Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

20世紀のマンチェスターへひとっ飛び

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『がんばれウィリー』(1977年)ジリアン・エイブリ作 松野正子訳 岩波書店

※毎週月曜・金曜の19時~21時の間に更新中!

(できるだけ19時ジャスト更新!ムリだったら、21時までに更新笑)

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週2回更新すると決めたものの、途方にくれる日もあります。そう、それが今日。

 

色んな本を何冊か並行読みしているのですが、本日読み終わってる本がない!(=ブログが書けない!)こういうときは、たまに過去に読んだ本の中からテーマリストにしてまとめたりもしてるのですが、実はリストにまとめるのも通常以上に時間がかかるんです。

 

というわけで、本日はリストではなく、過去に読んでまだ感想を書いてなかった本を掘り起こしたいと思います。

 

しかし、感想ってね、やっぱりフレッシュなうちに書かないとダメだなあ、って。勢いというか鮮度が大事。よかった!と思った本でも、時間がたつと、なんとなく紹介しなくてもいっか……ってなってしまうんですよね(私だけかもしれませんが)。

 

というわけで、今日の掘り起こし本は上記写真のコチラ。

 

個人的に、1970年代、80年代に岩波書店から出ている児童文学ってすっごく好きなんです。骨太で、はずれがなくて。

実家の本棚に並んでいた本(いまは我が家にお引越し)は、両親がお互いの記念日に贈り合っていたものでこの70年代、80年代岩波のハードカバー児童文学が結構ありまして。その背表紙を眺めながら育ってきたわけなのですが、なぜか(表紙が地味だったからかも)大人になるまで見向きもしなかったものが多かったんです。家にある本より、学校の図書室から借りてくるほうが当時はワクワクしたんですよね。

 

なので、大人になってから、こんなお宝が家に眠っていたとは!!!という感じでした。

 

んー、まあ、絶版ですよね。これは、マイナー過ぎて、図書館でも置いてるところは少なさそうです。広く支持を受けないと生き残るのは難しいでしょう。だから、これを読んだときも絶版やむを得ないな、と正直思いました。

 

だからこその出合えたときのレア感(笑)。いや、なんていうんでしょう、何度も何度も言いますが、絶版になるからといってその物語に価値がないわけじゃない。

 

この『がんばれウィリー』に出てくる父親は、なんていうかひと昔前の父親で、親の価値観子どもに押し付けまくりで、一歩間違えれば毒親にもなりかねない。けれど、時代にはあっていて子どもも別に不満じゃないし、幸せ。この空気感は、物語じゃないと分からないなあ。

 

そう、空気感!この物語を読むと、20世紀初め、ヴィクトリア女王時代のイギリス工業都市マンチェスターの街並みが手に取るように分かるんです。まるで、そこをたずねているみたい。人々もなんだか顔なじみのような気すらしてくるから不思議。

 

だからね、思うんです。その時代を知りたかったら、事実の文献読むだけじゃなく、やっぱり物語を読まなくっちゃ。世界史学ぶなら、その時代を描いた物語もあわせて読むといいなあ、って。

 

つくづく、本はタイムマシーンだなあ、って思います。

それを味わえただけでも、この本読めてよかったな、と思いました。