Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

理系が苦手な人ほど読んでほしい!

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ダーウィンと出会った夏』(2011年)ジャクリーン・ケリー作 斎藤倫子訳 ほるぷ出版

※毎週月曜・金曜の19時~21時の間に更新中!

(できるだけ19時ジャスト更新!ムリだったら、21時までに更新笑)

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急に夏が来た感じですね!夏は大の苦手です……。もう一つ、私が大の苦手なもの、それが理系に関するもの。

 

というわけで、今日の一冊はコチラ!

 

ダーウィンと出会った夏』あらすじ

舞台は1899年のアメリカ南部テキサス州。12歳のキャルパーニアは7人兄弟の真ん中で唯一の女の子。家は裕福で、不自由のない暮らしだけれど、外で動植物の観察が好きな彼女にとっては、女性らしく料理や裁縫などを強いられることがとっても苦痛。そんなキャルパーニアには孫たちから近寄りがたいと思われている変わり者の祖父がいて、あるときから祖父の“共同研究者”として認められるのですが……。

 

切り絵の装丁がとっても素敵。前々から気にはなっていたのですが、なかなか手に取れなかったのは、個人的に理系がとことん苦手だから(笑)。過去のトラウマなのか、いっこうに興味を持てないんですよねえ。

 

でも!!!

児童文学で、今までまっっったく興味のなかったモノに興味を持たせてもらった経験があるので、ここは児童文学を信じてみる。

『リンバロストの乙女』では蛾、『シャーロットの贈り物』では蜘蛛、『海辺の宝もの』では化石、『ベルさんとぼく』では数学や物理の魅力を知ったもの。

 

結果は……、ああ、面白い!この年齢になってから理系のものも面白いと思うようになるとは。いやはや、児童文学恐るべし。裏切らないなあ。

 

思い返せば、自分自身は、自然を眺めるのは好きだったけれど、子どもの頃ミクロの世界に惹かれた記憶はないんですよね。虫とか植物とか。朝顔の観察とかも、つまんなーい、と思ってた(笑)。

 

それが、どうです?キャルパーニアにかかると、まるで自分自身も興味を持って、観察ノートに書いている気分になるではないですか。もう、センス・オブ・ワンダー全開!そして、時代の転換期の面白さも抜群で、わあ、私すごい時代に生きてる(←いや、生きてません。読んでるだけです)って錯覚しちゃうくらいでした(笑)。

 

ダーウィンの進化論がまだ世の中に受け入れられてない時代です。図書館で、貸出すら拒否されるんです。キリスト教の観点から、NGなんですよね。車も初めて見るような時代。

 

この物語に出てくる祖父がねえ、いいんですよね。子ども好きじゃないので、孫には一切興味なし。名前も覚えていないくらい。それが、キャルパーニアの観察眼が本物だと見抜くや否や、子ども扱いせず、“共同研究者”として、対等に扱うんですね。まだ、この本は難しいとかも言わない。私が、一番いいなあと思ったのは、答えをすぐに言わないところ。自然界のさまざまなことに対して、キャルパーニアは質問がたくさんあるのですが、自分で答えを導き出せるよ、と言って教えてくれないのです。だから、キャルパーニアは考える。より観察する。何でも、すぐに“正解”らしきものを出そうとする、現代人の私たちは、この姿勢を見習いたい。

 

もう一つ、この本のテーマにジェンダーがあるようですが、でもねえ、これは今の時代も同じ気がする。確かに今の時代のほうが、当時と比べて女性の足かせはなくなったように見えるかもしれないけれど、これ女性も男性も関係なくて。役割を生きることを強いられる、自分らしくなかなかいられない、という点では現代でも同じ問題を抱えてるので、読んでいて共感できると思います。

 

ところで、キャルパーニアに女の子らしくあることを強いるのが、お母さんなのですが……。このお母さん、役割を生きることに多分何も疑問を覚えていなくて、でも、だからといってそれを楽しんでいるような感じもしなくて、そこが気になりました。女の子だから科学の道に進めず苦しんでいるキャルパーニアよりも、実は、このお母さんが一番幸せではないのかも……そんな気がして。だってね、このお母さん7人も子ども産んでるけれど、そんなに子どもに愛情を注いでる様子がないんだもの。子どもたちに役割を生きさせる、レールから外れないようにすることにばかり注意が向けられてる気がするんですよね。それが、習い事漬けにする現代の母親像にも通じてる気がして。自分は、子どもから、”らしさ”を奪っていないか、改めて考えさせられました。

 

ストーリーはとっても読みやすく、私のように理系ものが苦手だと思う人にこそ、読んでほしい一冊でした!新しい扉が開けちゃうかも!?続編もあるので、楽しみです。