Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

悲しみを内包した美しい大人の絵本

『くじら図書館』(2025年)ジドル―作 ユディット・ファニステンダール 川野夏実訳 小さい書房

今日の一冊は、大人向けのこちら。5月20日に出たばかりの新刊。オランダ語圏のコミックWilly Vandersteen賞受賞とのことですが、コミックというより絵本的。

吹き出しも多いから、コミックの分類なのかな。

満天の星空、夜の海、くじら、ボートに本。もう、それだけで想像が広がります。表紙絵に惹かれて手に取りました。中もオールカラーで、クジラのおなかの中の図書館を見たときは、なぜか懐かしい気持ちにすらなりました。

 

さて、こちらの物語は大人向けと謳われています。

なぜ、大人向けと謳われているのかを考え続けています。

途中で、男女の全裸の場面が出てくるから?(確かにちょっと、ギョッとはしました。保守的なので笑)

生と死と永遠を理解するには、ある程度の人生経験がないと響かないから……?

 

あ、でも考えさせられるタイプの本ではありません。

“感じる”タイプの詩的な本。

 

ワクワクする楽しい物語ではありません。

人生の悲哀のようなものが詰まっている。だからこその悲しみを内包した美しさ。

子どもたちにすすめるかどうかはおいておき、私は好き。

生と死がテーマではあるけれど、説教臭くないし、くじらが出てくる、もうそれだけで好き。

 

なんともいえない余韻のある物語でした。