Pocket Garden ~今日の一冊~

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読んだ動機は不純だったけれど

『荒野にヒバリをさがして』(2022年)アンソニー・マゴーワン作 野口絵美訳 徳間書店

正直なところを書きますね。この本を手に取った理由は、“薄かった(短かった)”からなんです。

最近、児童文学以外の本を何冊か並行読みしてたり、YouTube(←何を隠そう、こちらがメイン笑)見るのに忙しくて。160ページしかない上に、2020年のカーネギー賞を受賞してたのと、ヒースの生えるヨークシャーの荒野が舞台とあらすじを読んで、惹かれたのでした。

 

そんな不純な動機から手に取った本。でしたが、思った以上にガツンときました。まさか泣くとは思わなかったなあ。一人のときに読むことをおすすめします。短い物語で、小学生向けに見えるかもしれませんが、中学生以上に響くかと思います。

 

実はね、読み始めは、男兄弟の会話が下ネタ多いし、ん~ちょっと苦手かも、って感じだったんですよ。まあ、でもリアリティがある会話なのかもしれない。

うちも男子兄弟なので、母がいないときはこういう会話なのかもな。ちなみに、時々下ネタに走りそうになると、「お母さんいるだろっ!」と長男が暴走次男を止めてくれます(笑)。 

 

さて、物語。復活祭の休みに退屈していていた主人公のニッキーは、父親のすすめもあって、兄ケニーと犬のティナを連れて、ノース・ヨーク・ムーアズ国立公園へハイキングへ出かけます。ヒバリを探しに、遊歩道沿いを歩くだけの、軽いハイキングのつもりで。ところが、国立公園。自然以外何もないところに、季節外れの雪が降ってきて、道を見失ってしまうのです。そんなことになるとは思ってもいないから、薄着で来てしまった二人。自然はなめたら、本当におそろしい。

 

このとき、というか、ニッキーの人生はずっと不運続きだったんです。幼い頃母親は家を出ていき、父さんはアルコール中毒に。特別支援学校に通う兄の面倒をみるのはニッキー、最近やっと彼女ができて幸せだったのに突然彼女から別れを告げられ。おまけに幼い頃、家を出て行った母親が、何十年ぶりかで会いに来るということもあって、ちょっと複雑な思いを抱いていたのでした。

 

道に迷い、怪我をしてしまうあたりからはもうハラハラ続きで、祈るような気持ち。寒さや痛みがこれでもか、ってくらい伝わってきて、もう耐えらえないかも、ってくらいツライ。

 

でもね、最後はじーんとします。ニッキーが父親にかける言葉のところで、またまた泣いてしまいました。ニッキーは、父親に何て声をかけたのか。ぜひ読んでみてくださいね。

 

そして、なんとなんと、エピローグでは、児童文学には珍しく40年後に飛びます。

「物語の力」も感じさせてくれる、地味だけれどしみじみと、いい物語でした。