとても響きました。

 

こんなに短い物語なのに。表現も詩的で、染み入る。大切にしたい物語です。