毎週月曜日の19時~21時頃に投稿しています♪
Facebook『大人の児童文学』ページもよかったら
ひっそりInstagramも気まぐれ更新
密かに中国の女性の間だけで伝承されてきた、女書(ニュウシェ)って聞いたことありますか?私は、今日の一冊を通じて、初めて知りました。男性たちには秘密だったこともあり、長い歴史がありながら、再発見されて、学術的に研究されはじめたのは、なんと1982年なんですって!なんと、古い文字なのに再発見が自分が生まれたあとだなんて、なんか不思議。
とおっても素敵な文字なんです。まるで草花が天から降ってくるような、そんな文字で、表紙見返しにあり、また出版社HPからも見ることができます↓
昨日の私には、なんだか社会派の内容はちょっと重たくて(現実で直面してるので)、安心して楽しめる児童文学が読みたいな、と思って図書館へ。ああ、そうだ、まはら三桃さんがいた!と目に飛び込んできたのは、まはら三桃の本たちでした。以前読んだときに、とっても読みやすく、なおかつ人への優しいまなざしにあふれてたのが印象に残ってたんです。
で、今回手にしたのが、『思いはいのり、言葉はつばさ』。表紙絵がどう見ても、中国っぽくて、ん?日本の作家さんなのに?と引っかかったのです。
物語の舞台は、中国の湖南省。友だちジュアヌが見せてくれた花帯の刺繍、そしてハンカチに書かれていた見たこともないきれない模様のような文字(女書)に魅せられた主人公チャオミンは、あふれかえりそうな憧れとともに刺繍と文字を習いにいきます。
でもね、チャオミンって不器用なんです。いやん、全日本不器用連盟所属のワタクシ、急に親近感(笑)。
文字とともに、もう一つ、チャオミンが憧れたのが結交姉妹(けっこうしまい)といって、仲良くなった相手と姉妹の絆で結ばれるというもの。ああ、なんか懐かしい思いがあふれてきました。私も小学生低学年の頃、高学年のきれいな先輩に憧れて憧れたことがあったなあ、って。
時間はかかるものの、チャオミンは女書が書けるようになってきます。女書は漢族のもの。でも、あるときなぜかハン族という山の民である自分の母親も書けることを知るんです。さあ、お母さんはなぜ女書が書けたのでしょう?すごい秘密というほどではないのですが、ちょっとグッときました。
言葉は、自分を自由にしてくれるんですよね。誰かに言葉を伝えたいって、祈りを伝えたいってことなんですよね。相手の幸せを祈る気持ち。
出版社は、”SNS等を使って簡単に気持ちをつたえることのできる今の子どもたちに、想いを言葉にする喜びを感じてもらえたら嬉しいです。”とコメントしています。言葉に重みがなくなってきたいま、子どもたちはこの物語を読んで、何を思うんだろう?
ところで、この物語を読んでいると映像が目に浮かんでくるかのようでした。
この感じどこかで……?あ!ハウス名作劇場!?
そう、素直で性格の良いまっすぐな主人公。ちょっと複雑な思いをお互いに抱くこともあるけれど、大切な友情。優しい両親に、厳しい祖母。そして、何かへの強烈な憧れ。つらい出来事も起こるけれど、どこか安心して見ていられる、それがハウス名作劇場だったなあ、と(いち個人の感想です)。
辛いときは、書きましょう
苦しいときは、歌いましょう P.205
女書が生まれた経緯は、悲しい女性たちが受けてきた苦しみからでした。その女性ならではの苦しみからも目をそむけず、かといってそこにフォーカスするよりも言葉を伝えられる喜びにフォーカスする。そこが、よかった。
さらっと読めるのに、とっても素敵な物語でした。
まはら三桃さんの描く優しい物語たち、好きです。過去記事もよかったどうぞ↓