Pocket Garden ~今日の一冊~

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現実世界に疲れたら

ロドリゴ・ラウバインと従者クニルプス』(2022年)ミヒャエル・エンデ、ヴィーラント・フロイント作 木本栄訳 小学館

毎週月曜日の19時~21時頃に投稿しています♪

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今日の一冊は、あの名作『はてしない物語』や『モモ』を書いたエンデが第三章まで書き途中で、この世を去ってしまった幻の物語。それに二十余年後にエンデ作品が大好きだった作家ヴィーラント・フロイントによって続きが書かれ、完成した物語なんです。エンデの世界観の継承。

 

装丁がこれまたよくて、Junaidaさんの表紙絵と挿絵がとおってもいい!!!原書も検索してみたけれど、断然日本版が好き。こういうのは本ならではなんですよねえ。持っていて嬉しくなるし、贈り物にもぴったりの一冊でした。

 

さて、エンデは哲学的で難解なものから、『モモ』や『ジムボタンの冒険』のように小学生でも読めるようなものまで幅広いのですが、このロドリゴ・ラウバインは小学校中学年から楽しめそう。THE☆物語といった感じで、現実味がないところがいい(現実味はなくとも真実味はあります)。メルヘンの世界。ドイツでは演劇としても好まれているそうです。うん、小さいときにこういう物語を読んだ(読んでもらった)体験があるかないかでは、大きな違いがある気がします。

 

実はこのとき、同時並行で伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』を読んでいたんです(この感想は来週書きますね)。『逆ソクラテス』はこれはこれで面白かったのですが、現実味がありすぎて、だんだん息苦しくなってきてしまって。合間にロドリゴ・ラウバイン読むとホッとしたんです。

 

そんなロドリゴ・ラウバイン。どんな内容かというと、舞台は中世。ある嵐の日、人形劇団の家族の馬車から一人息子のクニルプスが行方不明になります。必死で探す両親。でも、実はクニルプスは自分から家出をしたのであって、向かうは悪党で誰もが恐れる盗賊騎士ロドリゴ・ラウバインの城。クニルプスは従者になりたかったんです。でも、実は彼は悪党を演じてるだけで、ものすごい臆病。そこへ、お姫さま誘拐事件が起きて......。「悪」とは「恐れ」とは。最後は、悪者以外は、それぞれが自分らしい生き方を見つけるハッピーエンドなのでご安心を!

 

まあ、登場人物たちの個性豊かなこと!ずる賢い魔術師や竜も出てきたり。既に演劇的です。でも、重たくなくて、どこかコミカルなのも読みやすい。私は、はっきり物言い、見抜く目のあるお姫さまが好きだったなあ。

 

こういう物語を今の子たちに(大人にも)もっともっと読んでもらいたいなあ。物語、メルヘンでしか味わえない体験。ぜひ。