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今日の一冊は、コチラ。
もしも、悲しみや後悔という感情がこの世からなかったら?
という、とても深いテーマ。でも、子どもでも分かるように、やさしい言葉で物語に乗せて描かれています。また、西村ツチカさんの絵もぴったりで、ともすると幽霊と聞くとこわがりそうな子でも、手に取りやすく、親しみやすいのがいい。
『さいごのゆうれい』あらすじ
世界中が「かなしみ」や「こうかい」を忘れて、だれもが幸せだった〈大幸福じだい〉と呼ばれた時代があった。そんな時代の夏休み、小五だったぼくは、田舎のおばあちゃんちに預けられた。空港のあるその町で、いわゆる「お盆」の、その最初の日に、ぼくは、ひとりのちいさなゆうれいに出会った。その子はいう。自分が、ゆうれいのさいごのひとりかもしれないと。ゆうれいを救い、世界を取り戻すために、ゆうれいと過ごした四日間。(出版社HPより転載)
「かなしみ」や「こうかい」がないのは、果たして本当に幸せなのか、ってことですよね。また、幽霊などのいない世界が本当にいい世界なのか。全然、世界観は違うけれど、『えんの松原』も思い出します。
大人になると、自己啓発系の本や人に出会うことが多くなって、一時期私も“ポジティブこそが善!”みたいに思ってた時期もなきにしもあらずだったかなー。ポジティブ教。でも、本当は感情に善も悪もなくて。感情にフタをすることのほうが色々弊害を起こす、ということを教えてくれたのは、児童文学でした。ネガティブなことも己の闇をも抱きとめる。向き合うってそういうこと。
ところで、この物語はちょっと未来のお話という設定で、どうして「かなしみ」や「こうかい」がなくなったのか物語後半で種明かしされていきます。
この物語の展開と現実は違うけれど、それでも、現代って少しずつ「かなしみ」が薄れてる気が個人的にはしていて。いつまでも悲しんでいちゃダメ、前に進まなくっちゃ、という風潮。だから、悲しみを人は自分の心の奥底にしまいこんで、自分の本当の感情が分からなくなってしまってる人が増えてる気がするんですよね。
「かなしみ」はつらくてつらくて、こんな感情なければ楽になれるのに!って確かに思うときもあるけれど、やっぱり「かなしみ」もあるからこそ世界は世界なんだなあ。
無理やり押し込めたり、ないものとして扱ったりするものではなく、受け入れて、抱きとめていくもの。
今回は、集中できない状況で読んでしまったこともあり(それとも大人目線でしか読めなかった?)、個人的には物語に入り込めなかったのですが、子どもたちの反応が知りたいです。