Pocket Garden ~今日の一冊~

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秋の夜長に美術ミステリーはいかが?

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『スピニー通りの秘密の絵』(2016年)ローラ・マークス・フィッツジェラルド著 千葉茂樹訳 あすなろ書房

※毎週月曜・金曜の19時(ちょっと遅れることもあり💦)更新中!

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今日の一冊は、「へぇ!」がいっぱい詰まった美術ミステリー。作者は美術の専門家でもあるので、美術に関する部分はとても興味深かったです!作者の一番好きな児童書は『アンクル・サムの遺産』と『クローディアの秘密』と書いてあって、納得。

 

【『スピニー通りの秘密の絵』あらすじ】

ニューヨークを舞台にくりひろげられる極上の美術ミステリーです。
主人公のセオドラ・テンペニー(セオ)は、13歳の女の子。
祖父と母とともに、グリニッジビレッジのスピニー通りで暮らしていましたが、ある日、祖父が「卵の下を探せ」という謎の言葉をのこして他界。

突然、一家の働き手を失い、セオは経済的に行き詰まっていきます。
祖父の遺言に、一家を救う鍵があるとにらみ、セオは、謎の解明に乗り出します。
テンペニー家には、卵にまつわる朝の公式行事があり、「卵」が何を意味するのか察しがついたものの、その「下」にあるものとは?
そして、卵を置く場所の上にかかっていた絵が、実はルネッサンスの巨匠ラファエロの描いたものかもしれないという謎が出現……?!

画家で、メトロポリタン美術館の警備員をしていた祖父から絵画のことを教わっていたセオが、いろんな人の支援を受けながら、この謎に挑みます。
謎は謎を呼び、物語は、祖父が関わった第二次世界大戦ナチスの暗部にまで及び、思いもかけない方向へ進みます。
また、祖父譲りの独立独歩の精神で、友だちなんて必要ないと、いつも一人だったセオが、個性派セレブ女子ボーディと知り合い、お互いに得意なことを活かしながら、友情を育んでいく様子もほほえましく、ラストは、達成感とともに、あたたかな感動につつまれます。
美術と歴史の謎に深くきりこみながら、ぐいぐい読ませる、読後感さわやかな物語です。(出版社HPより転載)

 

 

 翻訳文学に慣れている人向きかも?

面白いのですが、感情移入はしにくいかもしれません。ミステリー好きが読むと伏線が甘いという意見もありますが、普段ミステリーを読まない私(こわくて笑)には十分面白かったです!

 

登場人物は現代っ子なので、ネット検索も駆使しますが、大事な部分は図書館に行って調べたり、司書の腕が物言うんですねえ。そんなところも本好きとしては興味深い。

 

さらに、ヒトラーに略奪された美術品を取り戻すべく結成された特殊部隊、モニュメンツ・メンの存在も初めて知りました。美しいものを愛する心を持ちながら、同時にこの上なく残忍なこともできるのが人間なんですよねえ......。

 

秘密の絵の持つ意味が分かったときには、心動かされました。ミステリーなので、あまり詳細は書けないけれど、ご都合主義すぎない?と一部から言われるラストも、私は好き。不思議だけれど、縁ってあるんですよねえ。つながる人とは、つながる運命にあるというか。

 

秋の夜長にどうぞ。