とても読みやすい文体で、本が苦手な子でもいけそうなYA(ヤングアダルトと呼ばれる中高生向き小説)の良書!
《『鷹のように帆をあげて』あらすじ》
親友を交通事故で亡くした中学1年の理央は、ペットショップで出会ったちいさな鷹を育てはじめる。野生を失いつつある鷹の「飛ぶ」力をひきだすことはできるのか。そして、鳥が「帆翔」する姿のように、理央が心のバランスを保ちながら空をみあげる日はやってくるのか。九州の空を舞台に、不器用な少女が生きる気流をつかもうとする青春小説。(出版社HPより)
主人公理央は亡くなった親友遥への思い入れの強さから、心を閉ざしているのですが、それを救ってくれたのが鷹なんですね。人間以外の存在ってやっぱり大事!!!
自然と向かい合うって大事!!!
さて、この物語に出てくる鷹匠と呼ばれる存在。昔は鷹に狩りをさせていたのですが、現代では害鳥(カラスとか)駆除などがメインだそうです。
この本の主人公は、佐賀県武雄にいる女子高生鷹匠平橋美咲さんから教えを乞うのですが、これは実際にいらっしゃる石橋美里さん(取材当時は女子高生)がモデル。著者のまはらさんは取材を重ねて書いてるだけあって、とーってもリアルで、鷹のこともよく分かって興味深い!
一方で、ああ私も飼いたい!という甘い考えを打ち砕いてくれるような現実も描かれていていい。
環境省への届け、リードでつながれていないペットを襲いがち……責任重大です。加え、エサがねえ。冷凍のひよこが自分の家の冷凍庫に並んでいたら???
人間にすぐになつくペットとは違う鷹。
それでも人間のいうことをきくようになるからスゴイ。例え鷹が戻ってこなくても迎えにいかないこと。不用意に飼い主が動くと主従関係が崩れるそうです。本能を尊重しつつも、主従関係をはっきりさせておく。そして、これね、主従関係以上に信頼関係なんだ、と思いました。
物語の中で、鷹匠の条件は「愛、知、威」だと語られます。
「タカを愛し、よく知り、威厳をもって接する。それが、大地の理に溶け込んでいくことだって」(P.209)
自然の声をきく、自然は自分の思うようにはならない。おしつけてもムリ。まずは、広い心を持つこと、同時に強いこことを持つこと、コントロールする技術はそのあといくらでもついてくる。
そこで思い出したのが、平安時代を描いた『えんの松原』という平安の怨霊をモチーフにした素晴らしい物語。その物語の中でも印象的な場面は、鷹を迎え入れる場面でした。“信頼して待つ”ということ、そして“全力で受け止める”ということ。一見地味なのですが、じわじわ来ます。骨太でずーっと心に残る物語。こちらの物語も熱烈おすすめです!!!↓
ところで、私が鷹匠という生き方を初めて知ったのは、学生のときでした。
立花隆さんの書いた『青春漂流』(1988年 講談社)の中でさまざまな若者の生き方がとりあげられているのですが(若き日の田崎信也氏とかオークヴィレッジの稲本氏とかも!)、中でもとりわけ印象的だったのが鷹匠だったんです。古い本ですが、生き方の姿勢に古いも新しいもないので、こちらもあわせておすすめです↓
うん、繰り返しますが、人間以外の存在って大事ですね。