Pocket Garden ~今日の一冊~

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漫画が文学!?約ネバが面白い

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英米文学者と読む「約束のネバーランド」』(2020年)戸田慧著 集英社新書

 

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約束のネバーランド』という大ヒット漫画(累計2100万部超え!)をご存知でしょうか?うちは小6次男がハマっていたので、私も読んでみました。

 

鬼滅と並んで、『週刊少年ジャンプ』で連載されていて、この6月で完結した話題作。

これがねえ、あらすじだけを読むと、とっても残酷で、寒々しい気分になる内容なんです。

 

【簡単なあらすじ】

孤児院で幸せに暮らしている子どもたちはみな天才児ぞろい。彼らは、12歳になると里親のもとに行かされるが、実はこの孤児院、鬼たちが好む美味しい脳を育てるための農園で、子どもたちは鬼のための食用児。それを偶然知ってしまった、主人公エマと仲間たちが、全員を引き連れて、絶望に立ち向かう脱獄ファンタジー

 

なんて、悪趣味な内容!

……と思うでしょう?ところが、これが、頭脳戦であったり、なかなか面白いのです。日本の漫画家ってホントにすごいといつも感心してしまいます。

 

で、今回は『約束のネバーランド』(以下「約ネバ」)にすっかりハマってしまったという英米文学者の戸田慧さんが書いた解説本が、とっても興味深かったのでご紹介。

物語の生まれた背景を知る。これは、大人ならではの楽しみ方ですよ~。

 

英米文学者と読む「約束のネバーランド」』あらすじ

あの鬼のモデルとなった人物は?「約束」や「原初信仰」の謎を解く鍵は?「約束のネバーランド」というタイトルの真の意味とは?謎を解く手がかりになる、いくつかの英米文学作品。鬼達の宗教「原初信仰」とユダヤキリスト教。階級、女王、狩り…鬼の社会と似た特徴を持つ国は?ジェンダーから見た「約束のネバーランド」という物語の新しさ…気鋭の文学研究者が徹底考察!(BOOKデーターベースより転載)

 

とっっっても分かりやすいです!

学者の人が書いたからといって、難しい表現もないところにも好感が持てます(←上から目線!?)。内容はさほどマニアックでもないので、英米文学に興味のない人でも、逆にこの本が英米文学への興味の入り口にもなるかも。

 

こじつけでは?と感じる人もいるかもしれませんが、こじつけにしたって面白いし、作者が意図していなかったかもしれないところで「なるほどー!」となるのも物語自体が力を持っている証拠。

 

『ピーター・パン』『不思議の国のアリス』『指輪物語』などの文学作品との関連性も面白かったのですが、個人的にはジェンダーの章が一番興味深かった。女らしさや男らしさの神話、ジェンダーからの解放、色々と考えさせられました。『約ネバ』を読んだことがない人でも、この解説本は楽しめる気がします。

 

そんなさまざまな視点を提示し、最後のほうで著者はこんな風に述べています。

 

このような視点から見れば、『約ネバ』は十九世紀にルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』によって幕を開けた、大人の古い常識を覆し、真に自由な大人へと成長する子供達の物語という伝統的な児童文学の王道を継承しつつ、二十一世紀的な新しいジェンダー観を反映し、漫画という媒体で描かれた、まさに新しい「文学」だといえるでしょう。(P223)

 

そうなんだなあ。文学だから多くの人の心をとらえたんだろうなあ。

あらすじだけ読んでいたら、自分からは手に取らなかったけど、

子どもが夢中になっているものは、なんでも読んでみると大人の偏見も取れますね。

 

こういう新しい世界の提示の仕方があるんだな、と感心してしまった。

 

ちなみに次男の約ネバの感想は、

 

「これさ、すっごく面白いんだけどさ…。エマたちが人間だから思わず応援しながら読むけど、孤児たちが豚とか(家畜動物)だったら、鬼が人間だよね。そう思うとさ……」

 

と複雑な思いを抱いたようです。 

うん、子どもあなどるなかれ、ですね。

 

面白かったです!